・『超帝国主義国家アメリカの内幕』マイケル・ハドソン
・『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う』宋鴻兵
・ビスマルクとロスチャイルド家
前著刊行後、5000万字の資料を参考にし、1日5万文字を1000日にわたって閲覧して書かれたのが本書である。
若きビスマルクは勤勉で、勉強好きで、権力と叡智に極端なほどの憧れを抱いていた。彼の政治的野心と抱負はすぐにアムシェルとその養子のマイヤーの気に入るところとなった。ロスチャイルド家はとにかく政治的に有望な青年を育てるのが好きで、伯楽であることを自負していた。彼らはビスマルクが投資する価値のある優良株であると判断した。欧州の近代史上、若いころにロスチャイルド家に援助され、後に世界史において傑出した政治家になった人物には、ビスマルクのほかに、後のイギリス首相、ベンジャミン・ディズレーリ、そしてダービー競馬に勝つこと、資産家の令嬢を嫁にすること、イギリスの首相になること、この3つの夢をすべてかなえたロスチャイルド家の婿のローズベリー、そしてイギリスの名物首相、チャーチルがいた。
ネイサン・ロスチャイルドは「大英帝国の通貨の発行権を握っている」と公言していた。欧州の名門貴族たちは、彼の金銭的な権勢に屈服せざるを得なかったにもかかわらず、ロスチャイルド家のような新興ユダヤ人「成金」を内心では軽蔑していた。ビスマルクも同じであった。ユダヤ銀行家たちを利用しながら軽蔑していたのである。
【『通貨戦争 影の支配者たちは世界統一通貨をめざす』宋鴻兵〈ソン・ホンビン〉: 橋本碩也〈はしもと・せきや〉監訳、河本佳世〈かわもと・かよ〉訳(武田ランダムハウスジャパン、2010年)以下同】
資本主義は近代以降、政治とカネを切っても切れないものへと変えた。つまり「政治とカネの問題」というテーマは資本主義の否定につながる矛盾を抱えている。民主主義はカネで動くと理解した方がよさそうだ。政治が国家予算(税金)の分捕り合戦である一面を思えば腑に落ちる。
驚くべき真実であるが、政治も文化も宗教もマネーを制した者が勝つ。「先立つものは金」というわけだ。そして潤沢な資金はプロパガンダ(広告)に費やされ、マネー獲得の目的に向かって直進する。こうしてあらゆる組織が資本増強を目指す。
ロスチャイルド家は金融の本質を誰よりも早く知悉(ちしつ)していた。欧州貴族の軽蔑すら彼らの目には好機と映ったことだろう。名誉よりも実利が重いのだから。
そして近代からアメリカが生まれ、そのアメリカからプラグマティズムが産声(うぶごえ)を上げたのも偶然ではあるまい。教会の権威を嫌い、信仰の実を選んだピルグリム・ファーザーズも宗教上の実利を志向している。
戦争を通じてビスマルクは金銭の重要性を認識した。特に、大事な時に政治家は往々にして銀行家に屈服せざるを得なかった。デンマーク戦争とほぼ同時期に発生したアメリカの南北戦争とリンカーン暗殺について、ビスマルクは次のように述べている。
「アメリカを南北の二つの弱い連邦に分けることは、内戦勃発前から欧州の金融権力者によって決められていたことである」
カネがなければ戦争もできない。すなわちマネーを制する者は戦争をもコントロールできるのだ。
20世紀末になりインターネットの普及がマネーの移動を自由自在にした。増殖するマネーはバブルとなって膨らんでは弾ける。バブル-バブル崩壊を繰り返しながらマネーはウイルスのように襲いかかる。バブルは富める者を更に富ませ、中産階級を貧困化する。極端な富の集中が資本主義そのものを崩壊させるのも時間の問題だ。
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