2018-01-03

映画『誘拐の掟』スコット・フランク監督(2015年)


 リーアム・ニーソンつながりで見てしまったがとんでもない駄作で正月早々失望感に襲われた。主人公のマット・スカダーという名前に聞き覚えがあると思ったら、原作はローレンス・ブロックらしい。ホームレスの少年TJを演じるのは『Xファクター』で勝ち上がった(当時14歳)ラッパーのアストロ。不貞腐れた演技が実によい。


 アメリカ麻薬取締局(DEA)と犯人に関連性があることを示しながら実態が明らかにされていないのが致命的だ。またラストシーンではAA(アルコホーリクス・アノニマス)の教えが金言の如く登場するが、その命令と抑制ぶりが聖書の域に達している。つまり「罪と罰」こそがモチーフなのだ。

 正義は必ず勝つ。それが神と共にある限りは。おお、何という陳腐さか。

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2018-01-01

帰省とは親を省みること/『親を切ると書いてなぜ「親切」 二字漢字の謎を解く』北嶋廣敏


「帰省」には「省(かえり)みる」という行為が含まれている。故郷に帰って、父母を省みる。親の安否をうかがう。それが「帰省」の本来の意味である。単に故郷に帰るだけでは「帰省」とはいえないのである。

【『親を切ると書いてなぜ「親切」 二字漢字の謎を解く』北嶋廣敏〈きたじま・ひろとし〉(リイド文庫、2011年)】

 帰省中の諸君、今からでも遅くはないから親を省みるよーに(笑)。一方、「帰郷」には定住する意味合いが感じられる。

「帰省」と「帰郷」「里帰り」の違い

 昔は「故郷に錦を飾る」という言葉があった。経済が上向きの時代は功成り名を遂げることが人生の目的と化すのだろうか。男児が産まれると「末は博士か大臣か」とも囁いた。

 中には帰りたくても帰れない人もいるだろう。男であれば中々電話もしにくい。私からは「いつまでもあると思うな親と金」との言葉を贈ろう(笑)。

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映画『フライト・ゲーム』ジャウム・コレット=セラ監督(2014年)


映画『アンノウン』:ジャウム・コレット=セラ監督(2011年)

 ・映画『フライト・ゲーム』ジャウム・コレット=セラ監督(2014年)

 これまた、ジャウム・コレット=セラ監督&リーアム・ニーソンコンビの作品。当然だが作風がよく似ている。『アンノウン』よりは劣るが、この荒唐無稽ぶりは辛うじて許容可能な範囲だ。リーアム・ニーソンが1952年生まれとは驚き。搭乗直後のジュリアン・ムーアが素晴らしい演技をしている。主人公と少女のやり取りを見るだけでも価値がある。サスペンスであって謎解きではないと割り切れば、そこそこ面白いと思う。ま、二度見ることはないだろうが。予告編を見ると魅力が半減するので敢えて紹介しない。それにしても3年前に封切りされた映画のDVDが1000円を切っているとは恐れ入谷の鬼子母神である。尚、『24:レガシー』の主役に起用されたコーリー・ホーキンズがチンピラ役で登場する。

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2017-12-31

映画『アンノウン』:ジャウム・コレット=セラ監督(2011年)


 ・映画『アンノウン』:ジャウム・コレット=セラ監督(2011年)

映画『フライト・ゲーム』ジャウム・コレット=セラ監督(2014年)

 行く当てもなく自転車を走らせて佳景と巡り合うことがある。そんな気分が蘇る映画作品だ。記憶喪失ものといえば『ボーン・シリーズ』(原作はロバート・ラドラム著『暗殺者』)が有名だが、主人公のマーティン・ハリス博士は交通事故前後の記憶が欠落している。4日間の昏睡状態を経て、一緒にドイツを訪れた妻の元へゆくと、見知らぬ男性が自分を名乗っていた。妻も自分のことを知らないと言う。パスポートは事故で無くしてしまっていた。物語は突然カフカ的様相を帯びる。

「オチがつまらなかったら承知しないぞ」と誰もが思うタイミングで主人公は命を狙われ、続いて旧東ドイツの秘密警察シュタージの一員であったエルンスト・ユルゲンという老人が登場する。この色合いの変化こそが本作品の醍醐味であるといってよい。

 男は自分が自分であることを探し求め、遂に見つける。そして男は生まれ変わった。アメリカ映画らしからぬ傑作だ。

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2017年に読んだ本ランキング


2015年に読んだ本ランキング
2016年に読んだ本ランキング

 ・2017年に読んだ本ランキング

2018年に読んだ本ランキング

 今年手をつけたのは400冊ほどで読了本は120冊前後だと思う。まずは再読本から紹介しよう。「必読書」たり得るかどうかの検証を兼ねている。

『脳はいかにして〈神〉を見るか 宗教体験のブレイン・サイエンス』アンドリュー・ニューバーグ、ユージーン・ダギリ、ヴィンス・ロース/再読。

『あなたの知らない脳 意識は傍観者である』デイヴィッド・イーグルマン/再読。

『狂気のモザイク』ロバート・ラドラム/6回目。個人的には『暗殺者』よりも好きな作品だ。

ものぐさ精神分析』『続 ものぐさ精神分析』岸田秀/3回目。

『孟嘗君』宮城谷昌光/再読。

『楽毅』宮城谷昌光/再読。やはり『孟嘗君』の続篇として読むのがいいので必読書入り。

『ボーン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー/再読。

 膝痛本は十数冊読んだが一押しがこれ。

ひざの激痛を一気に治す自力療法No.1』マキノ出版ムック『安心』特別編集

 具体的な対処法がコンパクトにまとめられていて、健康本にありがちな誤謬もかなり少ない。

七帝柔道記』増田俊也
北の海(上)』『北の海(下)』井上靖
VTJ前夜の中井祐樹』増田俊也

 七帝(高専)柔道シリーズ。『北の海』は飛ばし読み。井上靖が経験者だとは知らなんだ。ランクインというわけではないのだが若い人に読んで欲しい。

 次に番外。

『台湾高砂族の音楽』黒沢隆朝

 飯嶋和一と宮城谷昌光はどれもオススメできる。

出星前夜 』飯嶋和一
狗賓童子の島』飯嶋和一
管仲(上)』『管仲(下)』宮城谷昌光
湖底の城』宮城谷昌光
草原の風』宮城谷昌光

 では、ランキングを。郡司ペギオ幸夫はまだ途中までしか読んでいない。

 15位『いま沖縄で起きている大変なこと』惠隆之介

 14位『春宵十話』岡潔

 13位『カルトの子 心を盗まれた家族』米本和広

 12位『群れは意識をもつ 個の自由と集団の秩序』郡司ペギオ幸夫

 11位『『闇の奥』の奥 コンラッド・植民地主義・アフリカの重荷』藤永茂

 10位『大東亜戦争とスターリンの謀略 戦争と共産主義』三田村武夫

 9位『日本教の社会学』小室直樹、山本七平

 8位『「ものづくり」の科学史 世界を変えた《標準革命》』橋本毅彦

 7位『人類を変えた素晴らしき10の材料 その内なる宇宙を探険する』マーク・ミーオドヴニク

 6位『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史』スティーブン・ジョンソン

 5位『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー

 4位『しらずしらず あなたの9割を支配する「無意識」を科学する』レナード・ムロディナウ

 3位『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』ビクター・マイヤー=ショーンベルガー、ケネス・クキエ

 2位『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』ケヴィン・ケリー

 1位『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ

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