・労働力の商品化
・読書人階級を再生せよ
その論理(※『資本論』に書かれた資本主義発展の論理)のカギになる概念が、「労働力の商品化」です。人間が働く能力は、本来商品にされるものではなかったのに、商品にされたというのはどういうことか。労働者は働いて賃金をもらいますが、その賃金は三つの要素から成り立っている。
一番目は、1カ月生活して、家を借りて、ご飯を食べ、服を買い、いくばくかのレジャーをする。それによってもう1カ月働くエネルギーが出て来る。そのための費用です。
二番目の要素は、労働者階級の「再生産」。すなわち、子供を産み、育て、教育を受けさせ、労働者にして社会に送り出すまでの費用が賃金に入っていないといけないのです。独身者の場合は、将来のパートナーを見つけるためのデート代が入っていないといけない。そうでないと資本主義システムの再生産ができない。
三番目は技術革新に対応するための教育の経費です。資本主義には科学技術の革新が常にある。労働者がそれに対応するための自己学習の費用が入っていないといけない。
その三要素がないと資本主義はまともに回らないのです。ところが個別の資本は、少しでも搾取を強めようとする。だから二番目、三番目の要素は切られてしまいがちです。一番目の要素もどんどん切り詰めて行く。それによって搾取率を強化する。資本とは本来そういうものなのです。搾取は、不正なことではありません。労働者は嫌だったら契約しなければいいのだから、収奪ではない。収奪というのは、たとえば米を10トン作ったら地主が来て、そのうち6トンを持って行く。出さないと殺すと言う。これが収奪ですね。搾取は資本家と労働者の合意の上で成り立って、システムの中に階級闘争が埋め込まれている。だから自由平等といいながら自由でも平等でもない実態は、社会構造を見ないとわからないというのがマルクスの主張です。ちょっと難しい言い方でしょうか。要するに経営者がいい人、悪い人というのは別の話で、資本主義というシステムにおいては、労働者の取り分が減らされることは避けられないということです。
【『人間の叡智』佐藤優〈さとう・まさる〉(文春新書、2012年)】
久し振りに佐藤本を読んだが、まあ凄いもんだ。語り下しでこれほどの内容なら、佐藤は執筆の時間を惜しんで語った方がよいかもしれぬ。
著者の博覧強記は広く知られるところだが、飽くなき知への健啖(けんたん)ぶりが怪獣を思わせるほどだ。いかなる書籍であろうが佐藤にかかれば、鋼鉄製の歯で粉々に咀嚼され、野菜ジュースみたいにされてしまうのだ。まさに知の破砕機といったところ。
具体的には次の通りだ。1ヶ月の読書量、平均150冊~200冊、うち熟読は5~6冊。書籍購入費は年間200万円、他に資料・データに200万円、勉強会に100万円。1日の読書時間、6時間。(※「東洋経済 特集/最強の「読書術」と佐藤優:e-徒然草」を参照した)
実はまだ読み終えていない。あと20ページほど残っている。200ページあまりの新書が付箋だらけになってしまった。
タイトルが『人間の叡智』となっているがミスマッチだと思う。内容からすると、「新・帝国主義ノススメ」「マルクスから読み解く21世紀の政治学」「新たなるエリート主義」といったところだ。佐藤が普及させたインテリジェンスという語は、私からすると叡智というよりは、むしろ戦略やリテラシー的色彩を帯びている。
私がどうしても佐藤優を信用できないのは、彼がイスラエルと通じているためだ。
— 小野不一さん (@fuitsuono) 2013年4月22日
それでも尚、私は彼の著作を開かざるを得ない。学問のスタンダードを学ぶために。
バブル経済が崩壊し、失われた10年を経て、労働者派遣事業の解禁が行われた。言い出しっぺはオリックスグループCEOを務める宮内義彦だ。この政策転換がデフレ化における格差拡大に拍車をかけた。
売り上げから搾取するのではなくして、最初の賃金設定から既に搾取するわけだから、企業家としては利益を勘定しやすい。経団連はその後、ホワイトカラーエグゼンプションの導入を目論んだが実現しなかった。彼らは外国人労働者の輸入も再三にわたって推進しようとしている。
ワーキングプアとは奴隷の異名であろう。貧困とは「ゆっくりと殺される」ことだ。とすると人口減少下での格差拡大はこの国を滅ぼす可能性が高い。
「年収100万円も仕方ない」ユニクロ柳井会長に聞く asahi.com/business/updat…グローバル経済の本質は、一将功なりて万骨枯る。一将は使い切れない富を手にするが、枯れた万骨が何とか生きていけるようにするのが政治の使命。人材使い捨ては社会への寄生に他ならない。
— 山口二郎さん (@260yamaguchi) 2013年4月23日
社名を湯煮黒に変えてはどうか?
— 小野不一さん (@fuitsuono) 2013年4月23日
・甘やかして、世界で勝てるのか ファーストリテイリング・柳井正会長が若手教育について語る
かような悪徳企業だったとはね。もう買うのをやめた。/Open ブログ: ◆ ユニクロ社長の詭弁 openblog.meblog.biz/article/157606…
— 小野不一さん (@fuitsuono) 2013年4月24日
今後私は「しまむら」へ行くことに決めた。
柳井正は開き直っているにようにしか見えない。金持ち特有の傲慢さが脂(あぶら)のように滴り落ちる。
お金は人々をだめにします。富者特有の傲慢さがあります。どの国でも、ごくわずかの例外を除いて、富者にはあらゆるものを──神々すらをも──ひねりつぶすことができるというあの特有の尊大な雰囲気があり、そして彼らは神々をも買うことができるのです。豊かさは金銭的な貯えによってだけではなく、能力の持ち主はまた、自分は他の人々より勝っている、彼らとは違うと感じます。このすべてが彼に一種の優越感を与えます。彼は、どっかりと腰かけて、他の人々が身もだえしているのを見守るのです。彼は、自分自身の無知、自分自身の精神の暗さに気づかないのです。お金と能力はこの暗さからの格好の逃げ口を提供します。結局、逃避は一種の抵抗であり、それはそれ自身の問題を生み出すのです。人生とは不思議なものです。無である人は幸いなるかな!
【『しなやかに生きるために 若い女性への手紙』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(コスモス・ライブラリー、2005年)】
富者は所有物の重みで必ず転落してゆく。っていうか転落して欲しいもんだね(笑)。いや実際は転落しているんだよ。所有への飽くなき欲望が常に恐怖を生むからだ。巨大な建築物は完成した瞬間から崩壊へと向かっている事実を忘れてはなるまい。
・もっとも、けた外れに巨大な建造物は、往々にして人間の不安の度をなによりも如実に写しているものなのです
巨大企業も一緒だ。
人類の歴史を転換するためには栽培化と家畜化から離れる必要があると思う。真の人間性復興と飢餓・貧困をなくすことは同時に行われなければならない。
— 小野不一さん (@fuitsuono) 2013年2月10日
少し前にこう呟いたのだが、本書を読んで更にその思いを深くした。
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