・『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎 2012年
・『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎 2012年
・『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎 2015年
・『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎 2015年
・『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎 2016年
・『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎 2018年
・『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎 2018年
・『愛国左派宣言』森口朗
・開業医丸儲け
・既得権益の象徴「保育業界」
・『日本人が知らない日本医療の真実』アキよしかわ
・『脱税の世界史』大村大次郎 2019年
業界団体による既得権益の保護と言えば、その最たるものが「保育所」である。
【『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(悟空出版、2018年)以下同】
はてな匿名ダイアリーに「保育園落ちた日本死ね!!!」がアップされたのは2016年2月15日だった。「日本死ね」という言葉が保守層の逆鱗(げきりん)に触れた。しかし、その感情は理解できる。幼子の前途に不安を感じた母親の怒りはむしろ当然であろう。その後、ハフィンポストが書き手にインタビューをしているが“予算の問題”として扱っている。
公的な保育施設がなかなか増えないのは、実は保育業界が増やすのを拒んでいるからなのである。
現在の保育園には、多額の補助金が支払われている。そして、保育業界にとっては、それが巨大な既得権益になっている。そのため、保育業界側が保育施設をむやみに増やそうとしたがらず、新規参入を拒んでいるのだ。つまり、それが待機児童問題がいつまでたっても解決しない、最大の要因なのである。
守旧派は競争を嫌う。サービスの質を上げ価格を下げることが権益を損なうからだ。だったら私的な保育施設を増やせばいいのでは? と思うだろうがそうは問屋が卸(おろ)さない。
【民間の認可保育所(保育園)というのは、実は非常に儲かるビジネスなのである。】
0歳児を一人与れば、毎月20万円以上の補助金がもらえる。規定では保育士は0歳児3人につき一人つけておけばいいことになっている。そして、保育士の給料は20~30万円だ。ということは、0歳児が3人いれば、補助金から保育士の給料を差し引いても30~40万円の収入になる。
これにプラスして、保護者から徴収する保育料がある。保育料は、地域や保護者の所得によって異なるが、児童一人あたり2万円程度はもらえることになる。ということは、児童を30~40人も抱えていれば、毎月数百万円の収入になるのだ。
しかも、認可保育所には固定資産税や法人税がかからない。だから、固定費も非常に安く済む。認可保育所をつくるためには土地と建物が必要なので、初期投資を行わねばならないが、それが済めば、後はかなりの収益を見込める。
そして、もし土地と金とコネを持っているなら、これほどおいしいビジネスは滅多にないというわけだ。
民間の保育所の経営者というのは、地主であったり、寺社であったりなど、その地域の有力者である場合が多い。彼らが自分の広い土地に保育所をつくり、税金もほとんど払わず、補助金をガッポリもらって潤い続けてきたのである。
たまげた。わざわざ0歳児一人に20万円の補助金を出すなら、親に直接20万円与えた方が手っ取り早いだろう。数時間のベビーシッターなら十分賄(まかな)える。むしろ高齢者などの雇用促進につながるので経済的な波及効果は決して小さくない。
驚くべきことに厚生労働省が主導して参入障壁を設けていた。
しかも保育所は、その設置数が自治体によって調整されている。児童不足で保育所が経営難に陥らないように、自治体のほうが気を配っているのだ。
これは、厚生労働省からの指示によるものである。
信じがたいことに、厚生労働省は自治体に対して「需要以上に保育所をつくらないように」という通知を出しているのだ。
「児童が不足して保育所が潰れるのはまずい」
そして、そのためには
「保育所が不足して待機児童が増えるのは構わない」
ということなのである。
しかも、この通知は非公開でも何でもなく、誰もが知ることができる。平成12年(2000年)に厚生労働省から全国の自治体に発せられた「保育所の設置認可について」という通知である。
官業の完全な癒着構造がくっきりと見える。子供は日本の未来そのものだ。その子供たちを犠牲にしながら利権に与(あずか)っている保育業界は日本の将来を破壊するブラック企業といってよい。
・「保育園落ちた日本死ね」から5年経っても、待機児童問題が解決しないワケ 保育所はビジネスとして儲からない
瀬地山角〈せちやま・かく〉という東京大学教授がまるで見当違いな指摘をしている。東京大学の保育所経営に関わっている人物ですらこの程度の認識なのだ。
高橋洋一や原英史〈はら・えいじ〉であればこうした事実を知っていることだろう。だが彼らですら、ここまで踏み込んだ発言はしていないと思われる。規制緩和・制度改革が遅々として進まないのは、牢固とした権益が存在する証拠だろう。若い母親を苦しめる厚生労働省は焼き討ちにすべきである。
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