2021-12-07

パウロと教父/『奇跡を考える 科学と宗教』村上陽一郎


 ・パウロと教父

キリスト教を知るための書籍

 初期教会の建設に最大の功績があったのはパウロであり、パウロはイエスの直接の弟子ではなく、それだけに、当時の関係者としてはほとんど唯一人、ユダヤ教の律法を熟知していたばかりか、ギリシャ的な教養や学問を身につけた人物だった。そして初期キリスト教会が自立し、目標に向かって活動する基盤の整備という仕事が、彼一人の肩にかかったことは、『新約聖書』の後半のほとんどがパウロの仕事であることからも言えるだろう。
 しかしパウロの仕事は、イエスの教えをどう理解し、人々の間にどうやって伝え、どうやって生きて行くことのなかで実践するか、という指針の提供に集中していた。言い換えれば、キリストの教えとは無縁のギリシャ哲学の伝統や、ローマの教養とのすり合わせを行った上で、そうした学問の伝統のなかでも、十分な説得性と合理性とをもってイエスの教えを理解することのできるような、纏まった神学大系を築く作業は、パウロのものではなかった。それは単に他の宗教的な体系に対して自らを守るという消極的な視点ばかりではなく、ヘレニズムの世界全体に通用する宗教的理念の確立という、積極的な意味を持った仕事だった。そしてその作業に、さまざまな形で取り組んだのが、教父と呼ばれる人々だった。

【『奇跡を考える 科学と宗教』村上陽一郎〈むらかみ・よういちろう〉(講談社学術文庫、2014年)】

 誠実な好著であるが、村上がカトリック信徒であることを考慮する必要あり。「ウーーーン」となる文章が目立つ。宗教は思考を束縛し、信仰は感情を支配する。宗教は六根(五感+意識)というフィードバック機能を教理でもって歪める。


 現在のイスラエルは地中海性気候である。比較的温暖だが雨が少ない。上記地図を見れば一目瞭然だがイスラエルを中心とした砂漠世界はイスラム教世界となっている。宗教の伝播(でんぱ)は気候の影響を強く受ける。仏教の場合、南伝北伝に分かれるが気候が厳しい地域では教義も厳しくなる傾向がある。ユダヤ教発祥のキリスト教とイスラム教にも適用可能だろう。またドイツからプロテスタントの火の手が上がったのも気候的な厳しさによるものと私は考えている。

 キリスト教はパウロ教とも言われるが、パウロの名は英語圏ではポール、スペイン語圏ではパブロである(『ニューステージ 世界史詳覧』浜島書店編集部編)。ポール・マッカートニーやパブロ・ピカソの名前はパウロ由来というわけだ。

 ギリシャ哲学(新プラトン主義)とキリスト教を理論的に統合したのがアウグスティヌスである。中世になるとトマス・アクィナスが『神学大全』を完成する。この人、日蓮とほぼ同世代というのも興味深いところである。

 壮大な後付理論だな。あるいは歴史的言いわけ。西洋の修辞学や論理学が胡散臭いのは説得が目的化しているためだ。相手を知る、理解する姿勢が欠けている。我々は『万葉集』民族である。ちょっと肌が合わないわな。

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