2015-12-22

宗教学者の不勉強/『21世紀の宗教研究 脳科学・進化生物学と宗教学の接点』井上順孝編、マイケル・ヴィツェル、長谷川眞理子、芦名定道


岡野潔「仏陀の永劫回帰信仰」に学ぶ
『業妙態論(村上理論)、特に「依正不二」の視点から見た環境論その一』村上忠良

 ・宗教学者の不勉強

『身心変容技法シリーズ① 身心変容の科学~瞑想の科学 マインドフルネスの脳科学から、共鳴する身体知まで、瞑想を科学する試み』鎌田東二編

【衣服を着た神の姿】最近の研究は思わぬところから人間の身体や生活洋式の変化の過程を推測するようになっている。たとえば人類が体毛を失ったのは300万年ほど前で、服を着るようになったのが7万年ほど前という推測がある。これはシラミの研究から導かれたもので、陰部に棲むケジラミと頭部に棲むアタマジラミのDNA分子解析と、アタマジラミから分かれたコロモジラミの分子解析による。
 つまり人類の体毛がなくなったので、ケジラミとアタマジラミは分離され、別々の進化をした。また服を着るようになったので、アタマジラミからコロモジラミが分化し、もっぱら衣服に棲むようになったということである。衣服着用は、出アフリカした人類の寒冷地への進出を可能にしたと考えられる。そうすると、神とか霊的存在の表象において擬人化がいつ始まるかは不明にしても、それらが衣服をまとった姿で表象されるのは、7万年より新しくなければならないという推測が成り立つ。

【『21世紀の宗教研究 脳科学・進化生物学と宗教学の接点』井上順孝〈いのうえ・のぶたか〉編、マイケル・ヴィツェル、長谷川眞理子、芦名定道〈あしな・さだみち〉(平凡社、2014年)】


枕には4万匹のダニがいる/『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン

 狙いはよいのだが勉強不足だ。井上は「あとがき」で肩をそびやかしているが、とてもそんなレベルではない。ESS理論ミラーニューロンなどが目を惹いた程度。リチャード・ドーキンス、アンドリュー・ニューバーグ、ジル・ボルト・テイラーを横断的に紹介している。

神経質なキリスト教批判/『神は妄想である 宗教との決別』リチャード・ドーキンス
脳は神秘を好む/『脳はいかにして〈神〉を見るか 宗教体験のブレイン・サイエンス』アンドリュー・ニューバーグ、ユージーン・ダギリ、ヴィンス・ロース
ジル・ボルト・テイラー「脳卒中体験を語る」

 なんとジル・ボルト・テイラーの書評もまだ書いていなかったとは(涙)。

 各人による各章がバラバラで統一感を欠く。季刊誌にするような代物といってよい。科学から宗教に対するアプローチと比べるとその浅さに驚愕の念すら覚える。

 中野毅〈なかの・つよし〉の論文「宗教の起源・再考 近年の進化生物学と脳科学の成果から」の方が有益である。この分野の書籍については以下に一覧を示す。

宗教とは何か?

ユーザーイリュージョン 意識という幻想』や『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』、『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』を押さえていない宗教学者は不勉強の誹(そし)りを免れない。また、ジル・ボルト・テイラーの『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』は、必ずジュリアン・ジェインズ著『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』から考証する必要があるのだ。

 そしてこのテーマは「情報とアルゴリズム」に向かう。科学と宗教は時間を巡る地平において肩を並べ得る。教義といえども情報である。すなわち宗教とは人類が発明した最も古い形のアルゴリズムなのだ。

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