2011-06-20

僕はちっぽけで弱いが、正しいことをしたいのだ


 どこかへ行って、小さな家を建て、窓に花を飾り、玄関の前に庭を作って、神を讃え、感謝を捧げて、汚い世界には背を向けていればいいのだろうか? 世を捨てることは、裏切りではないのか? 逃亡では? 破壊のあとに光が来るというなら耐えられる。若き精神は、廃墟から光に向かって舞い上がっていくのだ。だが、破壊と光が同時に存在するというのは矛盾だ。僕はちっぽけで弱いが、正しいことをしたいのだ。(ハンス・ショル)

【『「白バラ」尋問調書 『白バラの祈り』資料集』フレート・ブライナースドルファー編:石田勇治、田中美由紀訳(未來社、2007年)】

「白バラ」尋問調書―『白バラの祈り』資料集

2011-06-19

利子、配当は富裕層に集中する/『エンデの遺言 根源からお金を問うこと』河邑厚徳、グループ現代


『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
『国債は買ってはいけない! 誰でもわかるお金の話』武田邦彦
『平成経済20年史』紺谷典子
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎

 ・貨幣経済が環境を破壊する
 ・紙幣とは何か?
 ・「自由・平等・博愛」はフリーメイソンのスローガン
 ・ミヒャエル・エンデの社会主義的傾向
 ・世界金融システムが貧しい国から富を奪う
 ・利子、配当は富裕層に集中する

・『税金を払う奴はバカ! 搾取され続けている日本人に告ぐ』大村大次郎
・『無税国家のつくり方 税金を払う奴はバカ!2』大村大次郎
『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー

必読書リスト その二

 モノの価値は時間を経るごとに下がる。腐ったり、色褪せたり、時代遅れになってゆく。時は残酷に諸行無常のリズムを奏でる。

 ただ一つ例外がある。それがお金だ。マネー。お金は利子を生んで増殖する。まるで生き物のように。なぜお金は減ってゆかないのだろう? 本書は利子というマジックの種明かしをしている。待望の文庫化。

 すでに早く『アメリカの没落』(ドナルド・L・バーレットほか著)は21世紀初頭のアメリカにおいては、利子、配当などのキャピタルゲインのすべては上位4パーセントの富裕層に流れ込むことになろう、と予測している。IT革命を味方とした国際金融システムがそれを加速する。(『エンデの遺言』 その深い衝撃/内橋克人)

【『エンデの遺言 根源からお金を問うこと』河邑厚徳〈かわむら・あつのり〉、グループ現代(NHK出版、2000年/講談社+α文庫、2011年)】

 内橋克人が寄せた序文である。マネーの川は流れ、富裕層というダムによって堰(せ)き止められる。水は発展途上国の手前で干上がる仕組みになっている。

 経済の重力を阻害しているのは富裕層の強欲だ。競争原理が働けば「見えざる手」も機能するのだろうが、税金・国家予算・規制・広告などが幅を利かせているから無理だ。競争は常にコントロール下で行われている。

 アメリカや中国、そして日本でも貧富の差が拡大している。二極化は富の分配が不公平であることを示す。

 次に紹介するのは今月のニュースである。

◆世界の富の約4割を1%の「億万長者世帯」が保有、米調査

 世界の世帯数のわずか1%程度に過ぎない「億万長者世帯」が、世界の富の約4割を保有し、国際的不況の中で貧富の格差はさらに広がりつつある──。コンサルティング大手のボストンコンサルティンググループ(Boston Consulting Group)が5月31日に発表した2010年度の世界の資産などに関するレポートで、このような実態が示された。
 金融資産100万ドル(約8100万円)以上を保有する「億万長者世帯」の数は前年比で12%増え、この結果、億万長者世帯が世界の家計金融資産を保有する割合も、2009年調査の37%から39%に増えた。
 国別に見ると、米国は国際金融危機の震源地だったにもかかわらず、億万長者世帯数は群を抜いており、前年比1.3%増の520万世帯と世界で最も多かった。2番目に富裕世帯が多いのは日本で153万世帯、3位が中国で111万世帯だった。
 アジアではシンガポールを始めとする新興経済国の成長も目立ち、世界の富を保有するアジア地域の割合は前年比2.9%増だった。

AFP 2011-06-05

 使い切れないほどの富を独占している連中が存在する。世界中に転がっている飢餓や貧困は彼らが生んだものかもしれない。政治や経済が、あるいは科学や宗教が世界を救ったことは一度もない。我々は飢えに喘ぐ人々をテレビの画面越しに眺めた時だけ、ほんの少し哀れみを覚えるだけだ。

 コンピューターネットワークによって金融はグローバル化された。余ったお金がマーケットに溢れ、実体経済を翻弄する。

 経世済民が本当であるならば、貧困と飢餓をヘッジするファンドがあってしかるべきだ。IMF(国際通貨基金)と世界銀行支配から脱却することが南北問題解決の第一歩であると私は考える。



IMF(国際通貨基金)を戯画化するとこうなる
消費を強制される社会/『浪費をつくり出す人々 パッカード著作集3』ヴァンス・パッカード
アンシャン・レジームの免税特権/『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』ニコラス・シャクソン

白川静


 1冊読了。

 39冊目『白川静の世界 漢字のものがたり』別冊太陽(平凡社、2001年)/値段の割には本の構成とページのレイアウトがまるでなっていない。別冊ニュートンも同様だが、ページに対してフォントが小さすぎる。それとも雑誌業界の陰謀なのだろうか? で、内容なんだが中ほどの「祭」特集が弱い。金文や甲骨文の写真を掲載した方がよかった。梅原猛との対談も今ひとつ盛り上がりに欠ける。梅原に気合いが見られない。白眉は漫画家の岡野玲子との対談だ。これは手に汗握る展開となっている。

最も美しいことば


 最も美しいことばは常に過去形で語られる。

【『我が心はICにあらず』小田嶋隆(BNN、1988年/光文社文庫、1989年)】

我が心はICにあらず

青春時代

2011-06-18

武内進一、野口哲典、P・マルヴェッツィ、G・ピレッリ


 2冊挫折、1冊読了。

 挫折29『現代アフリカの紛争と国家 ポストコロニアル家産制国家とルワンダ・ジェノサイド』武内進一(明石書店、2009年)/横書きのため読まずに図書館へ返す。買わなくてよかった、と胸を撫で下ろす。6500円だからね。

 挫折30『知ってトクする確率の知識 成功するにはワケがある!』野口哲典(サイエンス・アイ新書、2006年)/横書きのため1ページも読まず。横書きは漢字の香りを台無しにする。基本的に私は横書きテキストを読まない。

 38冊目『イタリア抵抗運動の遺書 1943.9.8-1945.4.25』P・マルヴェッツィ、G・ピレッリ編:河島英昭、他訳(冨山房百科文庫、1983年)/やっと読み終えることができた。20年越しの読書となった。冨山房〈ふざんぼう〉と翻訳者21名に感謝を捧げる。第二次大戦中にファシズムと戦ったパルチザンが、死刑直前に認(したた)めた遺書が収められている。取り乱した様子は殆ど見られない。それどころか敵をも許すよう家族に呼びかけている。彼らは理想に生き、理想に殉じた。無名の勇者たちが残した言葉は「人類の巨大な記念碑」といってよい。