一瞬で心を奪われた。暮れなずむ空の下、しっかりとした足取りで横断歩道を渡る男性。よく見ると2羽の鳥が戯(たわむ)れるように舞っている。たぶん巣に帰るのだろう。そんなふうに思わせてしまうだけの確かな物語力がある。時々見返す写真の一枚だ。絶妙な構成の理由がしばらくわからなかった。真ん中に何も写っていないためだ。後になってやっと理解できた。信号の三角形を中心に据(す)えているのだ。結果的に坂道と木陰の暗い部分が縦横の3分の1をきれいに占めている。そこに思い当たると、フィボナッチ数的な要素すら感じる。そして電線は「つながり」のメタファーと化す。
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