・『悲鳴をあげる身体』鷲田清一
・『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴
・幼少期の歪んだ価値観が肉体を破壊するほどのストレスと化す
・ストレスにさらされて“闘争”も“逃走”もできなくなった人々
・ストレス依存
・急性ストレスと慢性ストレス
・心のふれあい
・『生きぬく力 逆境と試練を乗り越えた勝利者たち』ジュリアス・シーガル
・『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』べッセル・ヴァン・デア・コーク
・『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ
・『心と体を強くする! メガビタミン健康法』藤川徳美
・『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』溝口徹
・『食事で治す心の病 心・脳・栄養――新しい医学の潮流』大沢博
・『オーソモレキュラー医学入門』エイブラハム・ホッファー、アンドリュー・W・ソウル
・『ストレス、パニックを消す!最強の呼吸法 システマ・ブリージング』北川貴英
・『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』藤本靖
・『あなたはプラシーボ 思考を物質に変える』ジョー・ディスペンザ
・『瞬間ヒーリングの秘密 QE:純粋な気づきがもたらす驚異の癒し』フランク・キンズロー
・虐待と知的障害&発達障害に関する書籍
・必読書リスト その二
医学ではふつう、ストレスとは非常に厄介なではあるが単独の出来事、たとえば突然の失業、結婚生活の破綻、大切な人の死などの出来事だと考えられている。確かにこうした大事件は多くの人にとってストレスの原因になり得るが、もっと目立たない、しかしからだにもって長期的な害をあたえるような日常的なストレスがあるのだ。心の中から生じたストレスは、外からはまったく正常であるように見せかけるが、からだにしっかり悪影響を与えるのである。
心の中に生じたストレスに幼いころから慣れてしまった人々は、ストレスがないと不安になり、退屈で生きる意味がないような気がしてくる。これをセリエは、アドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンの嗜癖(しへき)が身についてしまうせいだと考えた。そのような人にとってストレスは望ましいものであり、なくなっては困るものなのである。
【『身体が「ノー」と言うとき 抑圧された感情の代価』ガボール・マテ:伊藤はるみ訳(日本教文社、2005年)以下同】
人間にとって最大のストレスは死である。もしもあなたが「余命3ヶ月です」と医師から告知されたらどうなるだろう? 生き方が一変するだろうか。それとも相変わらずのんべんだらりと余生を過ごすだろうか。「死の受容」についてはエリザベス・キューブラー=ロスが『死ぬ瞬間 死とその過程について』でモデル化を試みている。
ストレッサー(ストレスの要因)は生命の危機感に由来すると思われるが、これが嗜癖になる事実は暴走族を見ればわかるだろう。あるいは遊園地など。スリルは生の実感を高める。安全と冒険の間を揺れ動くのが人生といってよい。
子供は環境に逆らえない。生まれた家庭は所与のものである。よその家庭との比較も不可能だ。どんな家庭で育ったとしてもそれが「普通」の基準となる。暴言・暴力・ネグレクト(育児放棄)が与えるダメージは深刻で脳の発育に影響を及ぼす。感情や言葉を上手くコントロールできなければ社会生活が行き詰まる。子供たちは「変な奴」を避ける。時にのけものにし、あるいはいじめる。
親から叩かれて育った子供は外で喧嘩をするようになる。私がそうだ。幼稚園から20代まで直ることがなかった。ストレスホルモンの嗜癖はスポーツ選手において顕著だ。強い負荷や抵抗が強靭な体をつくる。水泳巧者は水の抵抗を嫌うことがない。
ただし判断を誤ると常にDV男を選んでしまう女性のような羽目に陥る。一種のマゾヒズムであろう。
それなら、ストレスとは何なのか?(中略)セリエは、ストレスとはひとつの生物学的プロセス、体内の後半な作用の総体であり、原因や自覚のあるなしは無関係だと考えた。ストレスとは、ある有機体がその存在や健康への脅威を知覚したときに起こる、体内の変化――目に見えるかもしれないし見えないかもしれない――なのである。神経の緊張はストレスのひとつの構成要素かもしれないが、緊張を感じることなくストレスを受けることもある。反対に、緊張を感じてもストレスの生理的メカニズムが始動しないこともあり得る。
小さなストレスが大きな被害につながることがある。特に慢性的な体の不調がある人は要注意だ。食欲不振や睡眠障害があれば既に病気の隣にいると言ってよい。人間にとって本質的な欲望が阻害されているわけだから。心は見えない。それゆえ体を見つめるのが手っ取り早い。