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2021-03-23

意志力は限りある資源/『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー


『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー
『「食べもの神話」の落とし穴 巷にはびこるフードファディズム』高橋久仁子
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
・『本当は危ない植物油 その毒性と環境ホルモン作用』奥山治美
『日本人には塩が足りない! ミネラルバランスと心身の健康』村上譲顕
『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか
『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美
『コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる』浜崎智仁
『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス

 ・炎症が現代病の原因
 ・食物に含まれる反栄養素
 ・意志力は限りある資源
 ・炭水化物は夕食で摂る

・『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』デイヴ・アスプリー
・『運動ゼロ空腹ゼロでもみるみる痩せる ガチ速“脂"ダイエット』金森重樹
・『食べても太らず、免疫力がつく食事法』石黒成治
・『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム
『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』小林弘幸、玉谷卓也監修
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン

必読書リスト その一

 問題は、ダイエットの実践者も医師でさえも、意志力という概念をまるで誤解していることだ。この人たちは、成功の秘訣はとにかく気合いを入れて、無尽蔵の意志の力で過食をしないことだと信じている。ところが、意志力は限りある資源だということが証明されてきた。毎日、意志力を使い果たすこともあるし、もっと頑張ろうと決めたからといって、意志力が改めて供給されることはない。
「決定疲れ」とは、長時間の意思決定のあとで決定の質が劣化することを指す、実証された心理現証である。たとえば、ある研究によれば、【裁判官は一日のうちの遅い時間になるほど、被告に有利な判決を下すことが少なくなるという】。

【『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー:栗原百代〈くりはら・ももよ〉訳(ダイヤモンド社、2015年)以下同】

決断疲れ」とも言うようだ。確かに大きな決断をした後では小さな判断がどうでもよくなる。例えば自動車のオプションなどは人間のこうしたメカニズムを利用しているのだろう。数百万円のクルマを購入する決断をした後で数万円の追加料金は小さなことに感じてしまう。たぶん犯罪者となる人々も初めての悪事に手を染めた時は迷いがあったに違いない。2回目以降は下り坂を転がってゆくだけで自動的に慣性が働く。脳は異常を自覚しない。ひとたび公正さよりも損得を優先すれば、利益を飽くことなく追求する回路が形成される。

 健康に留意すると食品を買うたびに「決定」を迫られる。目を皿のようにして食品表示を確認して添加物や糖質を回避する。まさしく「決定疲れ」との戦いである。ちょっと油断をすれば「ま、たまにはいいか」などと甘いものに手を伸ばしてしまう。ダイエットの原義である食習慣を生き方にまで高めるためには、集中力を途絶えさせない栄養素が必要だ。

【正しい脂肪はクリーンに燃焼し、栄養たっぷりで、満足をもたらすエネルギー源で、体も脳も最大限に機能させてくれる】。

 脂肪を食べても太らないという。食品のカロリーや栄養素はそのまま体内に取り込まれるわけではない。複雑な化学反応を通して代謝される。脂肪悪玉説は砂糖メーカーから依頼されたアメリカ人医師がでっち上げたものだ。

 デイヴ・アスプリーは果物を否定している。ビタミンを摂取できる利点はあるが、やはり果糖の悪影響の方が大きいと考えているのだろう。また低塩ダイエットは体に毒で、塩分の適正な量は2500~6000ミリグラムと述べている。

 多くの医師が塩分摂取は高血圧につながると警告しているが、研究からは、塩分にそのように反応するのはすでに高血圧の人だけであることが明らかだ。高血圧には、じつのところ、カルシウム、マグネシウム、カリウムの不足など、多数の要因が考えられる。

 私は酒を断ってから血圧が高くなった。因果関係があるかどうかは不明である。この7~8年間は180台であったが自転車に乗るようになってから下がり始め、現在は140台である。さほど気にしてなかったのは血圧が高いと目覚めがいいためだ。気合一閃(いっせん)で飛び起きるのを常としている。

 塩分量は意外と難しい問題で、そもそものマウス実験に対する批判もあるし、その一方で塩分摂取量を減らして成功した長野県の例もあり一筋縄ではゆかない。

長寿県民ランキングはこちら!なぜ長野県民は長生きなのか…?を探ると見えてきた、減塩・禁煙・肥満防止の重要性|ニッポンの介護学|みんなの介護
食塩摂取の多い人々

 農作業や家事などの近代化が進み、重労働や力仕事が減って、「汗をかくこと」が少なくなったことも無関係ではないだろう。

 冷や飯に含まれるレジスタントスターチに効果があるとしているが、それほどでもないという意見もある。更にバターとギー以外の乳製品は避けるとも指摘されている。

2021-03-16

食物に含まれる反栄養素/『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー


『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー
『「食べもの神話」の落とし穴 巷にはびこるフードファディズム』高橋久仁子
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
・『本当は危ない植物油 その毒性と環境ホルモン作用』奥山治美
『日本人には塩が足りない! ミネラルバランスと心身の健康』村上譲顕
『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか
『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美
『コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる』浜崎智仁
『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス

 ・炎症が現代病の原因
 ・食物に含まれる反栄養素
 ・意志力は限りある資源
 ・炭水化物は夕食で摂る

・『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』デイヴ・アスプリー
・『運動ゼロ空腹ゼロでもみるみる痩せる ガチ速“脂"ダイエット』金森重樹
・『食べても太らず、免疫力がつく食事法』石黒成治
・『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』小林弘幸、玉谷卓也監修
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン

必読書リスト その一

さて、炎症が身体的パフォーマンスを制限し、精神的パフォーマンスも落としているのはわかった。だが、こうした炎症を起こしているものは何なのか?
 炎症の原因を勉強しはじめた僕は、「アンチニュートリエント」(反栄養素、栄養阻害物質)についての膨大な研究を見つけた。ごくふつうの食品におびただしい数が含有されている、慢性炎症の原因とおぼしき物質だ。腸を刺激して免疫系を発動させ、体の回復や解毒システムを損なう。

【『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー:栗原百代〈くりはら・ももよ〉訳(ダイヤモンド社、2015年)以下同】

 食品添加物もさることながら植物自体が合成する自然由来の反栄養素がある。反栄養素とは毒と考えてよい。特に動くことができない植物は昆虫や動物から身を守るために毒を放つ。ヒトは毒を苦味として感知する。良薬(ろうやく)が苦いのはもともと毒だからだ。毒を以て毒を制するのが薬の作用だ。

 反栄養素は毎日の体調に、あなたが想像しているよりずっと大きな影響を及ぼしている。何であれ達成しようとしていることから気をそらしたり、重度の食物への渇望のもとになり、体内の栄養素を奪ってホルモンの機能を妨(さまた)げ、時間の経過とともにさまざまな体のシステムを弱め、徐々に動きを鈍らせる。反栄養素摂取の多さや遺伝によっては、自己免疫反応が出るかもしれない。こうなると、免疫系が体の重要なシステムを攻撃して、体がいっそう大きなダメージを受けることになる。
【大切なのは、反栄養素を含む食品はなるべく摂らないで、免疫系を刺激する食品は完全に避けて、免疫反応を抑制することだ】。

 自然由来の反栄養素の主なものには、レクチン、フィチン酸、シュウ酸、カビ毒(マイコトキシン)などがある。例えばホウレンソウを茹でると灰汁(あく)が出るがこれがシュウ酸である。シュウ酸はカルシウムと結合して体外に排出してしまう。また尿道結石の原因にもなる。ただし実際の結石はコーヒーやお茶など毎日摂取するものによると考えられている(3 再発予防 CQ29 シュウ酸はどのような食物に多く含まれるか?また,シュウ酸の摂取について工夫すべきことはあるか? | Mindsガイドラインライブラリ)。

【このような反栄養素のいくつかは多くの植物性・動物性食品に見られるが、豆類、ナッツ、穀類などの植物性食品は他より圧倒的に多く含んでいる】。

・レクチンは熱で破壊されるが、ナス科の野菜などは熱で破壊されないレクチンを含んでいる。
・牧草飼育(グラスフェッド)の牛肉やラム肉はフィチン酸を除外してくれる。

【シュウ酸が血中のカルシウムと結合すると小さく尖った結晶となって体内に堆積(たいせき)して、筋肉痛が起こる】。これが腎臓(じんぞう)で起これば腎結石(じんけっせき)の一因になるわけだ。にわかには信じがたいことだが、シュウ酸が陰唇で結晶して性交時に痛みを感じる女性もいる。

 加齢に伴い性交痛を感じる女性が増えるようだが心配な方は一度調べるといいだろう。

 コーヒー以外の食品で【カビ毒の主要源は、小麦、トウモロコシといった穀物だが、ピーナッツ、果物、チョコレート、ワインが汚染されていることも多い】。そしてカビ毒は、汚染された穀物を食べた牛の乳にも蓄積される。

 特に湿度の高い我が国ではカビ毒の影響は見過ごせない。流通という時間が新鮮さを失わせる。規制だらけの農業を改革し、地産地消の文化を根づかせるべきだろう。

2021-02-23

炎症が現代病の原因/『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー


『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー
『「食べもの神話」の落とし穴 巷にはびこるフードファディズム』高橋久仁子
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
・『本当は危ない植物油 その毒性と環境ホルモン作用』奥山治美
『日本人には塩が足りない! ミネラルバランスと心身の健康』村上譲顕
『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか
『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美
『コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる』浜崎智仁
『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス

 ・炎症が現代病の原因
 ・食物に含まれる反栄養素
 ・意志力は限りある資源
 ・炭水化物は夕食で摂る

・『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』デイヴ・アスプリー
・『運動ゼロ空腹ゼロでもみるみる痩せる ガチ速“脂"ダイエット』金森重樹
・『食べても太らず、免疫力がつく食事法』石黒成治
・『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム
『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』小林弘幸、玉谷卓也監修
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン

必読書リスト その一

 原因を調べていくうちにわかった。弱った手、スペアタイヤ、二重あご、むくんだ肌、男のおっぱいを引き起こしていたのは脂肪ではなかった――【これらは炎症のせいだった】(もっとも、炎症の下に脂肪がたっぷり隠れてはいたけれど)。アンチエイジングのバイオハッカーである僕は、炎症が老化の原因というのは知っていたものの、自分の生態に起こっている他のほぼすべても炎症に関係していたは気づいていなかった。

【『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー:栗原百代〈くりはら・ももよ〉訳(ダイヤモンド社、2015年)以下同】

 20年前に体重140kgだった億万長者が10年で50kgの減量に成功した。30万ドルを費やしてあらゆるダイエット法を試したという。ダイエットの原義は「食習慣」である。食事制限による痩身術と誤解している人が多い。本書はデイヴ・アスプリーが編み出した「バターコーヒー」で一躍世界的な脚光を浴びたベストセラーである。

「慢性炎症は生活習慣病とがんに共通する基盤病態」(真鍋研究室)であり、「2型糖尿病患者は一般に肥満で,慢性の炎症を患い,インスリンに抵抗性がある(インスリンは血中の糖を取り込んでエネルギーとして保存するために働くホルモン)」(日経サイエンス2010年2月号)。自己免疫疾患アトピー性湿疹は順序が逆だが症状として炎症反応が起こる。最近ではアルツハイマー病も「脳の炎症」と考えられている(『アルツハイマー病 真実と終焉 “認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム』デール・ブレデセン)。

【調査研究の結果、多くの病気の中心には高度の炎症があることが何度も示されてきた】。心疾患(しんしっかん)、がん、糖尿病はアメリカの全死因の70%近くを占めるが、これらの病気すべてに共通しているのが炎症だ。また炎症は、多くの自己免疫疾患や一部の精神衛生上の問題ともつながっている。
 僕もそうだったが自分では炎症の症状をあまり感じていなくても、脳は体のどの部位の炎症にもきわめて敏感で集中力を弱められてしまうから、炎症を放っておくと、体の痛みや不調を感じだすよりずっと前に、頭のキレが鈍る。そう、ぼんやり頭と、いつものむくみにいますぐ対処すべき理由は、これらがその先のもっと深刻な問題の危険信号だからなのだ。

 痛みの伴わない炎症が厄介なのだ。肥満は既に病気として捉えられているが、肥満そのものを炎症状態と考えてよかろう。外傷以外のあらゆる炎症の原因は食べ物にある。口から入った毒に対する免疫反応が炎症なのだ。そしてまた過剰な栄養も毒と同じ作用をもたらす。人類史を振り返っても食べるのに困らなくなったのは第二次世界大戦からの復興以降のことだ。まだ100年に満たない期間である。

 近代化によって文明病が、近代化が行き渡ることで現代病が生まれた。栄養学は最も学問の名に値しない学問だが、摂取カロリーを全て燃料と考え、脂質は体の脂肪になると錯覚してミスリードし続けてきた。コンピュータによって分子科学が発達したことで栄養学の誤謬(ごびゅう)が次々と明らかになりつつある。栄養学は土下座をして出直すべきだろう。

【大切なのは、反栄養素を含む食品はなるべく摂らないで、免疫系を刺激する食品は完全に避けて、免疫反応を抑制することだ】。  たいていの人は食品に添加されていそうな保存料、農薬、着色剤など、反栄養素の一形態である毒素には注意しているのに、これらが食物への渇望をかきたて、脳のパフォーマンスを低下させることを理解している人はほとんどいない。日常生活に隠れている「自然由来の反栄養素」のことをわかっている人は、さらにわずかしかいない。
 この毒素は、植物および植物製品の栽培や貯蔵中に形成されるもので、その主な機能は、植物が繁殖するために動物、昆虫や微生物、菌類に食べられ愛ようにすること。そう、植物は、僕らが食べるために進化したんじゃない。僕らに食べ【られない】ために、複雑な防御システムを発展させてきたのだ!(中略)
 自然由来の反栄養素の主なものには、レクチン、フィンチ酸、シュウ酸、カビ毒(マイコトキシン)がある。

 植物は動くことができない。このため昆虫や動物に襲われると毒を放って身を守る。シュウ酸は聞いたことのある人が多いだろう。ホウレンソウを茹でるのはシュウ酸を取り除くためだ。野菜を煮た時に出る灰汁(あく)を毒と考えればよい。

 不健康は糖質の摂(と)り過ぎによってもたらされる。要は穀物と砂糖だ。糖質は血糖値を一気に上昇させ、インスリン反応が起こる。血中のブドウ糖が過剰になるとインスリンが効きにくくなり(インスリン抵抗性)、膵臓のインスリン分泌能力が低下する。尿にまで糖が出るから糖尿病というのだ。しかも糖質の中毒性(依存性)はコカインよりも高いというデータがある。甘いものは多幸感を招くが、少し経つとボーッとしてくることが多い。上昇した血糖値がインスリンで一気に下がると今度は低血糖状態になるためだ。

 個別が普遍に通じるわけではないが、デイヴ・アスプリーの努力は多くの人に新しい知識と賢明なヒントを与えてくれるだろう。



インターバル速歩/『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博

2020-10-20

穀物が国家を作る/『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット


『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』ジョセフ・ヘンリック
『文化的進化論 人びとの価値観と行動が世界をつくりかえる』ロナルド・イングルハート
『家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか』リチャード・C・フランシス
『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三
『人類史のなかの定住革命』西田正規

 ・定住革命と感染症
 ・群集状態と群集心理
 ・国家と文明の深層史(ディープ・ヒストリー)を探れ
 ・穀物が国家を作る

『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
『文明が不幸をもたらす 病んだ社会の起源』クリストファー・ライアン
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎
『脱税の世界史』大村大次郎
・『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛、渡部昇一
『人類と感染症の歴史 未知なる恐怖を超えて』加藤茂孝
『感染症の世界史』石弘之
『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ
・『近代の呪い』渡辺京二
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二

必読書リスト その四

 しかし、なぜ穀物は、最初期の国家でこれほど大きな役割を果たしたのだろうか。結局のところ、ほかの作物は――中東ではとくにレンズマメ、ヒヨコマメ、エンドウマメなどの豆類が、中国ではタロイモ、ダイズが――すでに作物化されていたのだ。なぜ、こうしたものは国家形成の基盤とならなかったのだろう。もっと広げれば、なぜ歴史記録には「レンズマメ国家」がないだろう。ヒヨコマメ国家やタロイモ国家、サゴ国家、パンノキ国家、ヤムイモ国家、キャッサバ国家、ジャガイモ国家、ピーナッツ国家、あるいはバナナ国家はなぜ登場しなかったのだろう。こうした栽培品種の多くは、土地1単位当たりで得られるカロリーがコムギやオオムギよりも多く、労働力が少なくて済むものもある。単独で、あるいはいくつかを組み合わせることで、同程度の基礎的栄養は提供されたはずだ。言い換えれば、こうした作物の多くは、人口密度と食料価値という農業人口統計学的な条件を、穀物と同じ程度には満たしているのだ(このなかで水稲だけは、土地1単位当たりのカロリー値の集中度という点で抜きんでている)。
 わたしの考えでは、穀物と国家がつながる鍵は、穀物だけが課税の基礎となりうることにある。すなわち目視、分割、査定、貯蔵、運搬、そして「分配」ができるということだ。レンズマメやイモ類をはじめとするデンプン植物といった作物にも、こうした望ましいかたちで国家適応した性質がいくつか見られるが、すべての利点を備えたものはない。穀物にしかない利点を理解するためには、自分が古代の徴税役人になったと想像してみればいい。その関心は、なによりも収奪の容易さと効率にある。
 穀物が地上で育ち、ほぼ同時に熟すということは、それだけ徴税官は仕事がしやすいということだ。軍隊や徴税役人は、正しい時期に到着しさえすれば、1回の遠征で実りのすべてを刈り取り、脱穀し、押収することができる。敵対する軍隊にとっては、穀物だと焦土作戦がとても簡単になる。収穫を待つばかりの穀物畑を焼き払うだけで、耕作の移民は逃げるか飢え死にするかしかない。さらに好都合なことに、徴税役人にしても敵軍にしても、ただ待っていれば作物は脱穀され、貯蔵されるので、あとは穀物倉の中身をごっそり押収すればいい。実際に中世の十分の一税では、耕作農民が脱穀前の穀物を束にして畑に置いておけば、超税官が10束ごとに1束ずつ持っていくことになっていた。

【『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット:立木勝〈たちき:まさる〉訳(みすず書房、2019年)】

 国家とは徴税システムなのだ。衝撃と共に暗澹(あんたん)たる気持ちに打ちひしがれた。小室直樹が「税金は国家と国民の最大のコミュニケーション」(『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』)と指摘したが、初期国家は奴隷に支えられていた。つまり搾取を、民主政という擬制によってコミュニケーションと見せかけるまでに奴隷制度は薄められたのだろう。であれば国民とは納税者と消費者の異名である。

「チンパンジーの利益分配」(『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール)を思えば、人類の不公平さはあたかもチンパンジー以下に退化した感を覚える。社会主義・共産主義への憧れがいつまで経っても消えない理由もこのあたりにあるのだろう。ただし旧共産圏が格差を自由主義以上に拡大した事実を我々は知っている。

 一体誰がどのような目的で国民の富を奪っているのだろうか? 税は強制的に徴収される。所得税は新しい税で、源泉徴収が導入されたのは第二次世界大戦前のことだったと記憶している。確かヒトラー率いるドイツに続いて日本が導入したはずだ。元々は収穫高に応じて負担が決められた。近代では戦費調達を目的とした税も多い(酒税、たばこ税など)。一旦設定された税が取り消されることはない。税負担は増え続ける一方で軽減に応じる国家は見当たらない。、国家はきっと酷税によって亡ぶことだろう。

 現代の奴隷は「自らお金を支払う者」である。消費には必ず税が含まれている。マイホームを購入すれば、印紙税・登録免許税・不動産取得税・固定資産税・都市計画税などの負担があり、自動車を買えば、自動車取得税、消費税、自動車重量税、自動車税を取られ、ガソリンには2種類のガソリン税と石油税が含まれる。飛鳥時代の税金(租庸調の租)は収穫の約3%であった(税の歴史 | 税の学習コーナー|国税庁)。現在、日本の国民負担率(税+社会保障費)は42.8%(2016年)で、財政赤字分をも含めた潜在的国民負担率は50.6%となっている。所得の半分以上が税として徴収されている事実を殆どの国民は自覚していない。

負担率に関する資料 : 財務省
国民負担率の国際比較(OECD加盟34カ国)【PDF】
各国の「国民負担率」 - 前原誠司【PDF】
国民負担率の内訳の国際比較をさぐる(2020年時点最新版)(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース
世界で一番、税金が高い国

 渡部昇一が財務官僚に訊ねたところ、本当であれば所得税1割を全国民が納めれば国家は回ると答えた。だとすれば、4割の税金はどこに消えているのか? 2020年度の税収63.5兆円から単純計算すれば、25.4兆円のカネが消えていることになる。誰かの懐(ふところ)に入るにしては大きすぎる額だ。

 穀物が国家を作るための道具であったとすれば、穀物が健康を損なう原因になっていることは十分あり得る。本書では初期国家周辺の狩猟採集民が健康においても人生の充実度においても優(まさ)っていたと断じている。

 一貫して恐ろしいことを淡々と綴る筆致に白色人種の残酷な知性が垣間見える。300ページ足らずで4000円を超える価格をつけたみすず書房は更に残酷である。こんなべら棒な値段の本は買わない方がいいだろう。図書館から借りればよい。



税を下げて衰亡した国はない/『税高くして民滅び、国亡ぶ』渡部昇一

2020-10-12

国家と文明の深層史(ディープ・ヒストリー)を探れ/『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット


『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』ジョセフ・ヘンリック
『文化的進化論 人びとの価値観と行動が世界をつくりかえる』ロナルド・イングルハート
『家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか』リチャード・C・フランシス
『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三
『人類史のなかの定住革命』西田正規

 ・定住革命と感染症
 ・群集状態と群集心理
 ・国家と文明の深層史(ディープ・ヒストリー)を探れ
 ・穀物が国家を作る

『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
『文明が不幸をもたらす 病んだ社会の起源』クリストファー・ライアン
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎
『脱税の世界史』大村大次郎
・『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛、渡部昇一
『人類と感染症の歴史 未知なる恐怖を超えて』加藤茂孝
『感染症の世界史』石弘之
『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ
・『近代の呪い』渡辺京二
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二

必読書リスト その四

クロード・レヴィ=ストロースは書いている。

文字は、中央集権化し階層化した国家が自らを再生産するために必要なのだろう。……文字というのは奇妙なものだ。……文字の出現に付随していると思われる唯一の現象は、都市と帝国の形成、つまり相当数の個人の一つの政治組織への統合と、それら個人のカーストや階級への位(くらい)付けである。……文字は、人間に光明をもたらす前に、人間の搾取に便宜を与えたように見える。

【『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット:立木勝〈たちき:まさる〉訳(みすず書房、2019年)】

 秦の始皇帝が行ったのは文字・貨幣・暦・度量衡の統一である。秦(しん)は英語のChinaとシナの語源でもある。シナという呼称については以下のページに記した。

都市革命から枢軸文明が生まれた/『一神教の闇 アニミズムの復権』安田喜憲

 レヴィ=ストロースの絶妙なエピグラフから農耕革命の欺瞞を暴く驚愕の一書である。

 定住と最初の町の登場は、ふつうは灌漑と国家が影響したものだと見られていた。これも今はそうではなく、たいていは湿地の豊穣の産物だということがわかっている。また、定住と耕作がそのまま国家形成につながったと考えられていたが、国家が姿を現したのは、固定された畑での農耕が登場してからずいぶんあとのことだった。さらに、農業は人間の健康、栄養、余暇における大きな前進だという思い込みがあったが、初めはそのほぼ正反対が現実だった。以前は、国家と初期文明はたいてい魅力的な磁石として見られ、その贅沢、文化、機会によって人びとを引きつけたと考えられてきた。実際には、初期の国家はさまざまな形態での束縛によって人口を捕獲し、縛りをつけておかなければならず、しかも群集による伝染病に悩まされていた。初期の国家は脆弱ですぐに崩壊したが、それに続く「暗黒時代」には、実は人間の福祉が向上した跡が見られることが多い。最後に、たいていの場合、国家の外での生活(「野蛮人」としての暮らし)が、少なくとも文明内部の非エリートと比べれば、物質的に安楽で、自由で、健康的だったことを示す強い証拠がある。

 人類のコミュニティが部族から国家へ【進化した】との思い込みがくっきりと浮かび上がってくる。しかも我々はそれが自然の摂理であるかのように錯覚している。テキスト中の「暗黒時代」とは国家不在の時代を意味するのだろう。つまり集団を嫌ったアウトサイダーの方が豊かな生活をしていたというのだ。そこから導かれるのは国家を成り立たせたのは奴隷の存在であることだ。

 そこである感覚が要求してくる――わたしたちが定住し、穀物を栽培し、家畜を育てながら、現在国家と呼んでいる新奇な制度によって支配される「臣民」となった経緯を知るために、深層史(ディープ・ヒストリー)を探れ、と。

 私は元々群れや集団に関心があり、人類のコミュニティがダンバー数の150人から国家に至ったのは必然であり、国家を超えるコミュニティの誕生は難しいと考えてきた。ヒトが動物の頂点に君臨したのは知恵があるためだ。腕力では動物に敵わないが人類は武器とチームワークで動物を打ち負かした。武器は手斧(ちょうな)に始まり、投石、弓矢、火、火薬、刀剣、火砲そして銃(13世紀後半、中国で誕生)へと発展した。第一次世界大戦(1914-18年)では機関銃が使われ、第二次世界大戦(1939-45年)ではミサイル(ドイツのV2ロケットが嚆矢〈こうし〉)と原子爆弾が開発された。あらゆる集団は組織化された暴力(軍隊・警察)に膝を屈する。つまり国家とは人々の暴力を制御するところに生まれるものなのだ。これが私の基本的な考えで「国家とは軍隊なり」と言えるかもしれない。ところが食糧を基軸に考えると全く異なる人類の姿が現れる。

 さらに〈飼い馴らし〉の「最高責任者」であるホモ・サピエンスについてはどうだろう。〈飼い馴らされた〉のはむしろホモ・サピエンスの方ではないだろうか。耕作、植え付け、雑草取り、収穫、脱穀、製粉といったサイクルに縛りつけられているうえ(このすべてがお気に入りの穀物のためだ)、家畜の世話も毎日しなければならない。これは、誰が誰の召使いかという、ほとんど形而上学的な問いかけになる――少なくとも、食べるときまでは。

 安定した食糧生産を支えるのは安定した労働力である。ここで考える必要があるのは狩猟・漁撈(ぎょろう)との比較だ。労働生産性からいえば明らかに農耕の方が分が悪い。労働時間はもとより、天候リスクや戦争リスクを思えば収穫までの期間が種々のリスク要因となる。すなわち農耕の背景には何らかの強制があったのだろう。

〈飼い馴らし〉は、ドムス周辺の動植物の遺伝子構造と形態を変えてしまった。植物と動物と人間が農業定住地に集まることで新しい、非常に人工的な環境が生まれ、そこにダーウィン的な選択圧が働いて、新しい適応が進んだ。新しい作物は、わたしたちがつねに気をつけて保護してやらなければ生きていけない。「でくのぼう」になってしまった。家畜化されたヒツジやヤギについてもほぼ同じことがいえて、どちらも野生種と比べると小柄だし、おとなしい。周囲の環境への意識も低く、性的二形性〔雌雄差〕も小さい。こうした文脈のなかで、わたしは、同様のプロセスがわたしたちにも起こっているのではないかと問いかける。ドムスによって、狭い空間への閉じこめによって、過密状態によって、身体活動や社会組織のパターンの変化によって、わたしたちもまた、〈飼い馴らされて〉きたのではないだろうか。

「ドムス複合体」なるキーワードが提示されるが、domesticate(飼い馴らす)された環境で育てられた家畜や農産物と、定住を開始したヒトが相互に飼い馴らされて生物学的変化を遂げてゆく様相を意味する。切り取られた自然環境の中で新たな進化――あるいは退化――が起こる。

 ではなぜ人類は農耕の道を選んだのか? 国家と文明の深層史(ディープ・ヒストリー)は見たこともない相貌を現す。

2020-10-08

群集状態と群集心理/『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット


『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』ジョセフ・ヘンリック
『文化的進化論 人びとの価値観と行動が世界をつくりかえる』ロナルド・イングルハート
『家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか』リチャード・C・フランシス
『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三
『人類史のなかの定住革命』西田正規

 ・定住革命と感染症
 ・群集状態と群集心理
 ・国家と文明の深層史(ディープ・ヒストリー)を探れ
 ・穀物が国家を作る

『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
『文明が不幸をもたらす 病んだ社会の起源』クリストファー・ライアン
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎
『脱税の世界史』大村大次郎
・『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛、渡部昇一
『人類と感染症の歴史 未知なる恐怖を超えて』加藤茂孝
『感染症の世界史』石弘之
『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ
・『近代の呪い』渡辺京二
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二

必読書リスト その四

 最初の文字ソースからはっきりわかるのは、初期のメソポタミア人が、病気が広がる「伝染」の原理を理解していたことだ。可能な場合には、確認された最初の患者を隔離し、専用の地区に閉じこめて、誰も出入りさせないというステップを踏んでいる。長距離の旅をする者、交易商人、兵士などが病気を運びやすいことも理解していた。分離して接触を避けるというこの習慣は、ルネサンス時代に各地の港に設置されたラザレット〔ペスト患者の隔離施設〕を予見させるものだった。伝染を理解していたことは、罹患者を避けるだけでなく、その人の使ったカップや皿、衣服、寝具なども回避したことからも示唆される。遠征から還ってきて病気が疑われる兵士は、市内に入る前に衣服と盾を焼き捨てるよう義務づけられた。分離や隔離でうまくいかなければ、人びとは瀕死の者や死亡者を置き去りにして、都市から逃げ出した。もし還ってくるとしたら、病気の流行が過ぎてから十分に期間をおいてからだった。またそうするなかで、逆に病気を辺境へと持って行ってしまうことも多かったに違いない。そのときには、また新たな隔離と逃避が行われたのだろう。わたしは、初期の、記録のない時期に人口密集地が放棄されたうちの相当多くは、政治ではなく病気が理由だったと考えてまず間違いないと思う。

【『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット:立木勝〈たちき:まさる〉訳(みすず書房、2019年)】

 やはりコロナ禍であればこそ感染症に関する記述が目を引く。「初期のメソポタミア人」とは紀元前3000年とか4000年の昔だろう(メソポタミア文明)。恐るべき類推能力といってよい。脳の特徴はアナロジー(類推、類比)とアナログ(連続量)にあるのだろう。

 ここでの目的のために、この群集と病気の論理を適用するのはホモ・サピエンスだけにしておくが、今の例のように、この論理は、病気傾向のあるあらゆる生命体、植物、あるいは動物の群集に容易に適用できる。これは群集に伴う現象だから、鳥やヒツジの群れ、魚の集団、トナカイやガゼルの群れ、さらには穀物の畑にも同じように適用できる。遺伝子が類似しているほど(=多様性が少ないほど)、すべての個体が同じ病原菌に対して脆弱になりやすい。人間が広範に異動するようになるまでは、おそらく渡り鳥が――1カ所にかたまった営巣することや群集して長距離を移動することから――遠くまで疾患を広める主要な媒介生物だっただろう。感染と群集との関係は、実際の媒介生物による伝播が理解されるずっと前から知られていて、利用されてきた。狩猟採集民はそのことを十分にわかっていたから、大きな定住地には近寄らなかったし、各地に離れて暮らすのも、伝染病との接触を避ける方法だと見られていた。

 渡り鳥から他の動物に感染する規模は限られる。ましてその動物と人間が接触する可能性は更に限られる。人間にとって低リスクということはウイルスや微生物にとっては高リスクとなる。奴らが生き延びる可能性は乏しい。

 もう一つ別のシナリオを考えてみよう。寄生生物は宿主(しゅくしゅ)を操る(『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』キャスリン・マコーリフ)。ひょっとすると寄生生物の操作によって人類は都市化をした可能性もある。リチャード・ドーキンスは「生物は遺伝子によって利用される乗り物に過ぎない」と主張した(『利己的な遺伝子』1976年)が、「寄生生物によって利用される乗り物」ということもあり得るのだ。

 定住とそれによって可能となった群集状態は、どれほど大きく評価してもしすぎにはならない。なにしろ、ホモ・サピエンスに特異的に適応した微生物による感染症は、ほぼすべてがこの1万年の間に――しかも、おそらくその多くは過去5000年のうちに――出現しているのだ。これは強い意味での「文明効果」だった。これら、天然痘、おたふく風邪、麻疹、インフルエンザ、水痘、そしておそらくマラリアなど、歴史的に新しいこうした疾患は、都市化が始まったから、そしてこれから見るように、農業が始まったからこそ生じたものだ。ごく最近まで、こうした疾患は人間の死亡原因の大部分を占めていた。定住前の人びとには人間固有の寄生虫や病気がなかったというのではない。しかし、その時期の病気は群集疾患ではなく、腸チフス、アメーバ赤痢、疱疹、トラコーマ、ハンセン病、住血吸虫症、フィラリア症など、潜伏期間が長いことや、人間以外の生物が保有宿主であることが特徴だった。
 群集疾患は密度依存性疾患ともよばれ、現代の公衆衛生用語では急性市中感染症という。

 つまり感染症は人類の業病ではなく都市化による禍(わざわい)なのだ。移動しない群れで私が思いつくのは蟻(あり)くらいなものだ。定住・農耕革命は人類を蟻化する営みなのかもしれない。

 いずれにせよ国家システムが進化の理に適っているのであれば人類は感染症と共生できるだろう。そうでなければ感染症によって死に絶えるか、あるいは国家以外のシステムを築いて生き延びるしかない。

 群集状態には感染症リスクが伴うが、群集心理には付和雷同・価値観の画一化・教育やメディアを通した洗脳などの問題があり、こちらの方が私は恐ろしい。

定住革命と感染症/『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット


『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』ジョセフ・ヘンリック
『文化的進化論 人びとの価値観と行動が世界をつくりかえる』ロナルド・イングルハート
『家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか』リチャード・C・フランシス
『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三
『人類史のなかの定住革命』西田正規

 ・定住革命と感染症
 ・群集状態と群集心理
 ・国家と文明の深層史(ディープ・ヒストリー)を探れ
 ・穀物が国家を作る

『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
『文明が不幸をもたらす 病んだ社会の起源』クリストファー・ライアン
『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎
『脱税の世界史』大村大次郎
・『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛、渡部昇一
『人類と感染症の歴史 未知なる恐怖を超えて』加藤茂孝
『感染症の世界史』石弘之
『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ
・『近代の呪い』渡辺京二
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二

必読書リスト その四

 紀元前1万年の世界人口は、ある慎重な推定で約400万だった。それから丸5000年が過ぎた紀元前5000年でも、わずかに増えて500万人だった。新石器革命の文明的達成である定住と農業が行われていたとはいえ、これでは人口爆発とはとてもいえない。ところが対照的に、その後の5000年で世界人口は20倍の1億人超にまでなっている。このように、新石器時代への移行期である5000年間は人口統計学上のボトルネックのようなもので、繁殖レベルはほぼ横ばいだったことを示している。人口増加率が人口置換水準をわずかに(たとえば0.015パーセント)上回るだけでも、総人口はこの5000年で2倍以上になっていたはずだ。人類の生業技術は進歩したように見えるのに、長期間にわたって人口が停滞してしまったこのパラドックスの有力な説明は、疫学的に見てこの時期が、おそらく人類史上で最も致死率の高い時期だったということだ。メソポタミアの場合でいえば、まさしく新石器革命の効果によって、この地域に慢性、急性の感染症が集中し、人口に繰り返し壊滅的な打撃を与えたのである。
 ただし、考古学的記録の証拠はほとんど役に立たない。こうした病気は栄養不良と違って、その痕跡が骨に残ることはまずないからだ。思うに伝染病は、新石器時代の考古学記録で「最も声の大きい」沈黙だ。考古学が評価するのは掘出しものだけだから、この場合は、たしかな証拠を越えた部分まで推測するしかない。それでも、最初期の人口センターの多くが突如として崩壊した理由を壊滅的な伝染病だったと考えるだけの証拠は十分にある。それまで人口の多かった場所が突然、ほかに説明のつかない理由で放棄された証拠が繰り返し見つかっている。気候の悪化や土壌の塩類化によっても人口は減少すると予測されるが、そうしたことは地域全体で起こるだろうし、もっとゆっくり進むだろう。もちろんこれ以外にも、人口の多い場所が急にもぬけの殻になったり消えたりしてしまったりしたことの説明は可能だ。内戦、征服、洪水などがそうなのだが、伝染病は、新石器革命のまったく新しい群集状態によって初めて可能になったものだ。その甚大な影響は、文字記録が利用可能になって以後の時代の記述を見ても明らかだから、やはり最も有力な容疑者だろう。また、この文脈での伝染病は、ホモ・サピエンスのものだけにとどまらない。伝染病は、同じように後期新石器時代復習種再定住キャンプに閉じ込められていた家畜動物や作物にも影響した。なにかの疾患で家畜の群れや穀物畑が全滅してしまったら、疫病で人間が直接脅かされたときと同じくらいかんたんに、人口は激減しただろう。

【『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット:立木勝〈たちき:まさる〉訳(みすず書房、2019年)】

 人類がアフリカから発祥したとすれば最も遠くまで移動したホモ・サピエンスはインディアンで、次が日本人となる。インディアンはたぶんアイヌ同様、縄文人の末裔(まつえい)だろう。アメリカへ渡ったインディアンはウイルスに晒(さら)されることが少なかった。そのためヨーロッパ人が持ち込んだ感染症によって千万単位の死亡者を出した。

 紀元前1万~5000年は日本だと縄文時代(紀元前16000~3000年)である。世界最古の土器は青森県大平山元(おおだいらやまもと)遺跡から出土したもので約1万6500年前に作られた無文土器である(No.1078 なぜ世界最古の土器が日本列島から出土するのか?: 国際派日本人養成講座)。因(ちな)みに日本列島が大陸から分離したのが2000年前である(日本海がどうしてできたか知っていますか?(海洋研究開発機構) | ブルーバックス | 講談社)。

 農耕革命・定住革命・食料生産革命を併せて新石器革命という。ここで注意を要するのは我々の思考が革命=進歩という社会主義的観念に毒されていることだ。本書は国家というメカニズムに異を唱え、人類が穀物栽培を選んだのは徴税しやすいためだったと指摘している。

 感染症は過密な人口に対する地球からの警鐘なのだろう。



累進課税の起源は古代ギリシアに/『ソクラテスはネットの「無料」に抗議する』ルディー和子
栄養と犯罪は大きく深く関わっている/『食事で治す心の病 心・脳・栄養――新しい医学の潮流』大沢博
炭水化物抜きダイエットをすると死亡率が高まる/『宇宙生物学で読み解く「人体」の不思議』吉田たかよし

2019-11-11

明治の人力車は1日に110km走った/『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫


『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯
・『日本の生き筋 家族大切主義が日本を救う』北野幸伯
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平

 ・明治の人力車は1日に110km走った

・『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三
『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
・『タネが危ない』野口勲
『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン

 文明開化と第二次世界大戦の二回の食生活革命によって、日本人が築きあげてきた伝統的な食生活の体系は破壊されてしまいました。(中略)
 特に第二次世界大戦後の、「栄養改善運動」といわれる食生活革命は、高度経済成長も手伝って、日本の食生活を否定することによって進められました。世界には多くの民族がいますが、わずか数十年の間にこれほど食生活が変化した民族はありません。

【『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫(東洋経済新報社、2000年/不知火書房新版、2011年)】

 玄米食を調べていた頃に読んだ一冊。島田は食べやすい分搗(ぶづ)き米を勧めている。牛乳が健康に悪いのも本書で確信することができた。

 数十冊の本を読んでから、「結わえる 寝かせ玄米」やローソンストア100のレトルト玄米を食べたのだが、さほど効果は感じなかった。で、米糠が体にいいのであれば米糠を食べればいいとの結論に落ち着き、煎り糠をご飯にかけて食べた。便も吟味したがやはり変化はなかった。現在は胚芽押麦を米と1:1の割合で炊いている。


 栄養素信仰とは戦後の栄養学がカロリー計算や食品成分に固執してきた(1日30品目など)ことへの批判的な眼差しを示したもの。そもそも栄養学がやってきたことを振り返れば、学問に値するかどうかも甚だ疑わしい。科学から最も遠くに位置するのは間違いない。続くのは心理学、医学か。


【人類に近づくにつれて食物の植物化が進みます(本文より)】

 ゴリラはあの筋肉を菜食で維持している。肉食が脳の肥大化を促進したという説もあるが、それだと類人猿以前の進化が説明できない。イデオロギーとしての菜食主義は噴飯物だが魚と鶏卵でタンパク質は賄(まかな)えるように思う。

 1876(明治9)年に来日し、1905年までのおよそ30年間を日本に滞在し、東京医学校(現在の東京大学医学部)で医学教育にあたったベルツは、東京から日光まで行ったときのエピソードを記録しています。現在では考えにくいことですが、一度目は馬で行きました。そのときは途中で馬を6回取り替えて14時間かかったそうです。そして二度目は人力車に乗っていったところ、その車夫は一人で14時間半で行ってしまったそうです。馬よりもすごいということで、彼は実験をはじめました。人力車夫を二人雇って、食事を調べながら、毎日体重80キロの人を乗せて、40キロの道を走らせたということです。
 ベルツは日本に栄養学を紹介した人でもありますが、彼らの食事が栄養学の知識からあまりにもかけ離れていたので、自分の栄養知識にしたがって肉などを買い与えました。その結果、人力車夫は3日で疲労が激しく走れなくなり、元の食事に戻してほしいと申し出たそうです。そこで食事を彼らの普段のものに戻したところ、また元気になって走れるようになったという結果でした。ベルツは日本の食事の持つ力に感心し、そのことも書いています。当時の人力車夫が1日に50キロの道を走るのは当たり前だと、ほかにも多くの外国人が書き残しています。

 出典を調べようと検索したところ批判的な指摘が多くて驚いた。

考察ミスだった「ベルツの人力車実験」 - タミアのおもしろ日記
ベルツの実験についてメモ(あれは肉食否定の話か?) 2013/7/10 : ひねもすやのたりすけ

 ベルツの情報については次のページが参考になった。

「穀物+大豆+野菜+(魚)」という日本食の威力
ドイツ人医師・ベルツが実証した穀物菜食者の優秀性

 島田の別本によれば日光までは110kmの距離らしい。この際、米とか肉とかはどうでもいい。日本人の驚くべき体力に注目すべきである。ベルツが考察ミスをしたことは驚くに値しない。医師とは考察ミスの異名なのだから。私はピロリ菌以前の十二指腸潰瘍治療を行っているので骨身にしみてわかる。しかも医学界はピロリ菌を発見したオーストラリア人医師の功績を長らく無視し続けた。こうした医学界の頑迷固陋な状況は分子生物学によって破られつつある。

 私が興味を掻き立てられるのは昔の日本人の体の使い方である。武道家が解明しつつあるがそれは筋肉よりも骨の使い方に工夫があったのだろう。今でも「彼は骨のある人物だ」と表現することからもわかるように姿勢を支えるのは骨である。筋肉ではない。

2019-11-09

給食革命/『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平


『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯
・『日本の生き筋 家族大切主義が日本を救う』北野幸伯

 ・給食革命

『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三
『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム
『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
『タネが危ない』野口勲
『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか
『心と体を強くする! メガビタミン健康法』藤川徳美
『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』溝口徹
『食事で治す心の病 心・脳・栄養――新しい医学の潮流』大沢博
『オーソモレキュラー医学入門』エイブラハム・ホッファー、アンドリュー・W・ソウル
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン

 子どもたちの、こんな現状(※朝食抜き、コンビニ弁当、レトルト食品、菓子パンなどが中心の食生活)が分かってきました。(中略)
「家庭で難しいなら、学校で食を変えるしかない」と、私は一大決心せざるをえなくなりました。家庭で食べないものを、学校で食べさせるしかありません。ともかく子どもたちのためには、食を変えなければならないのです。

【『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平(コスモトゥーワン、2012年)以下同】

 北野本で知った一冊。印象が深かったようで近著でも取り上げられている。安部司著『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物』(本書では「阿部司」と誤表記)を引用しているあたりが危ういが(松永和紀〈まつなが・わき〉著『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』で論破されている)感動的な手記である。大塚貢は長野県の中学校で校長を務めた人物。

 校内の廊下がオートバイのブレーキ痕だらけで、教員が1時間も広い続けると煙草の吸い殻がバケツ一つ集まったというのだから、相当荒れた中学である。大塚はまず授業改革から手をつけた。あまりにも魅力に乏しい授業がまかり通っていた。次に子供たちの食生活を調べた。そしてここから給食革命を起こすのである。

 それで私は、1週間の5食すべてを米飯に切り替えることを決断しました。

 すると少しずつ、やがてはっきりと、子どもたちに変化が見えてきたのです。
 まずは「読書の習慣」です。荒れているときには、子どもはとうてい本を読む気になりません。ところが給食内容を変えてしばらくしたころ、休み時間になると、子どもたちがみな図書室に行って本を読むようになりました。
 給食が済むと、争うようにして本を読んでいます。図書室に120ある椅子が、瞬く間に生徒で一杯になりました。
 椅子が満席になると、床に腰を下ろして読んでいます。床が一杯になれば、廊下に出ても読んでいます。これは、なかなか感動的な光景でした。食の改善による影響が大きかったと思います。(中略)
 ところで1951年に始まった読売新聞社の「全国小・中学校作文コンクール」をご存じの方も多いでしょう。米飯給食に変えてから起きたもう1つの変化は、生徒がこのコンクールに参加して、特に指導もしないのに、毎年のように全国で1位か2位に入選するようになったことです。
 子どもたちの文章力がしっかり向上していました。1位、2位に入選した子どもの作文は高度で、大人の私が読んでも筋がじつに複雑でした。

 何気ない文章で驚くべき事実が記されている。にわかには信じ難いという人も多いことだろう。だが噛む力が脳を活性化させ、栄養分が体に行き届けば情報に対する感度が上がることは何となく理解できよう。食は人を変える。なぜならマイクロバイオータ(微生物叢)が生まれ変わるためだ。

 大塚は詳しいことは書いていないが、給食革命は生易しい仕事ではなかったことだろう。父兄からも反対され、中には教育委員会に密告する人もいたようだ。そして荒れた生徒たちが大人しく従うはずもない。しかし校長の子供を思う一念が岩をも貫いた。その後花壇作りも推進し、学校全体が生まれ変わってゆくのである。

 本書はパンや出来合いの食品に批判的な姿勢を堅持しているため、製パン企業や食品メーカーの広告を掲載する新聞やメディアからは無視されたことと推察する。既に品切れとなっているが再販も難しいように思う(Kindle版はある)。それでも心ある教育者は本書を入手し、給食をパンから米に変える努力を惜しむべきではない。もともと給食でパンが提供されるようになったのはGHQがアメリカの余剰小麦を無償提供したことから始まる。アメリカは余剰農産物に困り果てていた。敗戦後の日本はこれを断るはずがない。そして数年後、無償提供を打ち切りまんまと日本政府にアメリカ産の小麦を買わせるようになった。アングロサクソンの手口はことごとくこのようなものだ(『アメリカ小麦戦略 日本侵攻』高嶋光雪、1979年/『「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活』鈴木猛夫、2003年)。

 食料安全保障の視点からも米の消費を増やすことは喫緊の課題である。給食すべてを米飯にすれば相当改善できることだろう。



2019-11-02

本物の野菜は腐らずに枯れる/『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか


『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯
・『日本の生き筋 家族大切主義が日本を救う』北野幸伯
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
・『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三
『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
『タネが危ない』野口勲

 ・無肥料栽培
 ・本物の野菜は腐らずに枯れる

『食は土にあり 永田農法の原点』永田照喜治
『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』ゲイブ・ブラウン
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン

 野菜であっても、自分の役割を終え、次の世代に命をリレーするのであれば、自らが持っている栄養素である窒素やミネラルを水分とともに排出し、【枯れて】いくはずです。枯れてしまえば、植物は腐敗することはありません。野菜ももちろん同じです。腐敗せず、枯れていくのが自然界の掟なのです。
 しかし、なぜか野菜だけはキッチンで腐敗していく姿をよく見ます。これは大変不自然なことです。空気中にある真菌が野菜に付着し、黴が増え、腐敗臭を発しながら朽ちていくのは、実は不自然なのです。腐敗する原因はいったい何なのか。僕もこのことを色々と考えてきました。これに関しては、これぞ正解という答えはなかなか存在しません。でも、そのなかでもいくつか推測できることはあります。
 ひとつは水分量でしょう。水分量が多すぎると野菜は腐敗してしまいます。生ゴミが腐敗するのも水が原因です。水や湿気が真菌を増殖させるからです。ではなぜ水分量が多いのか。それはおそらく、化学肥料を吸収する時に、水分を一緒に吸収しているからではないかと想像しています。本来ならば、菌根菌が土壌中の必須(ひっす)元素を植物へと橋渡しするのですが、水に溶けた化学肥料は、水とともに植物のなかに侵入し、自由水を増やしてしまうのです。簡単に言えば水膨れです。それが腐敗への引き金になります。
 他にも、微生物バランスの狂いがあるのではないかと想像しています。特に未発行の家畜排せつ物を使用した肥料の場合、そのなかに棲む微生物は、決して自然界の森や林のなかの微生物バランスとは同じではありません。未発酵有機物や、化学薬品等を分解しようと、自然界ではあまり増えることのない微生物が増えている可能性があります。そうしたバランスの崩れた微生物群によって、想定外の腐敗へと進んでいきます。本来なら動物の排せつ物を朽ちらせ、分解する強い菌が、植物とうい緩(ゆる)やかな分解を好む有機物に取り付いて、通常の分解とは違った、腐敗という方向へと進んでいくのであろうと思います。

【『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか(フォレスト出版、2016年)】

 巻頭にカラー写真が配されている。その衝撃が本書を読む推進力となる。私は半世紀以上生きてきたが「枯れた野菜」を見たことがない。「実(み)は腐るもの」と思い込んでいた。この世界は腐敗と防腐剤の二色だけではなかった。ふと木乃伊(みいら)を思った。死を前にして食が細くなってゆくのも自然の摂理にかなっているのだろう。



 防腐剤は微生物を拒む文化といえよう。我々の味覚は既に腐敗を感知し得なくなっている可能性すらある。「鼻が利く」との言い回しはあっても実際は最も退化した感覚が嗅覚なのだ。感度の低い味蕾(みらい)が防腐剤や食品添加物を浴びてどんどん鈍くなってゆく。それどころか食品会社によって合成された味の刺激を好み、自然本来の味では物足りなさを覚えるようになってきた。

 私が子供の時分はまだ栗やクルミを取って食べていた。幼馴染の家にサクランボの大木があり、皆で登って枝に腰を掛けながら舌鼓を打った。上京してからは職人に食べさせてもらった銀杏(ぎんなん)やイチジクの味が忘れられない。イチョウの樹は工場の前にあり、イチジクは近隣のパチンコ店の駐車場からもぎ取ってきたものだった。

 腐敗を止める文明は正しいのだろうか? 老いて枯れるような生き方をすることが可能だろうか? そんなことを思わされる読書体験であった。



野菜の栄養素が激減している/『その調理、9割の栄養捨ててます!』東京慈恵会医科大学附属病院栄養部監修

2019-10-31

無肥料栽培/『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか


『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯
・『日本の生き筋 家族大切主義が日本を救う』北野幸伯
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
・『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三
『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
『タネが危ない』野口勲

 ・無肥料栽培
 ・本物の野菜は腐らずに枯れる

『食は土にあり 永田農法の原点』永田照喜治
『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』ゲイブ・ブラウン
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン

 僕は農作物を栽培することを生業のひとつとしています。僕の農法は、一般的には認知されていない無肥料栽培というものです。一見聞き慣れない無肥料栽培という言葉ですが、最近で言うところの自然農法とか自然栽培と呼ばれる農法が、無肥料栽培にあたります。無肥料栽培という言葉だけですと、化学肥料を使用せず、家畜排せつ物から製造した有機肥料を使用していると思われる方もいるようですが、僕は有機肥料を使用することもありません。
 自然農法や自然栽培という農法には、本来、定義というものはありませんが、広義では、無肥料、無農薬、無除草の栽培方法を指します。さらに不耕起、つまり畑を耕さない農法を自然農法と呼ぶことが多いと思います。

【『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか(フォレスト出版、2016年)】

 タイトルが命令形で、冒頭から「僕が、僕が」と書いてあるのを見ると「我こそは正義なり」との思い込みが見えてウンザリさせられる。つまみ食い程度の読書で済まそうと思いながらも最後まで読んでしまった。読ませられたと言ってよい。無農薬は聞いたことがあるが無肥料・無除草は初耳だ。

 普通に考えれば、野菜や穀物に肥料を与えることによって、作物は元気に育ち、健康にもなるという認識だと思います。人間も食事によって栄養をしっかり摂っていれば、病気になることは少ないでしょう。それは決して間違ってはいません。
 しかし、僕は無肥料栽培を始めて以来、その常識に疑問を感じはじめました。
 なぜかといえば、作物に肥料を与えるのを止めると、作物の病気や虫食いがどんどん減っていったからです。

 よく考えると別に不思議な話ではない。そもそも現在ある野菜は長い歴史を生き抜いてきた果てに存在するわけで、自然界に存在していた時は肥料や除草という人為は加えられていない。また移動できない植物は毒を発することで外敵から身を守ってきたのだ。調理の灰汁(あく)抜きとはその毒を除去する意味がある。

 土のなかの微生物は生き物ですから、当然食べものが必要です。それが、本来、草の根っこや枯れた草等です。作物の根っこ以外、草という草の根っこや落ち葉や枯草がなくなるので、微生物たちの餌(えさ)が足りなくなります。食べもののないところに生物が棲(す)むことはありません。そのため、微生物たちも立ち去っていってしまうのです。(中略)
 土壌中の微生物というのは、人間の腸内細菌と同じだと考えてもらっていいでしょう。土壌から微生物がいなくなると、植物は土の栄養を使えなくなります。なぜなら、植物は土壌中の微生物、特に菌根菌(きんこんきん)という菌の力を借りて、土壌中の栄養を取り込んでいるからです。

 つまり現代の野菜は狭い鶏舎に閉じ込められたブロイラーのような状態なのだろう。たとえ有機肥料であったとしても土壌中の微生物バランスは大きく変わってしまうという。

 人体もまた微生物との共生で成り立っている。腸管内だけで4000種、100兆個もの微生物が存在する。この腸内細菌なくして我々は生きてゆくことができない。

 土壌から微生物がいなくなってヒトの腸内環境も一変したのだろう。そして便利なテクノロジーが生活習慣病を生んだ。既に我々は本物の野菜を知らないのだ。

 具体的な土作りも書かれており、家庭菜園やプランターで野菜を育てている人は必読である。

2019-08-18

歯の構造に適した食べ物/『好きなものを食っても呑んでも一生太らず健康でいられる寝かせ玄米生活』荻野芳隆


 ・歯の構造に適した食べ物

『がん患者は玄米を食べなさい 科学が証明した「アポトーシス&免疫活性」のすごい力』伊藤悦男
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
・『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三

 なぜ米6:野菜3:肉(魚・卵)1が「きれいに代謝される」黄金比かというと、それは私たちの体が教えてくれます。
 まず歯の構造に注目してみましょう。みなさんは自分の歯が何本で、何種類あって、それぞれどんな働きを持つか分かりますか?
 歯はその動物が食べるべきものを食べやすい構造に設計されています。
 肉食動物は獲物を殺し、肉を引きちぎるために犬歯という尖った歯を持ち、草食動物は草や穀物を噛み切るために前歯の門歯があり、すりつぶすためにほとんどが臼歯を持ちます。
 では人間はどうでしょうか?
 人間は肉も草も穀物も食べる雑食ですが、その割合は【穀物をすりつぶす臼歯が62.5%、植物を噛み切る門歯が25%、肉を噛みちぎる犬歯が12.5%。】
 つまり、このバランスで食べるべきだというのが、長い歴史の中ででき上がった自然界のルールなのです。

【『好きなものを食っても呑んでも一生太らず健康でいられる寝かせ玄米生活』荻野芳隆〈おぎの・よしたか〉(マイナビ、2013年)】

 50歳を過ぎて健康オタクになることを決意した。私は果断に富む男だ。何でも決断が早い。で、何から手をつけようかと思案していた時に玄米を思いついた。早速調べた。そして「結わえる 寝かせ玄米 レトルトパック」を見つけた。


 私が購入した時は一食あたり250円くらいだと記憶するが今は300円を超えている。確かに美味かった。しかし体調の変化は全く感じられなかった。その後、別会社の商品も試したが「別にどうってことはねーな」という感想に落ち着いた。

 自分で炊いた方が手っ取り早いし、安上がりだろうと考えた。玄米ご飯は玄米を発芽させる手間がかかる。理想を言えばガス釜でご飯を炊いて、更に保温する必要があった。面倒だ。しかも玄米そのものが白米よりも値段が高い。玄米だけ食べて生きてゆけるのであればやってみる価値はあるが、料理もまともにできない中年男がそこまで打ち込むのは疑問だった。

 念には念を入れて更に調べた。マクロビオティックという宗教じみた食事法も知った。玄米食が癌に効果があることもわかった。そして玄米のデメリットも。

 ざっと紹介しよう。

 玄米には胚芽の部分にミネラルがたくさん含んでいるのに何故ミネラル不足になるのか?という質問をよく受けます。それは玄米の胚芽や表皮にフィチン酸という強力な排泄作用を持つ物質が多くあり、毒素を出して病気を治していく作用がありますが同時にミネラルも出していくのです。体内毒素とミネラルは別々の所に存在しているのではなく、毒素とミネラルはいっしょに存在しているのです。玄米食で体内毒素を出す時にミネラルも出ていくのです。

玄米食はなぜミネラル不足になるのか|間違いだらけの健康常識

玄米や灰汁(アク)の害について|間違いだらけの健康常識
野菜や果物、肉、魚介類はアクを抜かないと短命になる|間違いだらけの健康常識

そろそろ玄米が「健康食」か「不健康食」かに決着をつけようと思う
5年以上再発なしのガン患者が明かす!玄米食のデメリットとは?

 私は決断するのも早いが断念するのも早い。植物が昆虫などの外敵から身を守るために毒を発することは知っていた。その毒を以て体内の毒を制するのが薬草だ。薬とは毒の異名なのだ。

 荻野芳隆は株式会社結わえるの経営者である。本書も当然ながらマーケティングの一貫として受け止めるべきだろう。「穀物をすりつぶす臼歯」というのは間違いだ。島泰三著『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』によれば、古代の人類は骨を食べていたと考えられる。

 玄米が健康によいのであればご飯に煎り糠(ぬか)を振りかければ同じだろう。実際に私はやってみたが、やはり効果は感じられなかった。

2019-06-02

アルツハイマーは文明病/『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス


『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』佐藤眞一

 ・アルツハイマーは文明病
 ・おばあさん仮説

『アルツハイマー病 真実と終焉 “認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム』デール・ブレデセン
『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『一流の頭脳』アンダース・ハンセン
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン
『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』キャスリン・マコーリフ
『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二

身体革命
必読書リスト その二

 同じくアルツハイマー病に関して、予防も不可能と断言するのはアメリカの独立系専門家委員会だ。2015年末、ドイツを代表する日刊紙『南ドイツ新聞』が掲載したのは、アメリカのアルツハイマー病専門家で、ハーバード大学の神経学教授、デニス・セルコーの悲観的なコメントだ。教授によると、この病気にならないための唯一の方法は、「よい両親を選び、長く生きないこと」だった。

【『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス:鳥取絹子〈とっとり・きぬこ〉訳(筑摩書房、2018年)以下同】

 医師と裁判官はよく似ている。過去の例に基づいて現在を判断するところが。医師の仕事は過去の症例に合わせて薬を処方することだ。本当にその薬が有効かどうかを彼らが考えることはない。医学的に認められたパターンを踏襲するだけの気楽な仕事だ。そして医師にとって「治らない病気」は多ければ多いほどよい。長く薬を処方することができるためだ。実際に臨床を実践する医師は1割も存在しないだろう。

 アルツハイマー病とはどういう病気なのだろう? 最初に目に入る情報では、神経が変性する不治の病気となっている。不治とされるのは、研究の枠内で行われた何百件という臨床研究で、病気を治す薬も、進行を抑える薬も発見されていないからである。それなのに、先進国では認知症の形としてはもっとも多く、死因では心血管病、ガンに次いで第3位になっている。したがって、高齢になってもアルツハイマー病を発症するのは宿命で、運命として諦めるしかほかに方法がないように見える。こういう状況では、私たちのほとんどんが年を取るのが怖いと思っても仕方がない。なぜなら私たちは記憶や理性、ときに尊厳まで喪失するこの病気を、老化と結びつけているからである。
 本書の目的は、まさにこの恐怖と決別することである。【アルツハイマー病は年齢による病気でも、運命として避けられない病気でもなく、私たちにとってもっとも必要で重要なものが欠乏することで生じる病気である】。普段の生活様式に起因するので、行動を変える処置をいくつかすることで予防も可能だ。欠乏しているものがあれば、手遅れになる前に――つまり、後戻りできないポイントとされる中間段階の前に――対策を講じれば、アルツハイマーの進行を止めることもできる。さらにはもっと初期に対処すれば、プロセスを逆戻りさせ、治すことさえ可能なのである。

 認知症の中で最も多いのがアルツハイマー病である。レビー小体型認知症同様、発見者の名前を病名にするのは大いに疑問である。認知症という言葉も日本語としておかしい。認知障害・認知機能疾患とするべきだろう。

 有吉佐和子が『恍惚の人』を世に問うたのが1972年(昭和47年)のこと。その後は長く「痴呆症」と言われた。「呆(ぼ)ける」という言葉は今でも多くの人が使っていることだろう。認知障害は「自分が自分でなくなる病気」である。我が子に向かって「どちら様ですか?」と尋ねる母親の映像を見た時の衝撃は忘れることができない。自分という名の小説のページが次々と欠落して物語性を失ってゆくのだ。「呆けるくらいなら死んだ方がましだ」という声も耳にするが、自分が自分でなくなることは形を変えた死を意味しているのだろう。

 ミヒャエル・ネールスが明かしたのは驚くべき事実である。アルツハイマー病は生活習慣病だというのだ。具体的には食生活と運動不足が原因だと指摘する。特に「坐る時間の長さ」が体を静かに蝕んでいる。

 2014年に発表された、カリフォルニア大学ロサンジェルス校のアルツハイマー病治療計画の研究は、小規模ながらこの病気の治療に新しい道を開いた。

 研究チームを率いたのはUCLAのメリー・サウス・イーストン・アルツハイマー病リサーチセンターの神経学教授、デール・ブレデセンである。

 なぜ、これほどまでに希望をもたらすニュースが、世界の新聞のいち面に出ないのだろう? なぜテレビやラジオ、ネットのSNSで話題にならないのだろう?
 答えはいたって簡単。奇跡の薬のおかげで治ったわけではないからである。新薬が発見されたわけでも、有効成分を商品化できたわけでもないからだ。逆にこの結果はむしろ、市場経済に合わせた私たちの行動を問題視することになるからだ。なぜなら、この治療の成功によって、【この恐ろしい病気の本当の原因は年齢でも、遺伝子でもなく、私たちの生活様式にあることがわかった】からである。アルツハイマーは、私たちが肉体的、精神的に必要とする多くのものを考慮しなかったことで生じる病気である。なぜか? 私たちの生活様式がそうさせているからだ。したがって、これら必要なものを満たすには、私たちの行動を変えるだけで十分というこになるだろう。

 どうやら精神疾患を取り巻く状況(エリオット・S・ヴァレンスタイン)と酷似しているようだ。薬以外で治されれば医師と製薬会社はお手上げだ。彼らは文明病を必要としている。

 病は人類にとって永遠の課題である。生老病死は避けようがない。そして病はサインでもある。病と向き合うことで健康を見つめ直すことができ、死をも見据えることが可能となる。癌が慈悲深いのは死を迎える準備期間を告知してくれるためだ。

 文明の進歩はヒトの体を退化させた。たとえ我々が健康に生きたとしても病気がなくなることはあり得ない。しかし健康であれば病気を通してヒトが進化するようになるのではないか。

 本書を理解するためにも前回散々腐した佐藤眞一は読んでおいた方がよい。



何はさておき歩いてみよう/『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏

2019-05-18

栄養学の無責任を嗤(わら)う/『「食べもの神話」の落とし穴 巷にはびこるフードファディズム』高橋久仁子


・『「食べもの情報」ウソ・ホント 氾濫する情報を正しく読み取る』高橋久仁子

 ・栄養学の無責任を嗤(わら)う

『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム

 食べものが健康や病気に与える影響を誇大に評価したり信奉することを「フードファディズム:Food faddism」といいます。もちろん、食と健康は深く関連しますが、それを過大評価することです。ただし、どこまでは適正で、どれ以上が過大なのかを判断することもむずかしいですし、過小評価もまた問題です。(中略)
 この言葉は私の造語ではありません。れっきとした英語です。

【『「食べもの神話」の落とし穴 巷にはびこるフードファディズム』高橋久仁子〈たかはし・くにこ〉(ブルーバックス、2003年)】

 悪い本ではない。狙いはいいのだがバイアス(認知科学)や行動経済学、はたまた心理学的アプローチを駆使する企業広告や宗教に関する知識が乏しい。

 この手の本を読むたびに思うのは、「散々デタラメを広めてきた栄養学の無反省ぶり」である。戦後はキッチンカーで油炒めを推奨し、肉・卵・牛乳の摂取を推し進め、1日30品目という馬鹿げた数を示して国民の食生活を混乱させてきた。その栄養学が今になってフードファディズムを語っているのである。

 高橋の文章はどっちつかずで腰が据(す)わっていない。ファディズムとは「流行へののめり込み」(Wikipedia)を意味する。その最大の原因は栄養学がきちんとした情報提供を怠ったことにあるといってよい。しかも高橋は居丈高にエビデンス(検証結果)を口にするが、食品メーカーの巨大さを思えば科学が厳密に食品を調べることはまずない。

 簡単な例を示そう。骨粗鬆症の原因は牛乳を始めとする乳製品摂取によるカルシウム・パラドックスである。骨粗鬆症は戦後になってから目立つようになった病気であり、牛乳を飲むようになったのもまた戦後のことである。

悪いとされる食品・調味料・食品添加物」を見てみよう。私が避けているものが列挙されている。例外はうま味調味料くらいだ。「実際に科学的な根拠に基づいたリスクがあるかどうかとは無関係である」とご丁寧に書いてあるが、重要なことは「健康によい」という科学的根拠も示されていない点である。このリストを見る限りでは、むしろフードファディズムに軍配を上げてもいいだろう(笑)。

 五十の坂を越えると体力は衰え病気がちになり食に対する意識が高まる。我々は無知を自覚すればこそテレビや書籍の情報に飛びついてしまうわけだが、もっともっと自分自身のセンサー(味覚)を信頼すべきだろう。ただし加工食品は避けるのが賢明だ。

 もしも私に幼い子供がいれば、人工甘味料・マーガリン・小麦やトウモロコシを原料とするお菓子・ファストフードは忌避する。現在でもそうだが食用油は胡麻油しか使わない。

2019-03-03

タンパク質と鉄分を摂り、糖質を控える/『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美


『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン
『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』アレン・フランセス
『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ
『コレステロール 嘘とプロパガンダ』ミッシェル・ド・ロルジュリル
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』べッセル・ヴァン・デア・コーク

 ・タンパク質と鉄分を摂り、糖質を控える

『心と体を強くする! メガビタミン健康法』藤川徳美
『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム
『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』溝口徹
『食事で治す心の病 心・脳・栄養――新しい医学の潮流』大沢博
『オーソモレキュラー医学入門』エイブラハム・ホッファー、アンドリュー・W・ソウル
・『自律神経どこでもリセット! ずぼらヨガ』崎田ミナ、福永伴子監修

「増やす編」のトップバッターはタンパク質を含む食品です。タンパク質の英語 Protein (プロテイン)は、ギリシャ語の「第一となるもの」に由来しています。いってみれば、生命活動の第一人者、まずもって増やす必要がある栄養素です。

【『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美〈ふじかわ・とくみ〉(方丈社、2018年)以下同】

 厚生労働省は22日、65歳以上の高齢者が1日に摂取するたんぱく質の目標量を引き上げる食品摂取基準に関する報告書案を示した。「フレイル」(虚弱)の発症予防を目的とした場合、65歳以上の高齢者は体重1キログラム当たり少なくとも1グラム以上のたんぱく質の摂取が望ましいとした。体重50キログラムの人ならば1日50グラム以上となる(日本経済新聞電子版 2019年2月22日)。

 たまたまプロテインに興味を持ち、あれこれ情報収集している時に見つけた書籍である。私の場合、今のところうつ病とは無縁である。基本的に精神的な落ち込みを感じることがほぼない。元々幼い頃から自己評価がそれほど高くないので軽んじられたところで「ま、仕方ないか」という程度に受け止めている。更に多少の修羅場をくぐり抜けてきたこともあり少々の苦労なら「これくらいはどうにでもなる」という心の余裕がある。ついでに言っておくと私には「寂しい」という感情が欠落している。30代で6人の後輩を喪った時に涙が涸(か)れ果ててしまった。

 そんな私ですら読んでいるのだから、うつ病あるいは気質のある人は直ちに実践するべきだ。食生活を変えるだけで精神疾患を乗り越えられるとすればこんな安上がりな方法はない。

 必須アミノ酸は、9種類のうち一つでも必要量に満たないものがあると、もっとも少ないアミノ酸に準じた量しかタンパク質がつくられません。偏って多量に摂取したアミノ酸は、すべて無駄になってしまうのです。
 このしくみは「桶の理論」として知られています。


 タンパク質はアミノ酸でできている。「桶の理論」は初耳であった。このように食事のバランスを具体的に指摘されると実に説得力がある。以下のアミノ酸スコアを冷蔵庫に貼っておくとよい。


 日本女性が鉄不足になる原因は食生活です。土壌のミネラルが減少したため、農作物から摂れる鉄分も減少してしまいました。
 一方、他国の女性、特に欧米の女性は日本女性のような鉄不足はありません。欧米では、鉄分を含む肉を日本人の3倍ほど食べます。また、欧米を中心とした50カ国以上の国では、小麦粉にあらかじめ鉄が添加されるなどの鉄補給対策がなされています。その理由は、1940年代に鉄欠乏性貧血が多く発症し、その対応に困ったという時代があったのです。この対策のおかげで、鉄不足の頻度は減少したということです。
 米国、英国、カナダ、トルコ、タイ、スリランカなどの国々で、同様の鉄不足対策がとられており、メキシコではとうもろこし粉、モロッコでは塩、フィリピンでは米、中国ではしょう油、東南アジア諸国ではナンプラーに、鉄が添加されています。

 そこはかとなく陰謀の臭(にお)いが漂ってくる。やがて訪れる高齢化社会の問題が介護であることを有吉佐和子が指摘したのは1972年のことであった(『恍惚の人』新潮社)。女性解放を謳(うた)ったウーマンリブ運動(1960年代後半から1970年代前半)をバックアップし資金提供したのはロックフェラー財団である。その目的は納税者を増やすことと、子供の教育を母親の手から学校に奪い家族を破壊することであった。これはアーロン・ルッソ監督が直接聞いた話として公言している。

 女性のための鉄分対策すら行おうとしない国家は何らかの意志で人口減少を目指しているのだろう。日本は食品に関する規制が甘くマーガリンやショートニングに含まれるトランス脂肪酸も野放し状態である。「我が家はバターだから大丈夫」というのは通用しない。飲食店や菓子類に含まれるマーガリンを避けることは不可能だ。

 よくよく振り返ってみよう。この国は自殺、交通事故死、拉致被害を漫然と見過ごし、古きよき会社制度を破壊して短期間で低賃金労働者という階層をつくることに成功した。主要上場企業の株式は外国資本に買い漁られ、会社は株主のものとなり、社長がべら棒な報酬をせしめ、従業員と家族は蔑(ないがし)ろにされてしまった。

 家族や会社内の関係性が断絶された頃から人権の名の下にステレオタイプの正義が先進国で声高に叫ばれるようになった。このポリティカル・コレクトネスを西尾幹二は「衛生思想」であり「消毒の思想」と喝破している(『国家と謝罪 対日戦争の跫音が聞こえる』2007年)。

 国家が国民を守る時代は終わった。自ら知恵を尽くして我が身を守れ。

2018-10-16

コレステロールは「安全」/『コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる』浜崎智仁


『コレステロール 嘘とプロパガンダ』ミッシェル・ド・ロルジュリル

 ・コレステロールは「安全」

『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『医学常識はウソだらけ 分子生物学が明かす「生命の法則」』三石巌
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム

「栄養」を考えるうえでの基本――人間にとって、昔は入手できなかったものは不要である。
 この基本さえ覚えておけば、あとはすべて自分で判断できる。実に簡単だ。大昔「食べていなかった」もの、それは、栄養学的には「要らないもの」なのである。
 たとえば植物油。太古の昔にコーン油、オリーブ油、ゴマ油などの植物油があっただろうか? もちろん、なかった。だから食べなくても大丈夫なのだ。
(中略)
 なぜ、大昔に食べていないものは不要といいきれるのだろう。
 古来、人間は、「その土地で入手できるもの」だけを食べて生きてきた。生活するために必要なものが得られない場所では、人は死に絶えていた。たとえば、飲料水が毎日入手できないような場所には人は住んでいない。逆に、昔から人が住んでいた土地で入手できるものだけあれば、人は生きていけるのだ。

【『コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる』浜崎智仁〈はまざき・ともひと〉(講談社+α新書、2011年)以下同】

『コレステロール 嘘とプロパガンダ』より端的にエビデンスが示されていて理解しやすい。浜崎は翻訳を手掛けた人物で医学博士。植物油を批判した上記テキストは不思議にも地産地消を示していて興味深い。海外の大規模農業や低賃金が輸送コストを加えても安価な農産品となって市場に出回っている。消費者が注目するのは価格で、たとえ内容を吟味としたとしても買う買わないは価格で判断する。しかも食品は毎日のように買う必要があるため消費者のコスト意識は極めて高い。よく言われることだが数円安い卵を買うために数キロ先のスーパーへゆくことも主婦はよしとする。

 日本動脈硬化学会が発表している「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」は総コレステロール値を重視していたが、総死亡率との関係で不都合が生じてきたため、悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)を重要視になる。だが総死亡率との関連性は明らかになっていないという。大体「日本動脈硬化学会」なんて名称自体が利益団体にしか見えない。

 2007年度版の「ガイドライン」では、「LDL-コレステロール値が高いと心筋梗塞になる」という疫学(えきがく)調査がないどころか、いくつかの疫学調査により「LDL-コレステロールは高くても、総死亡率から見れば問題ない」ことが判明してしまっている。(中略)
 せっかく乗り換えた「悪玉」LDL-コレステロールも、こうして情けない結末を迎えることになり、早くも次の「悪玉」を出す準備をしないといけないわけだ。

 これに乗じた健康食品の広告もツイッターのタイムラインで最近よく見掛ける。宗教と製薬会社は不安産業といってよい。「不安を解消したければカネを払え」というのが彼らの論法である。

 結論からいおう。もともとコレステロールは【安全】なのだ。動物に【必要】な、細胞膜の構成成分なのだから、どこまでいってもきりがない。
「コレステロール悪玉説」を唱える人たちが、こうして次から次へと方針を変えることになるのは、いったいなぜなのだろう。
 その理由は、恐ろしいことに、コレステロール=悪玉としておいたほうが、圧倒的に経済効果が高いからだ。コレステロール値を低下させる「スタチン」という薬だけで、日本では年に2500億円も使用されている。全世界だとその金額は3兆円に上る。
 そうなると、スタチンの関係者にとって「コレステロール【無害】説」など許せるはずがない。大量の「情報」を発信して、反対派の声をかき消さなければならないことになる。コレステロールの是非に関して何十年も決着がつかないのは、間違った理論を守るために巨大な金銭的バックがついているからである。

 非科学的といえば真っ先に浮かぶのが栄養学であるが、2位には医学を推薦したい。私は55年生きてきたが頭のよい医者は一人しかお目にかかったことがない。他は見るからに不勉強で本業は「金儲け専門」といった印象を受けた。

 医学は裁判と似ていて、ただ単に過去の判例に基づいて判断を下しているだけだ。患者や体そのものを直接見ようとはしない。医師は薬を処方するだけの小役人に成り下がってしまった。

 幼い子供がいる家庭では大変かもしれないが、マーガリンではなくバターを、植物油ではなくラードを使った方がいいだろう。

2014-08-16

癌治療の光明 ゲルソン療法/『ガン食事療法全書』マックス・ゲルソン


 私の治療法は主として、肉体の栄養状態の改善を武器とする治療法である。この領域で発見されたこと、およびその応用法の具体的な内容の多くは、すでに科学的な研究によってその確かさが確認されている。

【『ガン食事療法全書』マックス・ゲルソン:今村光一訳(徳間書店、1989年)以下同】

 原書が刊行されたのは1958年(昭和33年)のこと。マックス・ゲルソン(1881-1959年)は1946年にアメリカ議会の公聴会で自身の研究を発表したが耳を貸す人はいなかった。きっと半世紀以上も時代に先んじていたのだろう。

 その後、様々な技術が進展することで、農業・畜産業は工業と化した。土壌のバクテリアを死滅させ、農薬をまき散らし、現在では遺伝子をも操作し「自殺する種」(『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子)が世界中に出回っている。

 家畜には成長を促進するためのホルモン剤や抗生物質が大量に投与されている。加工食品には防腐剤や得体の知れない食品添加物がてんこ盛りだ。市場に出回る食料品はそのすべてが微量の毒に侵されているといっても過言ではあるまい。

 公認の治療法とは別のガンの治療法を世間に公表することには、大きな困難が伴う。また非常に強い反応が起きることもよく知られている。しかし慢性病、とくにガンの治療に関して、多くの医者が持っている根深い悲観主義を一掃すべき時期はもう熟したはずである。
 もちろん何世紀にもわたってきたこの悲観主義を、一挙に根こそぎにするのは不可能である。医学を含む生物学の世界が、数学や物理学の世界のように正確なものでないことは、誰でも知っている。
 私は現代の農業や文明が、われわれの生命に対してもたらしてきた危機を全て一掃し、修復するこはすぐには不可能だろうと心配している。私は人々が人間本位の立場から一つの考えにまとまり、古来のやり方によって、自分の家族と将来の世代のためにできるだけ自然で精製加工していない食品を提供するようになることこそが、もっとも大切なことだと信じている。
 一般的な退化病やガンの予防、そしてガンの治療に必要な有機栽培の果物や野菜を入手することは、今後は今までよりなお難しくなりそうである。


「大きな困難」「非常に強い反応」とは医学界の保守的な傾向もさることながら、製薬会社の利権に関わってくるためだ。世界1位のファイザー(米国)の売り上げは500億ドル前後を推移している(世界の医薬品メーカーの医薬品売上高ランキング2013年)。国内トップは武田薬品工業で157億ドル弱となっている。

 薬漬けにされる精神疾患の場合が特に酷い。エリオット・S・ヴァレンスタイン著『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』を読めば、病気そのものがでっち上げられていることがよくわかる。しかし溺れるものが藁(わら)を掴(つか)むように病者は薬を求める。医療は現代の宗教であり呪術でもある。我々は医師の言葉を疑うことが難しい。ひたすら信じるだけだ。よく考えてみよう。医者は裁判官のようなものだ。彼らは過去の例に基づいた発想しかできない。しかも西洋医学は対症療法である。患部を切除あるいは攻撃する治療法が主で、身体全体に対する視線を欠いている。患者はまな板の上の鯉みたいなものだ。

 私の基本的な考えは、当初から次のようなものであり、これは今もまったく同じである。
 ノーマルな肉体は、全ての細胞の働きを正常に保たせる能力を持っている。だから、この能力は異常な細胞の形成やその成長を防ぐものでもある。したがってガンの自然な療法の役割とは、肉体の生理をノーマルなものに戻してやるとか、できる限りノーマルに近いものに戻してやることに他ならない。そして次に、代謝のプロセスを自然な平衡状態の中に保たせるようにするのだ。

 自然治癒力の発揮と言い換えてもよい。病は身体が発するサインなのだ。マックス・ゲルソン博士は友人であったアルベルト・シュバイツァーの糖尿病とシュバイツァー夫人の肺結核をも食事療法で完治させている。

 マックス・ゲルソンは2冊目となる著書の出版を準備していた時に急死する。そして跡形もなく原稿も消えていた。毒殺説が根強い。その死を悼(いた)んでシュバイツァーは次のように語った。

「ゲルソン医師は、医学史上もっとも傑出した天才だと思う。いちいち彼の名は残っていないが、数多くの医学知識のなかに、じつは彼が考え出したというものが多くある。そして、悪条件下でも多くの成果を出した。遺産と呼ぶにふさわしい彼の偉業が、彼の正当な評価そのものだ。彼が治した患者たちが、その証拠である」(マックス・ゲルソン医師について

 尚、本書は医学書のためかなり難解な内容となっている。関連書と私がゲルソン療法を知った動画を紹介しておこう。具体的な食事療法については「ゲルソン療法とは」のページを参照せよ。一人でも多くの人にゲルソン療法を知ってもらえればと痛切に願う。

ガン食事療法全書決定版 ゲルソンがん食事療法ゲルソン療法―がんと慢性病のための食事療法あなたのがんを消すのはあなたです 厳格なゲルソン療法体験記


『迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか』シャロン・モアレム、ジョナサン・プリンス
筋肉と免疫力/『「食べない」健康法 』石原結實