2013-02-07

佐村河内守


 1冊読了。

 8冊目『交響曲第一番』佐村河内守〈さむらごうち・まもる〉(講談社、2007年)



 今年の1位はこれで決まりだ。セス・ロイド著『宇宙をプログラムする宇宙』も凄いが、やはり感動の深さが違う。佐村河内は私と同い年である。つまり同じ時代を呼吸しながら生きてきたわけだ。その時自分は何をしていたか。瞬時に記憶が蘇る。幼少時の過酷なピアノ稽古、弟の交通事故死、単身上京しホームレスとなりながらも独学で音楽を修める。襲いくる偏頭痛と耳鳴り。そして遂に音は途絶えた。聾者(ろうしゃ)となっても耳鳴りは止まない。闇は果てしなく底が知れなかった。佐村河内は精神に変調を来たし、糞尿まみれとなりながらも作曲を手放さなかった。「交響曲第1番《HIROSHIMA》」完成直後に自殺未遂。そして「交響曲第2番」の完成後にも自殺未遂をしている。彼を救ったのは障害をもつ少女だった。奇蹟は184ページで訪れる。だが試練の波はその後も執拗に押し寄せた。修羅、という言葉では足りない。佐村河内は正真正銘の地獄を生き、今もそこにとどまっている。彼の絶対音感が生む「闇の音」が鳴り響く。死と隣り合わせの位置から生の歓びが噴き上げる。これはもうCDを買うしかあるまい。願わくは土田世紀に漫画化してもらいたい。

佐村河内守:交響曲第1番 HIROSHIMAシャコンヌ ~佐村河内守 弦楽作品集鬼武者

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