2008-12-05

メディアは“下水管”に過ぎない/『無資本主義商品論 金満大国の貧しきココロ』小田嶋隆


 この間読んだ『パソコンは猿仕事』(小学館文庫、1999年)がつまらなかったので、少し前に読んだものから紹介しよう。

 ちなみに「メディアはメッセージだ」というのは、恥知らずな広告屋が言い出したハッタリだ。スピーカーが音楽でなく、キャンバスが絵でないように、メディアは、結局、通路以上のものでない。通路という言い方が不満なら「メディアは下水管だ」と言い替えても良い。要するに、あんたたちは、うんこだ。

【『無資本主義商品論 金満大国の貧しきココロ』小田嶋隆(翔泳社、1995年)】

 確かにそうだ。流れているものが悪臭を放っているのだから、メディアは下水管といえるだろう。芸能界の下劣な噂話、昼メロにおける畜生さながらのイジメと自由奔放な恋愛、テレビ局の意向に沿ったコメントを繰り返すコメンテーター、記者クラブで発表された官僚からの情報を垂れ流すだけのニュース番組、そして、みのもんた……。ギャラのためなら寿命を縮めても構わないといった魑魅魍魎どもが蠢(うごめ)くヘドロみたいな世界だ。

 大体、濡れ場を演じる女優と売春婦のどこが違うと言うのか? みのもんたに愛想を振りまくTBSの女子アナと、ジャイアンにおべっかを使うスネ夫に差はあるのか?

 そんなテレビを楽しむあなたは、下水管に棲息するドブネズミのような存在だ。もはや、汚水の悪臭すら気にならなくなっていることだろう。私は違うよ。ちゃあんと鼻をつまみながらテレビを観ているもんね。

 しかも、だ。私は今年、NHKの「おはようにっぽん」から出演依頼を受けたのだが、きっちりと断わっておいたのだ。私をテレビに出すとすれば、番組そのものを依頼するしか手はないよ。NHKの名誉のために言っておくが、スタッフは低姿勢で誠実な人物であった。こっちは、べらんめえ調で話していたにもかかわらずだ。

 芸能人なんてえのあ、所詮、川原乞食の末裔に過ぎない。そんなものにうつつを抜かしているようでは先が知れている。

『無資本主義商品論 金満大国の貧しきココロ』小田嶋隆
なんとなくインチキ臭い/『メディア論 人間の拡張の諸相』マーシャル・マクルーハン
あらゆる事象が記号化される事態/『透きとおった悪』ジャン・ボードリヤール

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