2018-06-11

ロングライドにはガムテープと毛抜きを/『気がつけば100km走ってた 二代目自転車名人鶴見辰吾の自転車本』鶴見辰吾


『自転車で痩せた人』高千穂遙

 ・ロングライドにはガムテープと毛抜きを

 サドルの上はアイデアがひらめく場所でもある。「今度の演技はこうやってみよう」といった仕事がらみのこともあれば、「自転車でこんなことをしたら楽しいだろうな」と考えてみることもある。
 09年、「三代目自転車名人」に選ばれた経済評論家の勝間和代さんが、就任式のスピーチでおもしろいことを話されていた。中国に「三上」という言葉がある。文章を練るのに最も適した場所は馬上、枕上、厠上――つまり馬の上、寝床、トイレの3か所だ。そして勝間さんにとっての「馬上」は「自転車」である、とおっしゃったのだ。
 これは、ぼくも共感できた。自転車は楽しみながら体力作りができるうえに、頭の中を整理したり新たな発想を得たりするのに最適だ。
 つけ加えるなら、自転車はほかのレジャーやスポーツと違って、乗っているあいだは基本的にお金がかからない。こんなにお得なスポーツ、探そうとしてもなかなか見つからないだろう。

【『気がつけば100km走ってた 二代目自転車名人鶴見辰吾の自転車本』鶴見辰吾(実業之日本社、2010年)以下同】

 大変読みやすく鶴見の誠実で真面目な人柄が窺える。ただし夫人のことを「ぼくの奥さん」と書くのはいただけない。身内に敬語を使うのはおかしい。

 自らの体験を基にしており目配りが行き届いている。ロードバイクに乗ってみたいと考える人にとってはわかりやすい入門書だ。尚、ラベルについては書籍を「自転車本」とし、「ロードバイク」とは分けた。

 チューブに穴が開いただけなら交換すればOKだが、夏場にガラスの破片を踏んだときなどタイヤそのものがバーストしてしまうときがある。こうなったら、チューブを交換してもタイヤの裂け目からチューブがはみ出してまたパンク。いくらやっても意味がない。そういうときに、タイヤの裏側からガムテープを貼っておけば急場しのぎにはなる。ムリしなければ自走して帰って来られるだろう。保険のためと思って、ほんの何十センチかの長さでいいのでガムテープ を持っていこう。
 それから、意外に役立つのは毛抜き。道路の端を走っていると、けっこうワイヤーくずを踏みやすい。ぱっと見には気がつかないほど細かいクズがタイヤに刺さっていることがある。これを手で抜こうとしてもなかなか難しい。爪を立てても歯が立たず、なかなか抜けずに時間ばかりが過ぎてしまうことにもなりかねない。そんなとき毛抜きがひとつあるとたやすく抜けるので、とても重宝する。

 ガムテープはフレームに貼り付けて構わない。帰宅してから剥(は)がせば糊(のり)の痕(あと)が付くこともないだろう。毛抜きはナイスなアイディアだ。まだ乗っていない私が言うのも何だが(笑)。

 初心者にとってスポーツバイク専門店は敷居が高く、店員の態度が居丈高で鼻持ちならないという声も多い。自転車本では必ずといってよいほど近隣の店舗で実際にまたがって買うことを奨(すす)めているが、別にネット通販でも構わないだろう。大きな粗利率に胡座(あぐら)をかいているような店が多すぎるのだ。

 もちろん通販で購入した場合は調整が必要だ。やってもらえるかどうかは近隣のショップに電話で確認すればいい(料金も)。併せて防犯登録(義務付け/550円)とTSマーク(できれば赤色/1000円+点検費1000円前後)の取得を。

 愛好家が支える狭い世界はカルト的様相を帯びる。自転車本を何冊か読むと直ぐに気づくのは思い上がった玄人(くろうと)が素人を見下す視線である。どのような世界でも一緒と思われるが高級機種になればなるほど違いは小さいものとなる。その微妙な差がわかるかわからないかと自慢気に言葉を操る書き手が多い。

 鶴見にはそういう態度がない。走る喜びが爽やかに溢(あふ)れている。挙げ句の果てには自家用車を処分してまでロードバイクにカネを注ぎ込んでいる。チームまで作っているのだから人望もあるのだろう。



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