2011-05-19

ウィリアム・スタイロン


 1冊読了。

 33冊目『ナット・ターナーの告白』ウィリアム・スタイロン:大橋吉之輔〈おおはし・きちのすけ〉訳(河出書房新社、1970年)/重量級の傑作だ。上下2段で370ページ、活字は8ポイントか。読み終えるのに2週間ほど要した。1968年のピュリッツァー賞を受賞している。ナット・ターナーは1831年に武装蜂起した奴隷である。この事件で55人の白人が惨殺された。序文によれば史実に基づいて構成した小説であるとのこと。とにかく文章が素晴らしい。詩的な修飾が次々と現れ、文章が香気を放っている。そこに技巧のあざとさがない。21世紀となった今読むと、「テロの情理」が見えてくる。宗教という縦糸に、暴力と性の横糸が編み込まれる。こうだ、と決めつけることのできない幅のある物語だ。心の反響が余韻を残すのだが、決して心地いい音色ではない。

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