・『ものぐさ精神分析』岸田秀
・現代心理学が垂れ流す害毒
・文明とは病気である
・貧困な性行為
・ヨーロッパの拡張主義・膨張運動
・『唯脳論』養老孟司
実際、この伝染病(※=ヨーロッパ文明)の基本要素である、他人(他の生命)を単なる手段・物質と見るあくなきエゴイズムと利益の追求、不安(劣等感、罪悪感)に駆り立てられた絶対的安全と権力の追求、最小限の労力で最大限の成果をあげようとする能率主義は、いったんその方向に踏み出せば、そのあとは坂道をころげ落ちる雪ダルマのような悪循環がかぎりなくつづくのみである(原水爆は、ヨーロッパ近代的自我の確立、エゴイズムと能率主義の必然的帰結である)。どこにも歯止めがない。そして無菌者は必ず保菌者に負け、同じ保菌者になるか(日本)、滅び去るか(インディアン)、あるいは閉じこもって難を避けるか(未開民族)しかない。歯止めのないこのヨーロッパ文明に歯止めをかける文明が現われ得るであろうか。それとも人類は悪循環の果てに奈落の底に落ち込むのであろうか。
【『続 ものぐさ精神分析』岸田秀〈きしだ・しゅう〉(中公文庫、1982年/『二番煎じ ものぐさ精神分析』青土社、1978年と『出がらし ものぐさ精神分析』青土社、1980年で構成)】
ヨーロッパの拡張主義・膨張運動はアレクサンドロス大王(紀元前356-紀元前323年)に始まり、十字軍(1096-1272年)、大航海時代(15世紀半ば-17世紀半ば)を経て、産業革命(18世紀半ば-19世紀)・資本主義経済に至り、帝国主義・植民地主義を生んだ。
その歴史的な結晶がアメリカであると考えてよい。新自由主義は世界各国に壊滅的なダメージを与え(『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン)、サブプライム・ショック~リーマン・ショックとなって破裂した。こうしてシカゴ学派は敗れ去った。大銀行は国家の資本注入によって辛うじて生きながらえた。先進国という先進国が社会主義色の強い保護主義に舵を切った。
それにしても「無菌者は必ず保菌者に負け、同じ保菌者になるか(日本)、滅び去るか(インディアン)」との指摘が手厳しい。平和的な民族は必ず攻撃的な民族によって滅ぼされる。
本来であればアメリカやEUに対抗し得るアジア・ブロックを形成すべきだとは思うが、中国と韓国の反日感情がそれを許さない。中国の共産党支配を引っくり返すか、日中戦争になるかはこの10年ではっきりするだろう。
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