・『ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論』高橋昌一郎
・「囚人のジレンマ」には2種類の合理性が考えられる
・完全に民主的な投票システムは存在しない
・独裁制、貴族制、民主制の違い
・『知性の限界 不可測性・不確実性・不可知性』高橋昌一郎
・宗教とは何か?
・必読書 その三
司会者●投票方式に応じて異なるタイプの候補者が選ばれるなどとは、これまで考えたこともありませんでしたが……。
会社員●なんだか民主主義の根底が揺るがされているような気がしますね……。
数理経済学者●実は、事態はもっと深刻なのです。というのは、完全に民主的な社会的決定方式は、存在しないからです! この事実は、1951年にコロンビア大学の数理経済学者ケネス・アロウの証明した「不可能性定理」によって明らかになりました。
【『理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性』高橋昌一郎〈たかはし・しょういちろう〉(講談社現代新書、2008年)】
日本の民主政を私は株主民主政と考える。国民一人ひとりが自分の判断で投票することは稀(まれ)で、大概は所属企業や所属団体が支持する政党・政治家に投票している。つまりより大きな影響を与えることのできる大株主が経営の差配を握っているのと同じだ。
有能なリーダーが行う独裁政治と、無責任な投票行動で選ばれた政治家とどちらの政治システムが優れているかは一概に決められない。投票による選択が正しいという思い込みを疑う必要があろう。
本気で民主政が正しいと思うのであれば、あらゆる政策判断を国民投票にするシステムを構築すべきだろう。インターネット環境が整備されているのだからそれほど難しくはあるまい。AIを駆使してその後の予想も加味すれば、国民は本気で政治に取り組むはずだ。
私が貴族政(エリート政治)を支持するのは民主政はノイズが多すぎるためだ。法整備にも時間を要する。要は政治といったところで意思決定のシステムをどうするかという問題に過ぎない。
もしも完全に民主的な投票システムがあったとしても理想的な政治が実行されるとは誰も思わないだろう。皆が歩み寄ることで社会は成立しており、その意味で社会は妥協の産物といえる。妥協の結果が格差であるとすればこんな間抜けな話はない。
理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)
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高橋 昌一郎
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