2015-12-20
ウッドハウス暎子
1冊読了。
172冊目『北京燃ゆ 義和団事変とモリソン』ウッドハウス暎子(東洋経済新報社、1989年)/柴五郎ものに必ず引用される文献で、論文にエピソードを盛り込んだ労作。満州人名や清国の地名が読みにくいのだが、柴五郎が登場すると俄然読む速度がはやまる。主役はタイムズ紙特派員ジョージ・アーネスト・モリソンだが、中身はモリソンの目を通した日本人讃歌といってよい。何にも増して当時の国際関係における虚々実々の駆け引きがよくわかった。現在に至る日本外交の主体性喪失は三国干渉にあったのだろう。義和団事変(北清事変)で既に日露の衝突は避けられない命運にあったことも理解できた。前著『日露戦争を演出した男 モリソン』も読まねばなるまい。
2015-12-19
輪島祐介、アーナルデュル・インドリダソン、他
11冊挫折、2冊読了。
『やせる!血糖値が下がる!「タマネギ」レシピ』(マキノ出版、2013年)/「タマネギ氷」が目新しい。要ミキサー。薬効強調路線。マキノ出版はオカルト健康系で知られる。悪い本ではないが少し離れた位置から読むべきだろう。
『山川 詳説日本史図録』詳説日本史図録編集委員会編(山川出版社、2013年)/良書。
『山川 詳説世界史図録』詳説世界史図録編集委員会編(山川出版社、2014年)/良書。世界地図の移り変わりが面白い。地球環境の変化も視点がよい。
『オルタード・カーボン(上)』リチャード・モーガン:田口俊樹訳(アスペクト、2010年)/文庫本。造語センスについてゆけず。田口の訳文はもたもたした感じがあってあまり好きではない。
『詳説世界史研究』木下康彦、木村靖二、吉田寅編(山川出版社、2008年)/微妙。冴えがない。面白味のない参考書といった体裁。
『変見自在 スーチー女史は善人か』高山正之(新潮文庫、2011年)/著者名の正字は「はしご高」。声の悪さ、話しぶりの不透明さがとにかく好きになれない人物である。エッセイの主題は歴史の真実よりも朝日新聞を叩くところにある。それでも世界各国に身を置いてきただけあって時折、優れた知見を光らせる。
『業務スーパーに行こう!』株式会社エディキューブ編(双葉社、2013年)/ほぼカタログ。知らない商品がいくつもあった。ま、店の規模にもよるのだろう。自社生産の多さには驚いた。
『流れ図 世界史図録ヒストリカ』谷澤伸、甚目孝三、柴田博、高橋和久編(山川出版社、2013年)/図録は人によって好き嫌いが分かれる。安い(929円)とはいえ、使わぬ物を買うのは愚かである。図書館で参照してから選ぶとよい。
『最新世界史図説タペストリー』桃木至朗監修、帝国書院編集部編、川北稔(帝国書院、2015年)/『ヒストリカ』よりはこちらが好み。
『ホームには誰もいない 信念から明晰さへ』ヤン・ケルスショット:村上りえこ訳(ナチュラルスピリット、2015年)/ノンデュアリティ(非二元)という言葉を調べるために読む。具体的なワークの件(くだり)で挫折。スピリチュアリズムというスタイルから離れる必要があるように思う。
『日本の軍閥 人物・事件でみる藩閥・派閥抗争史』(別冊歴史読本、2009年)/写真と図のみ評価。記事はバラバラでまとまりを欠く。柴五郎は不遇な時期が長かった、とある。薩長閥についてもよくわからず。
170冊目『緑衣の女』アーナルデュル・インドリダソン:柳沢由実子訳(東京創元社、2013年)/単行本で出すだけの価値あり。CWAゴールドダガー賞とガラスの鍵賞受賞。半世紀前の事件を巡って現在と過去が交錯する。それにしても暗く重々しい。アイスランドの気候もさることながら、破綻の中で辛うじて踏みとどまる家族の姿がのしかかってくる。主人公のエーレンデュルにもさほど魅力はない。っていうか魅力的な人物は見当たらない。で、そこにリアリズムを感じるかといえばそれほどでもないんだな、これが(笑)。それでも読ませる。ぐいぐい読ませる。一日半で読み終えた。
171冊目『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』輪島祐介(光文社新書、2010年)/いやはや面白かった。戦後の風俗を巡る書籍で本書に並ぶものはない。井上章一著『つくられた桂離宮神話』を軽々と凌駕する。渡辺京二著『逝きし世の面影』、水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』に伍するレベルである。批判の鋭さにおいても一級品だ。しかも嫌味がない。「之を知る者は之を好む者に如(し)かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず」(『論語』)の手本といってよい。該博な知識がオタク性をまといながらも、恐るべき下半身の力で学術性を堅持している。輪島は1974年生まれでありながら、左翼勢力が文化を通してプロパガンダを行ってきた事実をも穿(うが)つ。恐れ入りました。「必読書」入り。
2015-12-13
2015-12-11
紺谷典子、山崎正友、他
2冊挫折、2冊読了。
『骨風』篠原勝之(文藝春秋、2015年)/第43回泉鏡花文学賞受賞作品。あまりピンと来なかった。父親に虐待された過去と見舞いに行った現在とが混沌としていてわかりにくい。「オレ」とか「ゲージツ」という言葉も耐え難い。
『声に出して読みたい日本語 1』齋藤孝(草思社、2001年/草思社文庫、2011年)/良書。センスがよい。飛ばし読みで終わったが半分以上は読んでいる。齋藤はプレゼンテーション能力が高い。
168冊目『闇の帝王、池田大作をあばく』山崎正友(三一新書、1981年)/著者は元創価学会顧問弁護士。矢野絢也著『乱脈経理』を軽々と超える内容だ。こなれた文章で自分が携わってきた汚れ仕事を赤裸々に暴露している。創価学会の政治力は集票力もさることながら、池田の札束攻勢にあることがよくわかる。宗教団体というよりは手口が広域暴力団に近い。毎日新聞の内藤国夫が池田にインタビューしている事実を初めて知った。
169冊目『平成経済20年史』紺谷典子〈こんや・ふみこ〉(幻冬舎新書、2008年)/やっと読み終えた。新書ながら400ページのボリューム。専門家の矜持が静かな怒りの焔(ほのお)となってメラメラと燃え上がる。小泉政権時代にテレビから抹殺された一人である。小泉・竹中コンビによる日本経済破壊の失政に鉄槌を落とす。日本の政治とマスコミの現状を知るための教科書といってよい。住専問題については私も当時、総合雑誌の特集号などを読んでフォローしているつもりであったが、まるでわかっていなかった。明治維新から小泉政権に至る近現代史の解明が待たれる。「必読書」入り。
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