2016-06-27

ネレ・ノイハウス、桜部建、上山春平、仲谷正史、小林よしのり、アルボムッレ・スマナサーラ、他


 21冊挫折、9冊読了。

天災と国防』寺田寅彦(講談社学術文庫、2011年)/読みにくい。昨今は文章にスピード感、鋭さ、躍動感のいずれかがないと読む気が起こらず。

最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ:高橋健次訳(草思社、2006年)/二度目の挫折。文章も構成も悪い。

インターネットは民主主義の敵か』キャス・サンスティーン:石川幸憲訳(毎日新聞社、2003年)/哲学書並みの難解さ。

すごい!ゼラチンふりかけ健康レシピ』浜内千波、藤野良孝(扶桑社ムック、2013年)/健康本で「すごい」「治る」「絶対」「必ず」は禁句である。ま、インチキ本と思ってよい。食用ゼラチンをゴマなどに混ぜるだけ。フードプロセッサーがあればレパートリーは格段に増える。お肌がきれいになるらしいよ。取り敢えずゼラチンは買った(笑)。

長くつ下のピッピ』アストリッド・リンドグレーン:大塚勇三訳、桜井誠イラスト(岩波少年文庫、2000年)/ずっと「長靴の下にいるピッピ」だと思い込んでいた。ハイソックスのことだったとはね。読むのが遅すぎた。リンドグレーンはスウェーデンを代表する児童文学作家。

文明の逆説 危機の時代の人間研究』立花隆(講談社、1976年/講談社文庫、1984年)/文庫化された当時に読んでいる。何となく開いたのだが読めず。正確の悪さを露呈している。興味が勝ち過ぎて抑制を欠いているようにも見える。

日本国の研究』猪瀬直樹(文藝春秋、1997年/文春文庫、1999年)/この人の文章が苦手だ。

続・日本国の研究』猪瀬直樹(文藝春秋、1999年/文春文庫、2002年)/正に比べると文章が短くて格段に読みやすい。規制緩和の警鐘を鳴らした書。

白雪姫には死んでもらう』ネレ・ノイハウス:酒寄進一訳(創元推理文庫、2013年)/シリーズ第4作。酒寄進一の文章に堪(た)えられず。2冊で十分だ。

脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める』築山節(生活人新書、2006年)/年寄り用の本だった。

神経とシナプスの科学 現代脳研究の源流』杉晴夫(ブルーバックス、2015年)/ちょっと見当が外れた。専門色が濃い。

枠組み外しの旅 「個性化」が変える福祉社会』竹端寛(青灯社、2012年)/「叢書 魂の脱植民地化 2」。仲間内でやっている印象が拭えず。こういうのはサブカル色を強く出した方が広範囲にアピールできると思う。

宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』青木薫(講談社現代新書、2013年)/帯に「科学書の名翻訳で知られる著者初の書き下ろし」とある。誇大広告。盛り過ぎ。私とは相性が悪い。飛ばし読みで読了。人間原理に興味のある人は読む価値あり。

魂の殺害者 教育における愛という名の迫害』モートン・シャッツマン:岸田秀訳(草思社、1975年/新装版、1994年)/94年の新装版で「気違い」を直していないのは草思社の手抜きだ。教育的虐待の影響を明かした一冊だが、例としては特殊すぎるだろう。統合失調症を調べようと思ったのだが当てが外れた。

幻の女』ウイリアム・アイリッシュ:稲葉明雄訳(ハヤカワ文庫、1976年)/黒原敏行の新訳(2015年)の評判が悪い。古典的名作であるが今となっては古い。被害妄想的なストーリー。自分のアリバイを証明できる行きずりの女性が幻のように消えてしまう。

A型の女』マイクル・Z・リューイン:石田善彦訳(ハヤカワ文庫、1991年)/再読。石田善彦の悪文に堪えられず。既に書評済み

A型の女』マイクル・Z・リューイン:皆藤幸蔵〈かいとう・こうぞう〉訳(ハヤカワ・ミステリ、1978年)/別訳があったとは露知らず。石田訳よりはずっといい。文章がきちんと頭に入ってくる。ただし文体に切れはない。

遥かなるセントラルパーク(上)』トム・マクナブ:飯島宏訳(文藝春秋、1984年/文春文庫、2014年)/今頃になって文庫化するってえのあどういう料簡なのかね? 1984年に幼馴染みのムラモトさんから借りて読んだ。日高晤郎がラジオで強く推していた一冊。

ワールド・カフェ カフェ的会話が未来を創る』アニータ・ブラウン、デイビッド・アイザックス、ワールド・カフェ・コミュニティ:香取一昭、川口大輔訳(ヒューマンバリュー、2007年)/読みにくい。

新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 台湾論』小林よしのり(小学館、2000年)/やはり漫画作品は読めない。活字本の方は読了。本書は台湾でもベストセラーとなっている。

1日10分で自分を浄化する方法 マインドフルネス瞑想入門』吉田昌生(WAVE出版、2015年)/ダメ本。

 76冊目『悪女は自殺しない』ネレ・ノイハウス:酒寄進一訳(創元推理文庫、2015年)/オリヴァー&ピアシリーズの第一作。ドイツ・ミステリ。まあまあ、といったところ。基本的に酒寄進一の訳文が苦手である。オリヴァー(貴族の血を引く上司)とピア(バツイチ女性)に何の魅力も感じない。それでも構成がよいので読了できた。

 77冊目『深い疵』ネレ・ノイハウス:酒寄進一訳(創元推理文庫、2012年)/ドイツ版『犬神家の一族』という評価は当たっていない。第二次世界大戦にまでさかのぼる歴史ミステリである。一読の価値あり。日本同様、歴史観がすっきりしない世相を反映しているようにも思える。

 78冊目『存在の分析「アビダルマ」 仏教の思想2』桜部建、上山春平(角川書店、1969年/角川文庫ソフィア、1996年)/上山の対談がよい。アビダルマは仏教心理学だが煩瑣すぎて付いてゆけず。それでも勉強になることが多い。

 79冊目『触楽入門』テクタイル、仲谷正史、筧康明、三原聡一郎、南澤孝太(朝日出版社、2016年)/触覚に関する珍しい本。文章がまどろっこしいのだが、なかなか面白かった。テクタイルとはチーム名。

 80冊目『そば屋はなぜ領収書を出したがらないのか? 領収書からみえてくる企業会計・税金のしくみ』大村大次郎(日本文芸社、2007年)/蕎麦屋からクレームが来て改訂したのが『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』(宝島社新書、2012年)である。要は現金商売ということ。大村本は外れが少ない。

 81冊目『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎(角川書店、2015年)/これはオススメ。目から鱗が落ちる世界史の教科書本。

 82冊目『李登輝学校の教え』(小学館、2001年/小学館文庫、2003年)/『台湾論』の活字版。何と李登輝と対談している。長らく小林のことを誤解してきたが、彼は感情のバランスが優れている。そして嘘が少ない。これは稀有なことである。佐藤優が欠いているものを私は小林に見出す。

 83冊目『苦しみをなくすこと 役立つ初期仏教法話3』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2007年)/再読。サンガ新書のスマナサーラ本を渉猟中である。

 84冊目『現代人のための瞑想法 役立つ初期仏教法話4』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2007年)/一読の価値あり。再読はしないだろう。「慈悲の瞑想」と「ヴィパッサナー瞑想」の具体的なやり方を伝授する。「慈悲の瞑想」を3日間ほど実践してみた。言葉の語呂が悪い。

 あと10冊あるのだが、疲れたので明日書くことに。

2016-06-25

「見る」ことは「知る」ことであり「背負う」こと/『写真集 野口健が見た世界 INTO the WORLD』野口健


『僕の名前は。 アルピニスト野口健の青春』一志治夫

 ・「見る」ことは「知る」ことであり「背負う」こと

 この写真集で最も表現したいのは「現場」の世界。ヒマラヤの高山、アフリカ、そして日本の被災地など、僕はどの現場に行ってもA面とB面があると考えている。パッと目に入る美しい世界がA面ならば、あえて踏み込まなければ見えてこない世界がB面。ときにB面は目を背けたくなるほど残酷だったりする。人の目はどうしてもA面ばかりに向きがちだが、本当の意味で「知る」ということはA面B面のどちらも必要なこと。僕が最も大切にしているのは「見る」ということ。なぜならば「見る」ということは「知る」ということであり、同時に「背負う」ということだから。

【『写真集 野口健が見た世界 INTO the WORLD』野口健(集英社インターナショナル、2013年)】

 いい写真集だ。ヒマラヤ、アフリカ、フィリピン・沖縄の遺骨収集、そして東日本大震災の被災地を野口がゆく。中学生や高校生の頃に出会いたかったというのが本音である。目をどこに向けるか、何を見て、どう感じるかで人生は決まる。噂話を垂れ流すテレビよりも、一枚の写真に心を動かされる。

 写真には他人の視線に入り込むスリルがある。同じ場所へ行っても見る世界は人によって違う。そして切り取られた瞬間は二度と訪れない時間でもある。人も出来事も来ては去る。風景も時間も来ては去る。諸行は無常を奏でながら一瞬としてとどまることがない。ところが写真は瞬間を永遠に引き延ばす。何という不思議だろう。

 野口の公式ブログにも写真は掲載されている。山男らしいダイナミズムを感じさせるものが多い。