2015-09-22
高橋和巳、中原圭介、デイミアン・トンプソン、他
7冊挫折、3冊読了。
『勝海舟と幕末外交 イギリス・ロシアの脅威に抗して』上垣外憲一〈かみがいと・けんいち〉(中公新書、2014年)/発想に躍動感が見られない。文章は当然のように停滞する。こういう本はどうしても読むスピードが落ちる。それを自覚した時点で閉じた。
『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯』フランク・ブレイディー:佐藤耕士〈さとう・こうじ〉訳、羽生善治解説(文藝春秋、2013年/文春文庫、2015年)/あの羽生善治が「本物の天才」と絶賛したのがボビー・フィッシャーである。羽生はチェスにおいても日本の第一人者で、チェスのために英語まで身につけた。著者は長らくボビー・フィッシャと親交があった人物。フィッシャーは晩年を日本で過ごした。フィリピンへ出国する際、入国管理法違反の疑いで収容された。多くの人々が支援したが羽生もその一人である。チェスのルールがわからないため眼の動きが鈍る。
『サイコパス 冷淡な脳』ジェームズ・ブレア、デレク・ミッチェル、カリナ・ブレア:福井裕輝〈ふくい・ひろき〉訳(星和書店、2009年)/横書き。英語表記が多すぎる。危うい匂いを感じたのでやめる。DSMは現在第5版となっているが、アレン・フランセスなどの批判を弁えるべきだ。
『時間と宇宙のすべて』アダム・フランク:水谷淳訳(早川書房、2012年)/文章が頭に入らず。
『無の本 ゼロ、真空、宇宙の起源』ジョン・D・バロウ:小野木明恵訳(青土社、2013年)/こちらも。
『怖い絵』中野京子(朝日出版社、2007年/角川文庫、2013年)/不思議なもので挫折したにもかかわらずオススメできる本がある。本書もそうだ。挫けたのは私の余生が短いためであって本に責任はない。文章もグッド。ドガの「踊り子」がよもや怖い絵だったとはね。amazonでは見つけにくいのだが朝日出版社版の方が大きくてよい。
『やめられない心 毒になる「依存」』クレイグ・ナッケン:玉置悟〈たまき・さとる〉訳(講談社+α文庫、2014年/講談社、2012年『「やめられない心」依存症の正体』改題)/『依存症ビジネス』の後では読めず。「アディクション」という単語がよくない。翻訳しようがなかったのか。
112冊目『依存症ビジネス 「廃人」製造社会の真実』デイミアン・トンプソン:中里京子訳(ダイヤモンド社、2014年)/「カップケーキ、iPhone、鎮痛剤――21世紀をむしばむ『3種の欲望』」との小見出しが興(きょう)をそそる。本人が経験したアルコール依存症の記述がやや冗長だが、『すばらしい新世界』的世界の現実化を描いて秀逸。
113冊目『2025年の世界予測 歴史から読み解く日本人の未来』中原圭介(ダイヤモンド社、2014年)/アメリカのシェール革命によってエネルギーコストが下がり、「よいデフレ」が世界を覆うとの予測。その時日米が世界経済のトップに君臨するという。説得力があり一日で読了。ただし日本を取り巻く安全保障の視点が抜けており、基軸通貨としてのドルがどのようになるかは論じていない。それでも現状分析から未来を読み解く手並みは鮮やかなものだ。
114冊目『消えたい 虐待された人の生き方から知る心の幸せ』高橋和巳〈たかはし・かずみ〉(筑摩書房、2014年)/本年度の暫定1位は『逝きし世の面影』から本書に。これは形を変えたルワンダである。閉ざされた家庭内での暴力を生き延びた彼らがカウンセリングを通して人生の受容に至る。その時「新たな言葉」が生まれる。彼らの生きざまは自燈明(じとうみょう)そのものといってよい。早めに書評をアップする。批判も含めて。
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