2018-03-21

二流の帝国だった戦前の日本/『日本人が知らない最先端の「世界史」』福井義高


『大東亜戦争とスターリンの謀略 戦争と共産主義』三田村武夫

 ・二流の帝国だった戦前の日本

・『日本人が知らない最先端の「世界史」2 覆される14の定説』福井義高
『昭和の精神史』竹山道雄

必読書リスト その四

 比較的自立した歴史を歩んできた江戸時代までと異なり、明治以降の日本は、帝国主義全盛の世界に放り込まれ、日露戦争以降、列強の一員と認められるようにはなったものの、米英ソのような本物の大帝国には遠く及ばない、二流の地域大国に過ぎなかった。そのなかで我が国は、唯一の超大国のジュニア・パートナーあるいは「属国」である今日とは違い、独立独歩のプレーヤーとして行動し、結果的に大敗北を喫したのである。
 にもかかわらず、歴史学者を含め知識人の間で根強い、戦前日本暗黒史観によれば、軍国日本が東アジアの平和な秩序を掻(か)き乱し、米英中ソを振り回した挙げ句、最終的に武力制覇を意図したゆえ世界大戦となったとされる。悪役ながら、まるで世界史が、少なくともアジアでは、日本を中心に展開したかのようである。

【『日本人が知らない最先端の「世界史」』福井義高(祥伝社、2016年)】

 福井義高は青山学院大学の教授で専門は会計制度・情報の経済分析である。そうした人物がいかに造形が深いとはいえ専門外の日本史本を書かざるを得ない事実が、まともな国史を教える学者が不在であることを物語っているように思える。

 日本が敗れた後、GHQは共産党員を獄から放ち、更には労働組合の結成を奨励した。振り返ればロシア革命(1917年)の風は日本にも及び、大正デモクラシーの思潮と相俟(ま)って日本人の権利意識は格段に高まった。そして翌年の1918年には全国各地で米騒動が起こる。

 騒動が広がると、各新聞は、騒動のようすを、寺内内閣の無策ぶりとあわせて報道しました。これにより参加者は「自分たちの行動が正義である」という意識をもちました。

大正デモクラシー~社会運動の発展~ | 日本近現代史(日本史A)の授業中継

 大正期に生じた社会主義的な意識の目覚めは戦後になって知識人という知識人を「進歩」の方向へと追い立てた。戦後教育は日教組にジャックされ、21世紀に至るまで義務教育では自虐史観を教え込んだ。

 転換点となったのは「新しい歴史教科書をつくる会」の結成(1996年)と「日本文化チャンネル桜」の設立(2004年)であった。どちらも当初はキワモノ扱いを受け極右集団と目されたが、時を経てみれば重大な仕事をしたことに気づく。「つくる会」は日本の近代史に多くの人々の眼を開かせ、「チャンネル桜」は保守系言論人のサロンとして人材を輩出した。

「独立独歩」という言葉ほど戦後日本と無縁だったものはあるまい。まともな軍事力も持たず、国家の安全保障を他国に依存して平然と構えているのが我々日本人なのだ。

 出張で佐渡へ行った折、NHKのクローズアップ現代で「被爆調査を拒否する作業員の実態」を報じていた。何の保障もなく危険にさらされる作業員の仕事を知り、「これは形を変えた戦争だな」と思わざるを得なかった。つまりこうだ。今まで散々嘘まで盛り込みながら原子力エネルギーを推進してきた政治家・新聞・御用学者、そしてそれまで高い業績で甘い汁を吸ってきた東京電力の最高幹部が何一つ責任を取ることなく、汚れ仕事を下請け企業に押し付け、下請けは更に孫受けに押し付け、最終的には7次・8次下請けの人々が日本の安全を命懸けで守っているのだ。

(c)具体的事故対処についての官邸の関与

 菅総理は、平成23年3月12日18時過ぎ頃、海江田経産大臣から、その直前に同大臣が発した福島第一原発1号機原子炉への海水注入命令について報告を受けた際、炉内に海水を注入すると再臨界の可能性があるのではないかとの疑問を発し、その場に同席した班目春樹原子力安全委員会委員長(以下「班目委員長」という。)がその可能性を否定しなかったことから、更に海水注入の是非を検討させることとした。その場に同席していた東京電力の武黒一郎フェロー(以下「武黒フェロー」という。)は、同日19時過ぎ頃、福島第一原発の吉田昌郎所長に電話し、「今官邸で検討中だから、海水注入を待ってほしい。」と強く要請した。菅総理が再臨界の可能性についての質問を発した際、その場には、班目委員長のほか、平岡英治原子力安全・保安院次長、武黒フェロー等の原子炉に関する専門的知見を有する関係者が複数いたが、的確な応答をした者はおらず、誰一人として専門家としての役割を果たしていなかった。また、安易に海水注入を中止させようとした東京電力幹部の姿勢にも問題があった。このような、すぐれて現場対処に関わる事柄は、まず、現場の状況を最も把握し、専門的・技術的知識も持ち合わせている事業者がその責任で判断すべきものであり、政府・官邸は、その対応を把握し適否についても吟味しつつも、事業者として適切な対応をとっているのであれば事業者に任せ、対応が不適切・不十分と認められる場合に限って必要な措置を講じることを命ずるべきである。当初から政府や官邸が陣頭指揮をとるような形で現場の対応に介入することは適切ではないと言えよう。

PDF:最終報告(概要) 平成24年7月23日 東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会 > 1 主要な問題点の分析 > (2)事故発生後の政府等の事故対処に関する分析 > d その他の具体的な対応に関する分析(7ページ目)】

 国民からは英雄と称された吉田昌郎〈よしだ・まさお〉所長(福島第一原子力発電所)に対して、班目春樹〈まだらめ・はるき〉原子力安全委員会委員長は不満を露(あら)わにし、東京電力の武藤栄〈むとう・さかえ〉副社長は解任処分を口にした。

 原発事故が戦争であるならば、この最終報告書はシビリアン・コントロールを否定している。大東亜戦争では軍部が暴走したが、文民が愚かな場合も我々は想定する必要がある。孫子曰く「君命をも受けざる所有り」(『香乱記』宮城谷昌光)と。

 今の日本がこのまま戦争に至れば原発事故と同じ結果になるだろう。

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