2018-05-06

米ドル崩壊のシナリオ/『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ


『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓
『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓
『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫

 ・米ドル崩壊のシナリオ

『ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!』ジェームズ・リカーズ
・『金価格は6倍になる いますぐ金を買いなさい』ジェームズ・リカーズ

 1971年8月15日、穏やかな日曜日の夜、リチャード・ニクソン大統領はアメリカで最も高視聴率を誇っていたテレビ番組の時間に、電波を使って新経済政策を発表した。政府は価格統制を行い、高率の輸入課徴金を課し、ドルと金の交換を停止すると宣言したのである。継続中の通貨戦争によって米ドルに対する信認が打ち砕かれ、アメリカは危機のさなかにあった。思い切った措置が必要だと、大統領は決断していたのである。

【『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ:藤井清美訳(朝日新聞出版、2012年)以下同】

「トランプ米大統領は8日の記者会見で、鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ25%と10%の関税を課す輸入制限を実施することを正式に発表した。カナダとメキシコを対象外とすることも改めて明らかにした」(ロイター 2018年3月9日)――あとはドル安に誘導すればニクソンショックの再現となる。東京オリンピックの翌年がちょうど半世紀後に当たるから、日中戦争はこのタイミングになるような気がする。もちろん米国債を大量保有している日中を戦わせるシナリオを用意しているのはアメリカだ。序文の続きを紹介しよう。

 今日、われわれは新たな通貨戦争の渦中にあり、ドルに対する信認の危機がふたたび訪れようとしている。危機の影響は、ニクソンが直面したものよりはるかに深刻になるだろう。あれから40年の間にグローバル化が進み、デリバティブ(金融派生商品)やレバレッジ(借り入れを利用する投資)が多用されるようになったことで、金融パニックやその伝播(でんぱ)を抑え込むのはほぼ不可能になっているからだ。
 新しい危機は為替(かわせ)市場で始まって、またたく間に株式や債権やコモディティ(商品)市場に波及するだろう。ドルが崩壊したら、ドル建て金融商品の市場も崩壊する。パニックはまたたく間に世界中に広がるだろう。
 その結果、アメリカ大統領が――それはオバマ大統領かもしれない――電波とサイバー空間を使って、ドルを全面崩壊から救うための大胆な介入計画を発表し、法的権限を行使するだろう。この新しい介入計画には、金本位制への復帰という策まで含まれるかもしれない。もしそうなったら、膨張したマネーサプライ(通貨供給量)を限られた量の金で支えるために、金の価格は現在より劇的に高い水準に設定されるだろう。早くから金に投資していたアメリカ人は、金価格の上昇による棚ぼた利益に対して、公正の名の下に90パーセントの「超過利潤税」を課せられるだろう。現在ニューヨークに保管されているヨーロッパや日本の金は、接収されて「新ドル政策」を支えるために使われるだろう。ヨーロッパや日本は接収された金の代わりに受取書を与えられ、その受取書は以前より大幅に高い新価格で新しいドルと交換できるとされるだろう。
 もう一つの可能性として、大統領は金本位制への復帰は避けて、さまざまな資本規制やIMF(国際通貨基金)のマネー創造機能を使って流動性を供給し、状況を安定させようとするかもしれない。IMFによるこのグローバルな救済は、金との兌換(だかん)性のない古いドルではなく、新たに発行されるSDR(特別引き出し権)と呼ばれるグローバル通貨で行われるだろう。世界は回り続けるだろうが、国際通貨精度はすっかり様変わりするだろう。
 これは荒唐無稽(むけい)な推論ではない。そっくり同じことがかつて起きているのである。紙券通貨が崩壊して、資産の凍結、金の接収、資本規制という措置が取られたことは過去に何度もある。アメリカもこうした措置と無縁ではなかった。それどころか、アメリカは1770年代から1970年代まで、独立戦争、南北戦争、大恐慌、そしてカーター政権時代のハイパーインフレーション(物価暴騰)を経験するなかで、ドル安政策を積極的に推し進めてきた。通貨崩壊が30年余り起きていないという事実は、次の崩壊の機が熟しすぎるほど熟していることを暗に示しているだけだ。単なる推論の所産ではなく、前提条件はすでに整っているのである。

 二度の世界大戦で英ポンドは凋落(ちょうらく)し基軸通貨は米ドルに変わった(1944年)。ブレトン・ウッズ体制はニクソン・ショック(1971年)で終焉を迎え、為替(かわせ)の変動相場制が幕を開ける。それにしても米ドルが現在も基軸通貨の地位を譲っていないのは何とも不思議な話である。兌換(だかん)紙幣は死んだ。金(ゴールド)の裏づけを失ったマネーは物としての価値を消失したが信用情報として生き延びた。

 基軸通貨とは簡単に言えば「石油や武器を買う時に使用できる通貨」のことだ。日本が中東から石油を購入した場合、1万円札で支払えば相手が困るのは誰にでも理解できよう。国家の基盤が弱い国ほど外貨が必要となる。

 イラクのフセイン大統領は原油の決済通貨をドルからユーロに変えたために殺された。「要するに、イラク戦争というのは、イラクにある石油利権を植民地主義敵に囲い込むための戦争だったのではなく、ドルを基軸としてまわっている国際石油市場のルールを守るための戦争だった」(『超マクロ展望 世界経済の真実』水野和夫、萱野稔人)。ルールを決めるのはいつだって強者だ。


 1ドル360円が半分の価値になるまでわずか10年である。1990年代から2000年代初頭にかけてアメリカではITバブルが、続いて住宅バブルが絶頂を迎える(2007年7月)。そして物づくりを放棄して金融工学にうつつを抜かしていた彼の国を襲ったのがリーマン・ショックであった(2008年9月)。10月28日には日経平均が7000円台を割り込んだ。グローバリゼーションは恐慌のスピードを加速する。

 トランプ大統領が唱えるアメリカ・ファーストとは、今まで世界中から物を買ってきたアメリカが「物を売る側」にシフトするとの宣言である。とすればドルが強くなることはあり得ない。しかしながら世界から資金を集める必要があれば株価は釣り上げてくることだろう。更にはアメリカが覇権から一歩退くことで東アジアと中東に混乱が生じるに違いない。

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