2012-06-24

「Gun Yourself」バンクシー作


反逆のグラフィティ・アーティスト(落書き芸術家)「バンクシー(Banksy)」

 ・「Gun Yourself」バンクシー作

Banksy?

 さしずめ「因果応報」という名の銃だ。バンクシーの反逆性は孔子に通じている。

 子貢問うて曰く、「一言にして終身之を行うべき者あるか」。子曰く、「それ恕か。己の欲せざる所、人に施すことなかれ」。(衛霊公第十五より)

【現代語訳】
 子貢が質問して言うには、「死ぬまで行うべきような、ひとつの言葉はありますか」。孔子が答えて言うには、「それは恕(じょ/思いやりのこと)だ。自分がして欲しくないことを、人にしてはならない」。

【「真実を求めて」を参照した】

己の欲せざる所は人に施す勿れ
衛霊公第十五2

 バンクシーはものの見事に「恕」を描いている。その痛烈な皮肉、辛辣なユーモアが街角に現れると、拡声器の絶叫よりも強い印象を与える。果たして我が国の「笑い」が、権力や暴力を嘲笑するほどの高みに達しているであろうか?

論語 (岩波文庫 青202-1)

岩波書店
売り上げランキング: 1,673

2012-06-23

ドン・ウィンズロウ


 1冊読了。

 33冊目『犬の力(下)』ドン・ウィンズロウ:東江一紀〈あがりえ・かずき〉訳(角川文庫、2009年)/上巻で受けた印象は変わらず。物語の展開は明らかに失速している。ミステリにおけるプロパガンダ本は意外と多い。私が長らくユダヤ人に肩入れしてきたのも、モサドものを始めとするミステリの影響が大きい。ま、半世紀近くも生きていれば、もう簡単には騙されないけどね。

Where the Hell is Matt? 2012


 マットが帰ってきた。自分たちの正義を振りかざす宗教よりも、よっぽど立派な行動だと思う。歌やダンスには一定の規則性はあるものの、人間にとって本源的な自由と歓びが横溢(おういつ)している。


◎Where the Hell is Matt? (2008)

2012-06-22

ドン・ウィンズロウ


 1冊読了。

 32冊目『犬の力(上)』ドン・ウィンズロウ:東江一紀〈あがりえ・かずき〉訳(角川文庫、2009年)/これは「文章巧者が描く邪悪なプロパガンダ本」である。評価の高いミステリだけに私は満を持して読んだ。手法としてはテレビドラマ『24 -TWENTY FOUR-』と同じで、部分的に真実を盛り込んで、アメリカの正義を体現する人物に共感させるような筋書きとなっている。ドン・ウィンズロウの『ストリート・キッズ』を読んだのは20年前のこと。警句のように引き締まった文章を散りばめながらも、登場人物は一様に平板だ。何といっても主役のアート・ケラーが最悪である。大体、「アート」って名前をつけるセンスを疑いたくなる。ま、出来損ないの劉備玄徳みたいな性格だ。メキシコのドラッグ戦争をギャングの抗争に矮小化する意図を感じた。中南米の暴力には全てアメリカが関与している。その事実から目を逸(そ)らさせる効果が本書にはある。

東祥三「増税は公約になく、それをやろうとする方が造反ではないか」