2014-01-16

飼い犬だとみくびっていたら実は眠れる獅子であった/『黒い手帖 創価学会「日本占領計画」の全記録』矢野絢也


『折伏 創価学会の思想と行動』鶴見俊輔、森秀人、柳田邦夫、しまねきよし

 ・飼い犬だとみくびっていたら実は眠れる獅子であった

『「黒い手帖」裁判全記録』矢野絢也
『乱脈経理 創価学会 VS. 国税庁の暗闘ドキュメント』矢野絢也

 矢野絢也は元公明党委員長である。1989年、明電工事件への関与が取り沙汰されて委員長を辞任。1993年には政界から引退し政治評論家に。テレビ番組にもよく登場していた。

 悪い言い方をすれば「創価学会の飼い犬」だ。ただし本書を読むと「番犬」であったことが窺える。創価学会は何を血迷ったか突然番犬を叩いた。飼い主は手を噛(か)まれて「眠れる獅子」であったことに気づいた。ま、そんなところだ。

 私は2008(平成20)年5月12日、半世紀以上にわたり所属してきた創価学会ならびに同会の幹部7名を、東京地方裁判所に民事提訴した。それに先立つ5月1日に私と家内、息子夫妻とその娘3人は創価学会を退会した。
 提訴内容は以下の三つである。
(1)2005(平成17)年5月14日、学会青年部幹部5名が私を威迫して、政治評論家としての活動を中止させた。これは憲法で保障された表現の自由ならびに職業選択の自由を侵す違法な行為である。
(2)同年6月15日、学会幹部3名が私との会談の際、私に自宅を売却して2億円、3億円という莫大な金額の寄付をするよう執拗(しつよう)に強要した。
(3)創価学会は機関紙『聖教新聞』などで、私への誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)記事を継続して掲載した。これは名誉毀損にあたる。
 こうした一連の人権侵害行為を行ったことについて、創価学会および同会の幹部に5500万円の賠償を求めている。

【『黒い手帖 創価学会「日本占領計画」の全記録』矢野絢也〈やの・じゅんや〉(講談社、2009年)以下同】

 教団の体質を象徴する内容と見てよい。そもそも宗教自体が束縛の道具であるゆえ、縛(いまし)めを解いて自由になろうとする者を教団が許すはずもない。これは何も宗教に限った話ではあるまい。濃密な人間関係を基(もと)にしたムラ的コミュニティすべてに共通している。いかがわしい商売でなくとも、ある種の宗教と化している企業やサークルも存在する。

 見逃せないのは多額の寄付を強要している点である。しかも「自宅を売れ」と命じているのだ。

 矢野本人に黒い噂が絶えなかったこととこれとは別問題だ。

 創価学会は日蓮正宗総本山大石寺と二度目の紛争以降、聖教新聞を使って猛烈なキャンペーンを張ってきた。教団がターゲットとして選んだ人物の個人情報をさらし、徹底的な攻撃を加えてきた。そのたびに裁判沙汰を起こしている。創価学会寄りの識者からも問題視された(渡辺武達〈わたなべ・たけさと〉著『聖教新聞の読み方 創価学会・機関紙のエネルギー源を探る』)。

 私は学会が巻き込まれた厄介事(やっかいごと)の処理を、学会首脳から、ほぼすべて依頼され、各方面に対応してきた。それらの多くは、およそ口にできないような内容だったが、「学会を守る」「池田先生を守る」という、当時の生きる目的ともいえる思いが私を動かしていた。
 たとえば、私が関わった代表的な出来事を挙げると、学会による言論出版妨害事件創価学会と共産党との協定、池田大作名誉会長の女性問題を記事にした『月刊ペン』との裁判本山大石寺(たいせきじ)との二度にわたる紛争ルノアール絵画疑惑捨て金庫事件、国税庁による学会への税務調査などである。
 それ以外にも諸々の事件の顛末(てんまつ)が手帖には記載されている。そのような極秘資料が外部に流出すれば、学会のみならず、政界など多方面に多大な迷惑をかけるだろう。
 多くの事件は既に時効を迎えている。今さら、それを蒸(む)し返し、真相を暴露したところで、多くの人が傷つくだけである。私の心積もりとしては、世間に口外せずに、墓場まで持っていこうと思っていた。ところが、学会はそうは考えず、このような物騒(ぶっそう)な極秘メモを持つ私を危険人物とみなしたようである。

 散々汚れ仕事をやらされた結果がこのザマだった。矢野が告訴に踏み切るのも当然だろう。

 創価学会は青年部幹部を使って矢野を脅迫し、公明党OBを使って矢野から100冊を超える「黒い手帖」を取り上げた。まるで暴力団のような手口である。本丸には傷つかないよう細心の注意を払っている。使い走りにするのは「いつでも切って捨てる」ことのできる連中だ。

 創価学会の会長にさしたる権限はない。とすればやはり池田大作の意向で矢野を封じ込めようとしたのだろう。

 自分自身の神格化のために邪魔者は葬る――そんな魂胆が見えてくる。先日、北朝鮮で処刑された張成沢〈チャン・ソンテク〉の姿が矢野と重なる。

 尚、矢野絢也はその後も立て続けに書籍を上梓しているが、『乱脈経理 創価学会vs.国税庁の暗闘ドキュメント』が一番お薦めできる。

黒い手帖 創価学会「日本占領計画」の全記録闇の流れ 矢野絢也メモ (講談社プラスアルファ文庫)私が愛した池田大作 「虚飾の王」との五〇年乱脈経理 創価学会VS.国税庁の暗闘ドキュメント

矢野絢也

2014-01-15

苫米地英人、藤原伊織


 2冊読了。

 1冊目『原発洗脳 アメリカに支配される日本の原子力』苫米地英人〈とまべち・ひでと〉(日本文芸社、2013年)/昨年読んだのだが書き忘れていた。良書。何だかんだ言っても苫米地は知らない事実を教えてくれる。しかも合理的思考で。日本の原発はアメリカの古い技術で事実上、日本の国土が原発の住宅展示場状態になっている。しかも日本が原発をつくり、輸出するごとにパテント料はアメリカがせしめるビジネスモデル。飼い犬ニッポンの現状がよく理解できる。原発本に関しては安冨歩〈やすとみ・あゆむ〉著『原発危機と「東大話法」 傍観者の論理・欺瞞の言語』、今西憲之+週刊朝日編集部『原子力ムラの陰謀 機密ファイルが暴く闇』を併読せよ。更に深く知りたい人は、村田光平著『原子力と日本病』、ステファニー・クック著『原子力 その隠蔽された真実 人の手に負えない核エネルギーの70年史』を読むこと。

 2冊目『雪が降る』藤原伊織(講談社、1998年/講談社文庫、2001年)/20代で読んだ時は何とも思わなかった。30代後半で読んだ時は心を撃ち抜かれた。50になって読むと拙さが目についた。黒川博行の「解説」も薄気味悪い。作家の解説は私(わたくし)を語るものが多すぎる。仲間内の話を公の場でするな。本書を読む場合は心して「大人の童話」であることを弁えよ。

『新訂 字統 [普及版]』白川静(平凡社、2007年)

新訂 字統

 白川静字書三部作として巷間親しまれている『字統』『字訓』『字通』。第一作の『字統』は、50年におよぶ文字研究の成果を一般に提供することを企図した著者が、6800余の漢字を取り上げて編んだ字源辞典です。初版刊行は1984年8月、著者74歳のときのことでした。それから20年、今回の『字統 第二版』は約200の見出し字を追加し、この間の白川氏の研究成果をあますところなく加筆して、より読みやすく引きやすくなりました。日々の生活の中で、漢字が本来もつ豊かな表現力を発揮するに有用な書となることを願ってやみません。



常用字解 第二版』を買おうと思っていたのだが、常用漢字2136字に対して、2倍以上の6800余を収録しているのだからコストパフォーマンスは高いだろう。

字統