・
『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン
・
『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ
・『
ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
・『
動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』テンプル・グランディン、キャサリン・ジョンソン
・『
人間原理の宇宙論 人間は宇宙の中心か』松田卓也
・
全地球史アトラス
・
『2045年問題 コンピュータが人類を超える日』松田卓也
・
指数関数的な加速度とシンギュラリティ(特異点)
・
レイ・カーツワイルが描く衝撃的な未来図
・アルゴリズムが人間の知性を超える
・
意識と肉体を切り離して考えることで、人と社会は進化する!?【川上量生×堀江貴文】
・
『AIは人類を駆逐するのか? 自律(オートノミー)世界の到来』太田裕朗
・
『トランセンデンス』ウォーリー・フィスター監督
・
『LUCY/ルーシー』リュック・ベッソン監督、脚本
・
『Beyond Human 超人類の時代へ 今、医療テクノロジーの最先端で』イブ・ヘロルド
・
『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』ケヴィン・ケリー
・
『養老孟司の人間科学講義』養老孟司
・
『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ
・
『文明が不幸をもたらす 病んだ社会の起源』クリストファー・ライアン
・
『われわれは仮想世界を生きている AI社会のその先の未来を描く「シミュレーション仮説」』リズワン・バーク
・
情報とアルゴリズム
まず、われわれが道具を作り、次は道具がわれわれを作る。
──マーシャル・マクルーハン
【『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』レイ・カーツワイル:井上健〈いのうえ・けん〉監訳、小野木明恵〈おのき・あきえ〉、野中香方子〈のなか・きょうこ〉、福田実〈ふくだ・みのる〉訳(NHK出版、2007年)以下同】
出たよ、
マクルーハンが。本当にこの親父はもの思わせぶりな言葉が巧いよな。道具とはコンピュータである。
われわれの起源を遡ると、情報が基本的な構造で表されている状態に行き着く。物質とエネルギーのパターンがそうだ。量子重力理論という最近の理論では、時空は、離散した量子、つまり本質的には情報の断片に分解されると言われている。物質とエネルギーの性質が究極的にはデジタルなのかアナログなのかという議論があるが、どう決着するにせよ、原子の構造には離散した情報が保存され表現されていることは確実にわかっている。
波であれば連続的で、量子であれば離散的になる。既に時間も長さも最小単位が存在する(
プランク時間、
プランク長)。
・
生い立ちから「ディジタル」…「量子論」
生物の知能進化率と、テクノロジーの進化率を比較すると、もっとも進んだ哺乳類では、10万年ごとに脳の容量を約16ミリリットル(1立法インチ)増やしてきたのに対し、コンピュータの計算能力は、今現在、毎年おおよそ2倍になっている。
指数関数的に技術革新が行われることで進化スピードを凌駕するのだ。
これから数十年先、第5のエポックにおいて特異点が始まる。人間の脳に蓄積された大量の知識と、人間が作りだしたテクノロジーがもついっそう優れた能力と、その進化速度、知識を共有する力とが融合して、そこに到達するのだ。エポック5では、100兆の極端に遅い結合(シナプス)しかない人間の脳の限界を、人間と機械が統合された文明によって超越することができる。
特異点に至れば、人類が長年悩まされてきた問題が解決され、創造力は格段に高まる。進化が授けてくれた知能は損なわれることなくさらに強化され、生物進化では避けられない限界を乗り越えることになる。しかし、特異点においては、破壊的な性向にまかせて行動する力も増幅されてしまう。特異点にはさまざまな面があるのだ。
アルゴリズムが人間の知性を超える瞬間だ。このあたりについてはクリストファー・スタイナー著『
アルゴリズムが世界を支配する』が詳しい。人間がコンピュータに依存するというよりも、人間とコンピュータが完全に融合する時代が訪れる。
今のところ、光速が、情報伝達の限界を定める要因とされている。この制限を回避することは、確かにあまり現実的ではないが、なんらかの方法で乗り越えることができるかもしれないと思わせる手がかりはある。もしもわずかでも光速の限界から逃れることができれば、ついには、超光速の能力を駆使できるようになるだろう。われわれの文明が、宇宙のすみずみにまで創造性と知能を浸透させることが、早くできるか、それともゆっくりとしかできないかは、光速の制限がどれだけゆるぎないものかどうかにかかっている。
これが量子コンピュータの最優先課題だ。
量子もつれが利用できれば光速を超えることが可能だ。
この事象のあとにはなにがくるのだろう? 人間の知能を超えたものが進歩を導くのなら、その速度は格段に速くなる。そのうえ、その進歩の中に、さらに知能の高い存在が生みだされる可能性だってないわけではない。それも、もっと短い期間のうちに。これとぴったり重なり合う事例が、過去の進化の中にある。動物には、問題に適応し、創意工夫をする能力がある。しかし、たいていは自然淘汰の進み方のほうが速い。言うなれば、自然淘汰は世界のシミュレーションそのものであり、自然界の進化スピードは自然淘汰のスピードを超えることができない。一方、人間には、世界を内面化して、頭の中で「こうなったら、どうなるだろう?」と考える能力がある。つまり、自然淘汰よりも何千倍も速く、たくさんの問題を解くことができる。シミュレーションをさらに高速に実行する手段を作りあげた人間は、人間と下等動物とがまったく違うのと同様に、われわれの過去とは根本的に異なる時代へと突入しつつある。人間の視点からすると、この変化は、ほとんど一瞬のうちにこれまでの法則を全て破壊し、制御がほとんど不可能なくらいの指数関数的な暴走に向かっているに等しい。
──ヴァーナー・ヴィンジ「テクノロジーの特異点」(1993年)
たぶんエリートと労働者に二分される世界が出現することだろう。いい悪いではなく役割分担として。その時、労働者はエリートが考えていることを理解できなくなっているに違いない。驚くべき知の淘汰が行われると想像する。
超インテリジェント・マシンとは、どれほど賢い人間の知的活動をも全て上回るほどの機械であるのだとしよう。機械の設計も、知的な活動のひとつなので、超インテリジェント・マシンなら、さらに高度な機械を設計することができるだろう。そうなると、間違いなく「知能の爆発」が起こり、人間の知性ははるか後方に取り残される。したがって、人間は、超インテリジェント・マシンを最初の1台だけ発明すれば、あとはもうなにも作る必要はない。
──アーヴィング・ジョン・グッド「超インテリジェント・マシン1号機についての考察」(1965年)
万能
チューリングマシンの誕生だ。仮にコンピュータが自我を獲得したとしよう(「
心にかけられたる者」アイザック・アシモフ)。マシンの寿命が近づけば自我もろともコピーすることが可能だ。そう。コンピュータは永遠の生命を保てるのだ。ここに至り、光速と同様に人間の寿命がイノベーションの急所であることが理解できよう。
自我は個々人に特有のアルゴリズムと考えることができる。そんな普遍性のないアルゴリズムはノイズのような代物だろう。コンピュータが人類を凌駕した時、真実の人間性が問われる。