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『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓
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『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓(2010年)
・湖東京至の消費税批判
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付加価値税(消費税)は物価
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『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』小室直樹
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消費税が国民を殺す/『消費税のカラクリ』斎藤貴男
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消費税率を上げても税収は増えない
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【日本の税収】は、消費税を3%から5%に上げた平成9年以降、減収の一途
湖東京至〈ことう・きょうじ〉は静岡大学人文学部法学科教授、関東学院大学法学部教授、関東学院大学法科大学院教授を務め現在は税理士。輸出戻し税を「還付金」と指摘したことで広く知られるようになった。岩本は既に『
バブルの死角 日本人が損するカラクリ』(2013年)で湖東と同じ主張をしているので何らかのつながりはあったのだろう。更に消費税をテーマにした『
アメリカは日本の消費税を許さない 通貨戦争で読み解く世界経済』(2014年)を著している。
私にとっては一筋縄ではゆかない問題のため、湖東の主張と批判を併せて紹介するにとどめる。
湖東●私が写しを持っているのは2010年度版なのでちょっと古いのですが、これを見るとたしかに10年度時点で日本国の「負債」は1000兆円弱、国債発行高は752兆円あります。しかし一方で日本には「資産」もあります。これは預金のほか株や出資金、国有地などの固定資産などさまざまなものがありますが、この合計額が1073兆円あるのです。しかもこの年は正味財産(資産としての積極財産と、負債としての消費財産との差額)がプラス36兆円あるんですね。だから借金大国ではなくて、ひと様からお金を借りて株を買っている状態。そういう国ですから、ゆとりがあると言えばある。
【『あなたの知らない日本経済のカラクリ 対談 この人に聞きたい!日本経済の憂鬱と再生への道』岩本沙弓(自由国民社、2014年)】
国債発行額は1947年(昭和22年)~1964年(昭和39年)まではゼロ。大まかな推移は以下の通りだ。
1965年 1972億円
1966年 6656億円
1971年 1兆1871億円
1975年 5兆6961億円
1978年 11兆3066億円
1985年 21兆2653億円
1998年 76兆4310億円
2001年 133兆2127億円
2005年 165兆379億円
2014年 181兆5388億円
「
国債発行額の推移(実績ベース)」(PDF)を参照した。湖東のデータが何を元にしているのかわからない。Wikipediaの「
国債残高の推移」を見ると2010年の国債残高は900兆円弱となっている。
「実績ベース」があるなら「名目ベース」もありそうなものだが見つけられず。以下のデータでは昭和30~39年も発行されている。
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国債残高税収比率
まあ、こんな感じでとにかく税金のことはわかりにくいし、政府や官僚は意図的にわかりにくくしていると考えざるを得ない。響堂雪乃〈きょうどう・ゆきの〉は「国家予算とはすなわちブラックボックスであり、我々のイデオロギーとは旧ソビエトを凌ぐ官僚統制主義に他なりません」と指摘する(
『独りファシズム つまり生命は資本に翻弄され続けるのか?』)。
日本以外では「付加価値税」という税を、なぜか日本だけが「消費税」と命名している。直訳すれば世界で通用せず、反対に別の税だと受け止められると湖東は指摘する。
以下要約――付加価値税という税を最初に考えたのはアメリカの
カール・シャウプであるとされる。「
シャウプ勧告」のシャウプだ。アメリカではいったん成立したものの1954年に廃案となる。フランスはこれを「間接税」だと無理矢理定義して導入した。日本やドイツに押されて輸出を伸ばすことができなかったフランスは輸出企業に対して補助金で保護してきた。しかし1948年に締結されたGATT(関税および貿易に関する一般協定)で輸出企業に対する補助金が禁じられる。
湖東●そこでフランスがルールの盲点を突くような形で考えたのが、本来直接税である付加価値税を間接税に仕立て上げて導入することでした。税を転嫁できないことが明らかな輸出品は免税とし、仕入段階でかかったとされる税金に対しては、後で国が戻してやる。その「還付金」を、事実上の補助金にするという方法を思いついたのです。
岩本●ほとんど知られていないことだと思いますが、消費税には輸出企業だけが受け取れる「還付金」という制度がある、ということですね。
湖東●あるんです。たとえばここに年間売上が1000億円の企業があり、さらにこの1000億円の売上高のうち500億円が国内販売で、500億円が輸出販売。これに対する仕入が国内分と輸出分を合わせて800億円だったとします。
このモデルケースでは、国内販売に対してかかる消費税は500億円×5%で25億円であるのに対し、輸出販売にかかる消費税は500億円×0でゼロ。したがって全売上にかかる消費税は、国内販売分の25億円だけです。
一方で控除できる消費税は年間仕入額の800億円×5%で40億円になりますから、差し引き15億円のマイナスになります。これが税務署から輸出企業に還付されるのです。
私の調査では、日本全体で毎年3兆円ほどが還付されています。
岩本●仮にその会社の販売比率が、国内3に対し輸出7だとすれば、消費税は300億円×5%で15億円。還付される額は25億円になりますから、売上に締める輸出販売の割合が高ければ高いほど還付金が増える仕組みですね。
湖東●そうです。ですから日本の巨大輸出企業を見るとほとんどが多額の還付金を受け取っており、消費税を1円も納めていません。
これが問題だ。国税庁は「消費税とは、消費一般に広く公平に課税する間接税です」と定義している(
「消費税はどんな仕組み?」PDF)。間接税であれば事業者負担はない。これに対して湖東は中小企業が消費税分を価格に上乗せすることができないケースや、大企業が中小企業に消費税分を値引きさせるケースを挙げている。こうなるとお手上げだ。ってなわけで以下に湖東批判を引用する。
消費税はすべて消費者に転嫁されるので、実は税率がいくらであっても、企業の付加価値は変わらない。(中略)企業は、受け取った消費税分から支払った消費税分を引いた金額を納税(マイナスになれば還付)するため、還付されたからといって収益に変化はない。(高橋洋一:「輸出戻し税は大企業の恩恵」の嘘 消費増税論議の障害になる)
しかし、それと輸出免税還付金とは別のハナシであります。なんとなれば、トヨタの値引き圧力にあらがうことができずに、60万円で売りたいところ50万円にしなさいという圧力に涙を呑んで受け入れても、実務的には消費税は伝票に記入せざるをえません。(雑想庵の破れた障子:消費税の問題点とされる “輸出戻し税” について考える(4)無理を承知の上で、あえて主張している…。)
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消費税の問題点とされる “輸出戻し税” について考える(その1)消費税額の2割強が還付されている。
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消費税の問題点とされる “輸出戻し税” について考える(その2)豊田税務署は “TOYOTA税務署” なのか?
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消費税の問題点とされる “輸出戻し税” について考える(3)直感的に正しく見えることは、必ずしも真ならず。
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消費税の問題点とされる “輸出戻し税” について考える(5)消費税の増税は、逆に税収を減らす…。
以下のまとめもわかりやすい。
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「輸出戻し税」で本当に大企業はボロ儲けなの?(仮) - Togetterまとめ
こうして考えると、湖東の分が悪いように思う。次回は富岡幸雄(中央大学名誉教授)との対談を紹介する予定だ。