・『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓
・『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓
・湖東京至の消費税批判
・付加価値税(消費税)は物価
富岡幸雄(中央大学名誉教授)は中曽根首相が売上税を導入しようと目論んだ時に、体を張って戦った人物。元国税実査官。月刊『文藝春秋』の1987年3月号に寄稿し、三菱商事を筆頭に利益がありながら1円も税金を支払っていない企業100社の名前を列挙し糾弾した。売上税は頓挫した。
岩本●結局8%、10%に消費税が上がると、スタグフレーション(不況でありながら物価上昇が続く状態)にもなりかねません。
今、円安で物価は上がっているけれど、所得は上がっていません。上がったところで一時金、ボーナスだけで、固定給までは上げようとしていない。
富岡●そのことは、日本の大企業の経営姿勢に問題があると同時に、会社法との関係があります。【会社法は年次改革要望書、つまりアメリカの要求によってできた】もの。だから日本の経営者は会社法の施行後、経営のあり方をアメリカナイズした。短期利益、株主利益中心主義です。利益の配当という制度が剰余金の配当制度に変わり、利益がなくても株主には配当をすることができるのです。
岩本●そのしわ寄せが従業員に来ていますよね。付加価値の配分が歪んでしまって、配当がものすごく多くなる一方で労働への分配が減るという現象が起きています。
【『あなたの知らない日本経済のカラクリ 対談 この人に聞きたい!日本経済の憂鬱と再生への道』岩本沙弓(自由国民社、2014年)以下同】
年次改革要望書については関岡英之著『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』が詳しい。
流れとしては、日米構造協議(1989年)→年次改革要望書(1994年)→日米経済調和対話(2011年)と変遷しているが、日本改造プログラムであることに変わりはない。非関税障壁を取り除くために日本社会をアメリカナイズすることが目的だ。で、規制緩和をしてもアメリカ製品が日本で売れないため、遂にTPPへと舵を切ったわけだ。多国間の協定となれば拘束力が強くなる。
富岡●繰り返しますが、【付加価値税というのは税金じゃない。物価、物の値段】なの。
人間は物を買わなければ生きていけないんですから、付加価値税は「生きていること」にかかる税金です。人間と家畜、生きとし生けるものにかかる「空気税」みたいなものです。生きることそれ自体を税の対象物とするのは、あってはならないことです。
岩本●しかし先生、私自身も最初にそう言われてもピンとこなかったように、消費税が物価であるということを一般の国民はなかなか理解できないのではないかと思うんですが。
富岡●単純に考えていいんですよ。だってお腹が空いたら駅の売店でパンを買うでしょう。それが本来1個100円だとしたら、それが105円になる。105円払わないとパンは食えない。それが物価というものです。だから消費税は、消費者を絶対に逃れられない鉄の鎖に縛りつける税金。悪魔の仕組みなんです。
これはわかりやすい。消費税を間接税と意義づけるところに国税庁の欺瞞がある。
・消費税は、たばこ税と同じ「間接税」なのか?法人税と同じ「直接税」なのか?
・消費税は間接税なのか
富岡●トランスファープライシング。日本の親会社が海外関連企業と国際取引する価格を調整することで、所得を海外移転することです。
移転価格操作とタックスヘイブンを結びつけて悪用すれば、税金なんてほとんどゼロにできてしまうテクニックがある。
簡単に説明するとね、日本にAというメーカーがあるとします。A社は税金の安いカリブ海などのタックスヘイブンに海外子会社Bをつくって、そのB社に普通よりも安い値段――たとえば本来の卸価格が80円だとすれば、70円などで売る。そしてB社はアメリカにあるもうひとつの子会社である販売会社のC社に100円で売る。実際にアメリカで売るのはC社です。
これをすることで、日本にあるA社は利益を減らすけれど、タックスヘイブンにあるB社に利益が集中する。要するに、会社を3つつくれば、税金なんてすぐなくなっちゃうの。
タックスヘイブン(租税回避地)に関しては次の3冊がオススメ。
『マネーロンダリング入門 国際金融詐欺からテロ資金まで』橘玲
『タックス・ヘイブン 逃げていく税金』志賀櫻
『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』ニコラス・シャクソン
ただしマネーロンダリングについてはアメリカが法的規制をしたため、ブラックマネーと判断されれば米国内の銀行口座は凍結され、彼らと取引のある金融機関も米国内での業務を停止させられる。こうなるとドル決済の取引がほぼ不可能となる。
大局的な歴史観に立てば、やはりサブプライム・ショック(2007年)~リーマン・ショック(2008年)で金融をメインとする資本主義は衰亡へと向かいつつある。既に新自由主義は旗を下ろし、国家による保護主義が台頭している。
不公平な税制が改善される見込みはない。どうせなら全部直接税にしてはどうか? 正しい税制が敷かれていれば、税金を支払うことに企業や国民は誇りを抱くはずだ。
尚、湖東同様、富岡の近著『税金を払わない巨大企業』に対する批判も多いので一つだけ紹介しよう。
・巨大企業も税金を払っています。 - すらすら日記。Ver2