2012-08-01

死も覚悟…「助かった」 悩み全般 専門家がよりそう電話


「つらい」「さみしい」「死ぬしかない」――。支えを求める悲痛な声が、一般社団法人社会的包摂サポートセンター(東京)の電話相談「よりそいホットライン」=0120-279(つなぐ)-338(ささえる)=に殺到している。どんな悩みでも24時間無料で受け付け、全国からの電話は250万コールに及ぶ。1日3万コールかかる日もあり、30回に1回しかつながらない状態だ。(大野孝志)

 一つの電話窓口で貧困や失業、いじめなど、あらゆる悩みを受け付けるワンストップ型。昨秋に東北で始め、東日本大震災から1年を機に今年3月から全国に拡大。38の拠点を置き、相談員は生活困窮者の支援や消費者問題などに取り組む1300人以上が交代で務める。一つの電話に二人が対応し、専門分野の知識と経験を生かして解決に導く。

「話を聞いてくれる程度かな、と思っていた。生活保護の申請に同行までしてくれるとは思わなかった」。都内の40代の男性は5月、ホットラインに電話した。

 夜勤のある派遣の仕事を、体力が続かずに昨年辞め、日雇いの仕事で食いつないだ。5月に求人がなくなり、生活費も食べ物も尽きた。生活保護の不正受給の報道で「自分も健康だから申請してもだめだろう。死ぬしかない」と思い詰めた。

 所持金は2円。3日間食べていなかった。暇つぶしに訪れた図書館のパソコンでインターネットを見て、ホットラインを知った。携帯から電話し、奇跡的に2回でつながった。父と死別し、遠方の母と妹とは10年以上音信不通。誰にも話したことのない身の上を、相談員に明かした。

 相談員は「直接支援する団体から折り返し電話する」。翌日、全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会の本多良男事務局長と会い、生活保護を申請した。「制度がよく分からず一人では申請できなかった。相談して助かった」。男性は最近、仕事が見つかった。

 配置転換された仕事が体力的にきつくなり、退職した40代の男性は貯金で食いつないだが、今年春に底をついた。両親、兄と死別し、姉とは疎遠。死ぬつもりでマンションを引き払い、故郷に戻って野宿を始めた。

 死に場所探しとハローワーク通いを繰り返した。「結局は生きようとしているんだよね」。再会した姉から「なんとかなるかも」とホットラインを教えられた。10分ほどかけ直し続けてようやくつながった。経緯を話すとその日のうちに本多事務局長から電話があり、生活保護申請に同行してくれた。

 現在は低額宿泊所に住み、仕事を探している。「困窮は自分の運命と思い込んでいた。電話しなかったら、私は今ここにいない」

東京新聞 2012-08-01 朝刊

名前のない悲劇/『終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ』木村元彦、『アラブ、祈りとしての文学』岡真理


 キーボードを一心不乱に叩きながら彼女は語る。
「一番大きな問題は私たちのこの悲劇には名前がついていないことです。世界の注目どころか、国内でも無視され切り捨てられている」
 名前さえもついていない問題。確かにコソボ難民という言い方をすれば、ほとんどの外国人はアルバニア系住民のことを指すと思うだろう。

【『終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ』木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(集英社新書、2005年)】

 名前のない悲劇とは現在進行形の悲劇を意味する。終わらぬ惨禍は歴史として締め括ることができない。

 人間の言葉は名詞から始まったと考えられている。ヘレン・ケラーが最初に発した言葉は「ウォーター」であった。名は体を表す。存在論であろうと唯名論であろうと名前のないものは実在を認められない。

 人類史上において名前のない最大の悲劇といえば、イスラエルによるパレスチナ略奪である。第二次世界大戦のどさくさに紛れて、ロスチャイルド家が世界中のユダヤ人をパレスチナに移動させた。実に1948年からいまだに続く悲劇だ。

 世界から忘れ去られ、苦難に喘ぐ人々がもっとも必要としているもの、言い換えるならば、世界に自らの存在を書き込み、苦難から解放されるために致命的に必要とされるもの、それは、「イメージ」である。他者に対する私たちの人間的共感は、他者への想像力によって可能になるが、その私たちの想像力を可能にするのが「イメージ」であるからだ。逆に言えば、「イメージ」が決定的に存在しないということは、想像を働かせるよすがもないということだ。

【『アラブ、祈りとしての文学』岡真理(みすず書房、2008年)】

 岡真理の指摘がシオニズムの政治的意図を鋭く射抜く。電波や活字に乗らない事件は我々にとって存在しないも同然だ。ルワンダ大虐殺も当初は報じられなかった。海外からのニュースを取捨選択するのは西側メディアであることを我々はきちんと弁える必要がある。

終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ (集英社新書)  彼女の「正しい」名前とは何か―第三世界フェミニズムの思想 記憶/物語 (思考のフロンティア)

バルカンのホスピタリティ/『終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ』木村元彦
自爆せざるを得ないパレスチナの情況/『アラブ、祈りとしての文学』岡真理

2012-07-31

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