2012-10-29

宮城谷昌光


 1冊読了。

 63冊目『奇貨居くべし 天命篇』(中央公論新社、2001年/中公文庫、2002年)/6年に及ぶ連載を5日ほどで読んでしまうのだから、こんな贅沢はないだろう。一昨日、1章だけ残して閉じた。読み終えるのがもったいなかったからだ。敬愛する人物の長命を祈るような気持ちが芽生えたほどである。宮城谷の作品は主役が歴史であるため、常に最終巻は淡く時の彼方に融(と)けてゆく。呂不韋〈りょ・ふい〉は吉川三国志の劉備玄徳と似たタイプの人物像となっているが、目の前に迫ってくる迫力が全く異質だ。寛容とは人を容れ、声を容れること。孟嘗君〈もうしょうくん〉は武功でもって戦乱を鎮(しず)めたが、呂不韋は更に民主主義まで展望していた。道家、恐るべし。

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