隠れた傑作である。ただし前半だけ。ジェラルド・バトラーの超然とした演技が『ショーシャンクの空に』のティム・ロビンスを思わせる。司法制度が人間社会にとって妥協の産物であることがよく理解できる。時に理不尽な判決が下ることは決して珍しくはない。一方に冤罪(えんざい)という落とし穴があり、他方に免罪という罠がある。特にアメリカの場合司法取引が可能なため科罰が軽減される場合がある。
司法制度に穴はつきものであり、裁判は違法性を争うもので正義を明らかにするのが目的ではない。主人公は不毛な司法制度に鉄槌を下す。
担当事件の有罪率96%を誇る検事(ジェイミー・フォックス)を見下ろす絶対的な正義の視点はもちろん神を示唆している。主人公は正しい。正しいからこそ厳罰を下すのだ。保釈申請が下りた際に主人公は豹変し、自らが殺人者であると言明し判事をこき下ろす。司法の過ちをこれほど見事に示した例は他にない。
後半は突然B級作品となる。論理性と整合性を欠き説得力を失ったまま呆気ないラストを迎える。それでも前半の余韻が消え失せることはない。
かつての西部劇は無法者(アウトロー)を退治する正義の味方という筋書きだった。現代のドラマは法の番人をも裁く。いずれにしてもアメリカ人が法律よりも自分の力を頼みとしていることがよくわかる。その正義を実現するために彼らは銃を所持しているのだ。
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