2020-02-14

毀誉褒貶に動かされるな/『原始仏典』中村元


『ブッダの 真理のことば 感興のことば』中村元訳
『ブッダのことば スッタニパータ』中村元訳
『人生と仏教 11 未来をひらく思想 〈仏教の文明観〉』中村元
『ブッダ入門』中村元
『世界の名著1 バラモン教典 原始仏典』長尾雅人責任編集

 ・毀誉褒貶(きよほうへん)に動かされるな

『初期仏教 ブッダの思想をたどる』馬場紀寿

「比丘たちよ、他の人たちがわたしを誹謗しようとも、あるいは法を誹謗しようとも、あるいは僧団を誹謗しようとも、それに対してあなたたちは怒ったり、不機嫌になったり、心を不快にしてはいけあい。比丘たちよ、他の人たちがわたしを誹謗し、あるいは法を誹謗し、あるいは僧団を誹謗して、あなたたちがそれに対して怒り、あるいは快く思わないなら、それはあなたたちの障害となるであろう。(中略)
 比丘たちよ、他の人たちがわたしを賞賛しようとも、あるいは法を賞賛しようとも、あるいは僧団を賞賛しようとも、それに対してあなたたちは喜んだり、うれしく思ったり、心に得意に思ったりしてはならない。比丘たちよ、他の人たちがわたしを賞賛し、あるいは法を賞賛し、あるいは僧団を賞賛して、あなたたちがそれに対して歓び、うれしく思い、得意に思うなら、それはあなたたちの障害となるであろう。

【『原始仏典』中村元〈なかむら・はじめ〉(ちくま学芸文庫、2011年)】

 感情の相対性理論である。ブッダが示すのは中道の生き方だ。瞑想とは怒りや喜びを見る行為である。見るためには離れる必要が生じる。毀誉褒貶(きよほうへん)に動かされるなとの指針は心理的テクニックを教えるものではなく、自身の反応を静かに見つめる内省的な次元でそのメカニズムを解体するとことに目的がある。

 ブッダはかつて存在した。しかしブッダの教えは変遷に変遷を重ねて仏教各種を生んだ。そこにブッダの面影を偲ぶことは可能だろうか? 私が想うブッダはインドを闊歩したブッダと同じであろうか? ひょっとすると脚色を施されたブッダという名のキャラクターを勝手に妄想しているのかもしれない。

 中村元が編んだ仏典シリーズは『ジャータカ全集』(全10巻、春秋社)~『原始仏典』(全7巻、春秋社)~『原始仏典Ⅱ』(全6巻、春秋社)と続く。

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