2016-07-02
カルビー フルグラ 800g
1袋=684円、6袋=4061円はドラッグストアや業務スーパーより安い。賞味期限は7ヶ月弱。プレーンヨーグルトで食べるのが美味しい。甘味が足りない場合はオリゴ糖や黒砂糖を加える。シナモンパウダーもよく合う。
アンシャン・レジームの免税特権/『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』ニコラス・シャクソン
・『マネーロンダリング入門 国際金融詐欺からテロ資金まで』橘玲
・アンシャン・レジームの免税特権
・多国籍企業は国家を愚弄し、超国家的存在となりつつある
・デュポン一族の圧力に屈したデラウェア州
・『タックス・ヘイブン 逃げていく税金』志賀櫻
タックスヘイブンは確かに避難所だ。ただし、一般庶民にとっての避難所ではない。オフショアは、富と権力を持つエリートたちが、コストを負担せずに社会から便益を得る手助けをする事業なのだ。
具体的なイメージを描くとすれば、こういうことになる。あなたが地元のスーパーマーケットでレジに並んでいると、身なりのいい人たちが赤いベルベットのロープの向こうにある「優先」レジをすいすい通り抜けていく。あなたの勘定書きには、彼らの買い物に補助金を出すための多額の「追加料金」も乗せられている。「申し訳ありません」とスーパーマーケットの店長は言う。「でも、われわれには他に方法がないのです。あなたが彼らの勘定を半分負担してくださらなければ、彼らはよそで買い物をするでしょう。早く払ってください」
【『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』ニコラス・シャクソン:藤井清美訳(朝日新聞出版、2012年)】
ノブレス・オブリージュの精神は絶えた。資本主義という世俗化は貴族を完全に滅ぼしてしまったのだろう。
歴史の嘘がまかり通るのはカネの流れを明かしていないためだ。人類の歴史は「戦争の歴史」といってよいが、戦争にはカネが掛かる。武器を購入し人を集めるには融資を必要とする。その負債の流れを辿らなければ歴史の真相は見えてこない。
税とは社会を維持するためのコストであるが、近代では戦費を捻出するために増税が行われた。例えば煙草税は日清戦争後に導入(1989年/明治31年)された(Wikipedia)が、その後は日露戦争の戦費を調達するために完全専売制となった(「煙草税のあゆみ」 煙草印紙の攻防)。そして一度上がった税金が下がることはほぼない。
マネーは高金利を好み税を嫌う。ニクソン・ショック(1971年)でアメリカはドルと金の兌換(だかん)を停止し、ブレトン・ウッズ体制は崩壊した。変動相場制は通貨の相対性理論みたいなものだが、マネーはゴールドの裏づけを失い、中央銀行が保証する紙切れと化した。信用という名の詐欺に等しい。にもかかわらず我々はおカネの価値を疑うことがない。マネーこそは現代の宗教といってよい。
ニコラス・シャクソンの例えはアンシャン・レジームを思わせる。16~18世紀のフランスでは第三身分者(市民や農民)が聖職者(第一身分者)と貴族(第二身分者)を背負っていた。聖職者と貴族には免税特権があったためだ。
格差と困窮を強いられる人々はナポレオンのような英雄と革命を待望する。ある閾値(しきいち)や臨界点に達した時、破壊の風が世界に吹き荒れることだろう。そしてまたぞろ流血が繰り返され、新しい階級が誕生し、富は一旦分配され、時を経て再び偏る。収奪と破壊の輪廻が人類の業(ごう)か。
利子、配当は富裕層に集中する(『エンデの遺言 根源からお金を問うこと』河邑厚徳、グループ現代)。チンパンジーの利益分配(『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール)とどちらが優れているだろうか。格差は人類というコミュニティを確実に崩壊へと誘(いざな)う。平等を失ったコミュニティは暴力の温床となることだろう。
タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!
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ニコラス・シャクソン
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2016-06-29
核廃絶を訴えるアメリカの裏事情/『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘
・『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
・『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
・『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
・沖縄普天間基地は不動産の問題
・核廃絶を訴えるアメリカの裏事情
・『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
・『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年
・『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
・『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
・『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年
・『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
・『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
・『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
・『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
・『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年
・『沈むな!浮上せよ! この底なしの闇の国NIPPONで覚悟を磨いて生きなさい!』池田整治、中丸薫
北朝鮮も、小なりといえども核兵器を持つことによって、政治的な独立あるいは自主性、民族の尊厳を中国からも守れる。だから、そういう政治的な意味を込めて核実験をやったということは間違いない。
しかし、これまた不思議な話で、当時、一般的に北朝鮮の最初の核実験は失敗だったと言われた。我々日本人は核兵器についての知識があまりないものだから、それを信じてきたが、どうもそれは的はずれではないかと考えられます。というのは、北朝鮮はプルトニウム爆弾をつくっているが、これは10年くらいたつと、劣化して処理しなくちゃいけない。今、「核の廃絶」とかみんな言っている。アメリカのオバマ大統領もこの前言いました。あれも、我々はただ単純に、これはいいことだと言っているが、あの裏を見ますと、もうそろそろアメリカの兵器もみんな劣化し始めているんです。これを廃棄するとものすごく金がかかるわけです。したがって、大義名分がないと金が使えない。ロシアも同じことです。だから、「世界から核をなくそう」という名目でどんどん減らしていくことになる。
最近になって、北朝鮮はもっと早い段階で既に核兵器を持っていたんじゃないか、それが劣化してきた。この第1回の核実験というのは、劣化した核兵器処理ではなかったか。だから、あの実験の本質は何かということをもっと究明する必要がある。それから、第2回の核実験は何か。これは恐らく核弾頭を小型化する実験に成功したんじゃないのかとも言われているんです。
【『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘(ヒカルランド、2010年)】
本書は第20回日本トンデモ本大賞(2011年)の候補作品となった。
宇宙人や地底人と交信している中丸薫さんが、北朝鮮に招かれ、北朝鮮は素晴らしい国だと絶賛します。対談相手の菅沼光弘氏もそれに同調し、北朝鮮を批判する日本人を非難したりしています。こういう人が、元公安調査庁調査第二部長だったというのが、いちばんトンデモないことかも……。
【山本弘】
ま、無責任な嘲笑目的の賞なので力を込めて反論するだけ無駄だろう。個人的にはやはり中丸薫の人脈は侮れないと思う。例えば池田大作の場合は創価学会というマンモス教団の組織力・財力・政治力が背景にあるが、中丸の場合は完全に一個人である。それでいて池田を凌駕するほどの国際的な人脈を持っているのだ。
菅沼も中丸やベンジャミン・フルフォードが相手だと、かなり踏み込んだ発言をしている。自らトンデモ系に近づくことで読者に与える衝撃を和(やわ)らげようとしているのだろう。
オバマ大統領はプラハ演説(2009年)で核廃絶を訴え、同年のノーベル平和賞を受賞した。
これが世紀のペテンであったとすればハリウッド映画さながらの演出である。あるいは産業廃棄物をお花畑に変えるようなマジックか。
オバマよ、あんたは核爆弾の中古品を処分する目的で広島を訪れたのか? 平和を売り言葉にして軍産複合体への利益誘導を図ったのか? 利用できると見込んで広島の被爆者をも利用したのか?
美しい言葉は感情を揺さぶる。そして我々は考えることをやめるのだ。オバマ万歳、広島万歳。めでたしめでたしである。
政治は富の分配という本来の仕事を放棄して、明らかに富の誘導へとシフトしている。そもそも世界各国で莫大な量の金融緩和を行っているにもかかわらず、目に見えるバブルが発生していない。緩和マネーはどこへ行ったのか? 企業の内部留保の納まるような金額ではないと思うのだが。格差が拡大するとマネーは流動化を失い、持てる者に富が蓄積されてゆく。消費も低迷し、いつまで経ってもデフレを克服できない。
情報公開と情報判断によって民主政は作動する。奇しくも核兵器廃絶と原発事故を通して我々は情報が秘匿されている事実を知った。そして我々にはロクな判断力がない。討論番組と称する言論プロレスを見て気勢を上げたり溜飲を下げる程度のレベルである。政府の予算を読み解くこともできなければ、法改正の意味も理解できない。本来であればそこにエリート(選良)が求められるわけだが、この国のエリートは官僚となっている(笑)。
結局のところいい意味でも悪い意味でも、なるようにしかならないのだろう。安倍首相が真珠湾を訪問すれば、「アメリカと共に血を流す」覚悟を披瀝せざるを得なくなる。アメリカの軍産複合体にとっては一石二鳥というわけだ。
この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】 (超☆わくわく)
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中丸 薫 菅沼 光弘
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目撃された人々 69
年老いた男が打ちひしがれた姿で歩いていた。猫背が背負っていたリュックには大小様々な罪が入っていたのかもしれない。とぼとぼと歩く足が止まった。男は鉢植えの桔梗に目を留め、じっと見入った。 pic.twitter.com/5rSU6aBVrH
— 小野不一 (@fuitsuono) 2016年6月29日
彼が去ると今度は7~8歳くらいの少女がやってきた。少女は花の中に顔をうずめるようにして香りを嗅いだ。そしてスキップしながらどこかへ行った。わずか30秒ほどの出来事である。美しいものに心を留めることこそが美しい。
— 小野不一 (@fuitsuono) 2016年6月29日
2016-06-28
バイロン・ケイティ、友松圓諦、松田卓也、二間瀬敏史、服部正明、梶山雄一、他
3冊挫折、7冊読了。
『起業のためのお金の教科書』大村大次郎(双葉社、2015年)/起業入門的な内容。融資情報など。あまり参考にならず。これから起業する人向け。
『忘れられた日米関係 ヘレン・ミアーズの問い』御厨貴〈みくりや・たかし〉、小塩和人〈おしお・かずと〉(ちくま新書、1996年)/冒頭から思い上がりが全開である。著者の情操に問題あり。悪い学者の見本だ。内容も大したことはない。普通の論文である。
『オープン・スペース・テクノロジー 5人から1000人が輪になって考えるファシリテーション』ハリソン・オーエン:株式会社ヒューマンバリュー訳(ヒューマンバリュー、2007年)/アイディアとしては非常によいと思う。自分が話し合いたいテーマを貼り出し、小グループで討議する。ただそれだけのことなんだが冗長な説明が続く。もう一つポイントがあって「輪となって座ること」。椅子の並べ方などが図示されている。行き詰まりつつある大企業などでどしどしやるべきだと思う。
85冊目『空の論理「中観」 仏教の思想3』梶山雄一、上山春平(角川書店、1969年/角川文庫ソフィア、1997年)/なかなか難しい。
86冊目『認識と超越「唯識」 仏教の思想4』服部正明、上山春平(角川書店、1970年/角川文庫ソフィア、1997年)/一部飛ばし読み。
87冊目『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密』松田卓也、二間瀬敏史〈ふたませ・としふみ〉(丸善、1987年)/こういうのを読み落としているのだから、私も本を読んでいるようで読んでいない。ブライアン・グリーン著『宇宙を織りなすもの 時間と空間の正体』に通じる内容だ。
88冊目『時間の本質をさぐる 宇宙論的展開』松田卓也、二間瀬敏史〈ふたませ・としふみ〉(講談社現代新書、1990年)/松田、二間瀬コンビの2冊を「時間論」に入れる。
89冊目『心の中はどうなってるの? 役立つ初期仏教法話5』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2007年)/サンガ新書は気合いを入れると1時間程度で読める。スリランカのアヌルッダ大長老が10世紀頃にまとめた『アビダンマッタサンガハ』の第二章の内容を解説する。わかりやすいアビダルマ入門。
90冊目『法句経』友松圓諦〈ともまつ・えんたい〉(講談社学術文庫、1985年/講談社、1975年『真理の詞華集 法句経』改題/全日本真理運動本部、1935年『法句経 仏教聖詩』改題か?)/書誌情報が不明だが序文は昭和10年(1935年)に書かれている。同じダンマパダとは思えない。いろは歌のような訳である。好みが分かれるところだろう。名訳とは思わないが、脳細胞への浸透度が高い。友松訳の存在を私は最近まで知らなかった。
91冊目『タオを生きる あるがままを受け入れる81の言葉』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル:ティム・マクリーン、高岡よし子訳(ダイヤモンド社、2014年)/これは凄い。正真正銘の悟り本だ。バイロン・ケイティは道教を用いているが、私はブッダの教えに対する理解が深まった。尚、「スピリチュアリズム(密教)理解のテキスト」を「悟りとは」に改めた。
2016-06-27
ネレ・ノイハウス、桜部建、上山春平、仲谷正史、小林よしのり、アルボムッレ・スマナサーラ、他
21冊挫折、9冊読了。
『天災と国防』寺田寅彦(講談社学術文庫、2011年)/読みにくい。昨今は文章にスピード感、鋭さ、躍動感のいずれかがないと読む気が起こらず。
『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ:高橋健次訳(草思社、2006年)/二度目の挫折。文章も構成も悪い。
『インターネットは民主主義の敵か』キャス・サンスティーン:石川幸憲訳(毎日新聞社、2003年)/哲学書並みの難解さ。
『すごい!ゼラチンふりかけ健康レシピ』浜内千波、藤野良孝(扶桑社ムック、2013年)/健康本で「すごい」「治る」「絶対」「必ず」は禁句である。ま、インチキ本と思ってよい。食用ゼラチンをゴマなどに混ぜるだけ。フードプロセッサーがあればレパートリーは格段に増える。お肌がきれいになるらしいよ。取り敢えずゼラチンは買った(笑)。
『長くつ下のピッピ』アストリッド・リンドグレーン:大塚勇三訳、桜井誠イラスト(岩波少年文庫、2000年)/ずっと「長靴の下にいるピッピ」だと思い込んでいた。ハイソックスのことだったとはね。読むのが遅すぎた。リンドグレーンはスウェーデンを代表する児童文学作家。
『文明の逆説 危機の時代の人間研究』立花隆(講談社、1976年/講談社文庫、1984年)/文庫化された当時に読んでいる。何となく開いたのだが読めず。正確の悪さを露呈している。興味が勝ち過ぎて抑制を欠いているようにも見える。
『日本国の研究』猪瀬直樹(文藝春秋、1997年/文春文庫、1999年)/この人の文章が苦手だ。
『続・日本国の研究』猪瀬直樹(文藝春秋、1999年/文春文庫、2002年)/正に比べると文章が短くて格段に読みやすい。規制緩和の警鐘を鳴らした書。
『白雪姫には死んでもらう』ネレ・ノイハウス:酒寄進一訳(創元推理文庫、2013年)/シリーズ第4作。酒寄進一の文章に堪(た)えられず。2冊で十分だ。
『脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める』築山節(生活人新書、2006年)/年寄り用の本だった。
『神経とシナプスの科学 現代脳研究の源流』杉晴夫(ブルーバックス、2015年)/ちょっと見当が外れた。専門色が濃い。
『枠組み外しの旅 「個性化」が変える福祉社会』竹端寛(青灯社、2012年)/「叢書 魂の脱植民地化 2」。仲間内でやっている印象が拭えず。こういうのはサブカル色を強く出した方が広範囲にアピールできると思う。
『宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』青木薫(講談社現代新書、2013年)/帯に「科学書の名翻訳で知られる著者初の書き下ろし」とある。誇大広告。盛り過ぎ。私とは相性が悪い。飛ばし読みで読了。人間原理に興味のある人は読む価値あり。
『魂の殺害者 教育における愛という名の迫害』モートン・シャッツマン:岸田秀訳(草思社、1975年/新装版、1994年)/94年の新装版で「気違い」を直していないのは草思社の手抜きだ。教育的虐待の影響を明かした一冊だが、例としては特殊すぎるだろう。統合失調症を調べようと思ったのだが当てが外れた。
『幻の女』ウイリアム・アイリッシュ:稲葉明雄訳(ハヤカワ文庫、1976年)/黒原敏行の新訳(2015年)の評判が悪い。古典的名作であるが今となっては古い。被害妄想的なストーリー。自分のアリバイを証明できる行きずりの女性が幻のように消えてしまう。
『A型の女』マイクル・Z・リューイン:石田善彦訳(ハヤカワ文庫、1991年)/再読。石田善彦の悪文に堪えられず。既に書評済み。
『A型の女』マイクル・Z・リューイン:皆藤幸蔵〈かいとう・こうぞう〉訳(ハヤカワ・ミステリ、1978年)/別訳があったとは露知らず。石田訳よりはずっといい。文章がきちんと頭に入ってくる。ただし文体に切れはない。
『遥かなるセントラルパーク(上)』トム・マクナブ:飯島宏訳(文藝春秋、1984年/文春文庫、2014年)/今頃になって文庫化するってえのあどういう料簡なのかね? 1984年に幼馴染みのムラモトさんから借りて読んだ。日高晤郎がラジオで強く推していた一冊。
『ワールド・カフェ カフェ的会話が未来を創る』アニータ・ブラウン、デイビッド・アイザックス、ワールド・カフェ・コミュニティ:香取一昭、川口大輔訳(ヒューマンバリュー、2007年)/読みにくい。
『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 台湾論』小林よしのり(小学館、2000年)/やはり漫画作品は読めない。活字本の方は読了。本書は台湾でもベストセラーとなっている。
『1日10分で自分を浄化する方法 マインドフルネス瞑想入門』吉田昌生(WAVE出版、2015年)/ダメ本。
76冊目『悪女は自殺しない』ネレ・ノイハウス:酒寄進一訳(創元推理文庫、2015年)/オリヴァー&ピアシリーズの第一作。ドイツ・ミステリ。まあまあ、といったところ。基本的に酒寄進一の訳文が苦手である。オリヴァー(貴族の血を引く上司)とピア(バツイチ女性)に何の魅力も感じない。それでも構成がよいので読了できた。
77冊目『深い疵』ネレ・ノイハウス:酒寄進一訳(創元推理文庫、2012年)/ドイツ版『犬神家の一族』という評価は当たっていない。第二次世界大戦にまでさかのぼる歴史ミステリである。一読の価値あり。日本同様、歴史観がすっきりしない世相を反映しているようにも思える。
78冊目『存在の分析「アビダルマ」 仏教の思想2』桜部建、上山春平(角川書店、1969年/角川文庫ソフィア、1996年)/上山の対談がよい。アビダルマは仏教心理学だが煩瑣すぎて付いてゆけず。それでも勉強になることが多い。
79冊目『触楽入門』テクタイル、仲谷正史、筧康明、三原聡一郎、南澤孝太(朝日出版社、2016年)/触覚に関する珍しい本。文章がまどろっこしいのだが、なかなか面白かった。テクタイルとはチーム名。
80冊目『そば屋はなぜ領収書を出したがらないのか? 領収書からみえてくる企業会計・税金のしくみ』大村大次郎(日本文芸社、2007年)/蕎麦屋からクレームが来て改訂したのが『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』(宝島社新書、2012年)である。要は現金商売ということ。大村本は外れが少ない。
81冊目『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎(角川書店、2015年)/これはオススメ。目から鱗が落ちる世界史の教科書本。
82冊目『李登輝学校の教え』(小学館、2001年/小学館文庫、2003年)/『台湾論』の活字版。何と李登輝と対談している。長らく小林のことを誤解してきたが、彼は感情のバランスが優れている。そして嘘が少ない。これは稀有なことである。佐藤優が欠いているものを私は小林に見出す。
83冊目『苦しみをなくすこと 役立つ初期仏教法話3』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2007年)/再読。サンガ新書のスマナサーラ本を渉猟中である。
84冊目『現代人のための瞑想法 役立つ初期仏教法話4』アルボムッレ・スマナサーラ(サンガ新書、2007年)/一読の価値あり。再読はしないだろう。「慈悲の瞑想」と「ヴィパッサナー瞑想」の具体的なやり方を伝授する。「慈悲の瞑想」を3日間ほど実践してみた。言葉の語呂が悪い。
あと10冊あるのだが、疲れたので明日書くことに。
2016-06-26
『バッハバスターズ』ドン・ドーシー
・『バッハバスターズ』ドン・ドーシー
・『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密』松田卓也、二間瀬敏史
松田卓也はこれとジャック・ルーシェの『Bach to Future』聴きながら『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密』(丸善、1987年)を執筆した。
2016-06-25
「見る」ことは「知る」ことであり「背負う」こと/『写真集 野口健が見た世界 INTO the WORLD』野口健
・『僕の名前は。 アルピニスト野口健の青春』一志治夫
・「見る」ことは「知る」ことであり「背負う」こと
この写真集で最も表現したいのは「現場」の世界。ヒマラヤの高山、アフリカ、そして日本の被災地など、僕はどの現場に行ってもA面とB面があると考えている。パッと目に入る美しい世界がA面ならば、あえて踏み込まなければ見えてこない世界がB面。ときにB面は目を背けたくなるほど残酷だったりする。人の目はどうしてもA面ばかりに向きがちだが、本当の意味で「知る」ということはA面B面のどちらも必要なこと。僕が最も大切にしているのは「見る」ということ。なぜならば「見る」ということは「知る」ということであり、同時に「背負う」ということだから。
【『写真集 野口健が見た世界 INTO the WORLD』野口健(集英社インターナショナル、2013年)】
いい写真集だ。ヒマラヤ、アフリカ、フィリピン・沖縄の遺骨収集、そして東日本大震災の被災地を野口がゆく。中学生や高校生の頃に出会いたかったというのが本音である。目をどこに向けるか、何を見て、どう感じるかで人生は決まる。噂話を垂れ流すテレビよりも、一枚の写真に心を動かされる。
写真には他人の視線に入り込むスリルがある。同じ場所へ行っても見る世界は人によって違う。そして切り取られた瞬間は二度と訪れない時間でもある。人も出来事も来ては去る。風景も時間も来ては去る。諸行は無常を奏でながら一瞬としてとどまることがない。ところが写真は瞬間を永遠に引き延ばす。何という不思議だろう。
野口の公式ブログにも写真は掲載されている。山男らしいダイナミズムを感じさせるものが多い。
2016-06-24
時間論
・キリスト教を知るための書籍
・宗教とは何か?
・悟りとは
・ブッダの教えを学ぶ
・物語の本質
・権威を知るための書籍
・情報とアルゴリズム
・世界史の教科書
・日本の近代史を学ぶ
・虐待と精神障害&発達障害に関する書籍
・時間論
・身体革命
・ミステリ&SF
・必読書リスト
・『人生の短さについて』セネカ:茂手木元蔵訳
・『ゾウの時間ネズミの時間 サイズの生物学』本川達雄
・『「長生き」が地球を滅ぼす 現代人の時間とエネルギー』本川達雄
・『生物にとって時間とは何か』池田清彦
・『スピリチュアリズム』苫米地英人
・『苫米地英人、宇宙を語る』苫米地英人
・『なぜ、脳は神を創ったのか?』苫米地英人
・『死生観を問いなおす』広井良典
・『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密』松田卓也、二間瀬敏史
・『時間の本質をさぐる 宇宙論的展開』松田卓也、二間瀬敏史
・『宇宙を織りなすもの 時間と空間の正体』ブライアン・グリーン
・『運転者 未来を変える過去からの使者』喜多川泰
・『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー 2 クリシュナムルティの手帖より』J・クリシュナムルティ
・『時間の終焉 J・クリシュナムルティ&デヴィッド・ボーム対話集』
2016-06-21
ドゥッカ(苦)とは/『ブッダが説いたこと』ワールポラ・ラーフラ
・『仏陀の真意』企志尚峰
・『仏教と西洋の出会い』フレデリック・ルノワール:今枝由郎訳
・『日常語訳 ダンマパダ ブッダの〈真理の言葉〉』今枝由郎訳
・『ブッダの真理のことば 感興のことば』中村元
・『原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話』アルボムッレ・スマナサーラ
・『原訳「法句経」(ダンマパダ)一日一悟』アルボムッレ・スマナサーラ
・『法句経』友松圓諦
・『法句経講義』友松圓諦
・『阿含経典』増谷文雄編訳
・『『ダンマパダ』全詩解説 仏祖に学ぶひとすじの道』片山一良
・『パーリ語仏典『ダンマパダ』 こころの清流を求めて』ウ・ウィッジャーナンダ大長老監修、北嶋泰観訳注→ダンマパダ(法句経)を学ぶ会
・『日常語訳 新編 スッタニパータ ブッダの〈智恵の言葉〉』今枝由郎訳
・『ブッダのことば スッタニパータ』中村元訳
・『スッタニパータ[釈尊のことば]全現代語訳』荒牧典俊、本庄良文、榎本文雄訳
・『原訳「スッタ・ニパータ」蛇の章』アルボムッレ・スマナサーラ
・『怒らないこと 役立つ初期仏教法話1』アルボムッレ・スマナサーラ
・『慈経 ブッダの「慈しみ」は愛を越える』アルボムッレ・スマナサーラ
・『怒りの無条件降伏 中部教典『ノコギリのたとえ』を読む』アルボムッレ・スマナサーラ
・『小説ブッダ いにしえの道、白い雲』ティク・ナット・ハン
・ものごとが見えれば信仰はなくなる
・筏(いかだ)の喩え
・ドゥッカ(苦)とは
・『無(最高の状態)』鈴木祐
・『ブッダとクリシュナムルティ 人間は変われるか?』J・クリシュナムルティ
・クリシュナムルティ、瞑想を語る
・ブッダの教えを学ぶ
「ではマールンキャプッタよ、私は何を説明したのか。私は、
(1)ドゥッカの本質
(2)ドゥッカの生起
(3)ドゥッカの消滅
(4)ドゥッカの消滅に至る道
を説明した。マールンキャプッタよ、私がなぜ説明したのかというと、それは有益であり、修行に本質的に関わる問題であり、人生における苦しみの消滅に繋がるからである。私はそれゆえに説明したのである」
【『ブッダが説いたこと』ワールポラ・ラーフラ:今枝由郎〈いまえだ・よしろう〉訳(岩波文庫、2016年/原書1959年)】
マールンキャプッタからの形而上学的問いに対してブッダは無記を示し、次に「毒矢の喩え」を説く(『人生と仏教 11 未来をひらく思想 〈仏教の文明観〉』中村元)。続けてブッダは四諦(したい)を確認する。
ドゥッカ
パーリ語(およびサンスクリット語)のドゥッカは、一般的には苦しみ、痛み、悲しみあるいは惨めさを意味し、幸福、快適、あるいは安楽を意味するスカの反対語である。しかし、四つの真理のうちの第一の真理の場合のドゥッカは、ブッダの人生観、世界観を表わしており、より深い哲学的な意味合いがあり、はるかに広い意味で用いられている。確かに第一の真理のドゥッカには、普通の意味での苦しみも含まれているが、それに加えて不完全さ、無常、空しさ、実質のなさなどといったさらに深い意味がある。それゆえに、第一の真理に用いられているドゥッカが含むすべての概念を一語で表わすのは難しい。そうである以上、ドゥッカを苦しみ、痛みといった、便利ではあるが、不十分で誤解を招く訳語に置き換えないほうがいいだろう。
皮相的な現在進行形の苦しみではなく、人生の底を絶えず流れる苦悩が「ドゥッカ」である。ま、「苦しい・空しい・悲しい・寂しい」と覚えておけばよい。哲学的なターム(用語)だと孤独・存在の危うさ・不安となる。人生は思うようにならない――これが「ドゥッカ」である。
ドゥッカの概念は、
(1)普通の意味での苦しみ
(2)ものごとの移ろいによる苦しみ
(3)条件付けられた生起としての苦しみ
の三面から考察することができる。
続けて、
第三の「条件付けられた生起」(訳註:漢訳仏典では「縁起」)としての苦しみという面こそが、「ドゥッカの本質」のもっとも重要な哲学的側面であり、それを理解するのには、一般に存在、個人あるいは「私」とされているものを分析してみる必要がある。
と。(1)は苦しいという実感、(2)は空しさ、(3)は自我の限界性である。生まれる苦しさ、生きる苦しさ、老いる苦しさ、病む苦しさ、死ぬ苦しさがある(四苦)。そして別れる苦しさ(愛別離苦〈あいべつりく〉)、憎む苦しさ(怨憎会苦〈おんぞうえく〉)、手にはらない苦しさ(求不得苦〈ぐふとっく〉)、私が私である苦しさ(五蘊盛苦〈ごうんじょうく〉)がある(合わせて八苦)。
五蘊盛苦がわかりにくいと思われるので解説する。私を私たらしめているものは何か? 事実に基いて観察すると五つの集合要素(五蘊)から成っていることがわかる。
・アルボムッレ・スマナサーラの解説
世界は私というフィルターを通して認識される。私を離れて世界は存在しない。そして五蘊という肉体的・精神的な機能・作用は人によって異なる。つまり同じ物事を見ても人それぞれの反応があり、人それぞれの世界がある。そこに人それぞれの苦しみが生まれる(五蘊盛苦)。すなわち自我に基づく苦しみである。「俺の苦しさがあんたにわかってたまるか」と誰かに向かって言う時、人は自分というストーリー設定の中で理不尽さを感じている。自我という初期設定そのものが人生に不具合をもたらす原因になるというのが五蘊盛苦である。
語源的には五蘊執苦(しゅうく)とするのが正しいのかもしれない。興味(受)・感覚(想)・判断(行)を通して自分らしさ(識)が培われる。私は私にこだわる。アイデンティティ(自己同一性)が揺らぐのは私が無視されるためだ。他人との比較や社会的評価という物語が自我を左右する。国籍という自己規定も見逃せない。アイデンティティには国家が深く関与している(在日韓国・朝鮮人など)。
ブッダは語った。「弟子たちよ、ドゥッカとは何か。それは執着の五集合要素である」と。今枝由郎は五蘊を「五集合要素」と訳す。私は私のものの見方・考え方、つまり「私という意識」に執着する。私は常に正しい。私は間違っていない。私は悪くない――誰もがそう思っている。そう。悪いのは世界だ(笑)。自我を形成するシステムに苦の原因がある。
諸行は無常であり、諸法は無我である。我々はここに苦を見る。苦と感じるゆえに現実が見えなくなるのだ。幸不幸は錯覚に過ぎない。その錯覚から逃げ、錯覚を追い求めるところに苦の本質がある。
2016-06-18
『イーリアス』に意識はなかった/『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ
・『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』テンプル・グランディン
・『死と狂気 死者の発見』渡辺哲夫
・手引き
・唯識における意識
・認識と存在
・「我々は意識を持つ自動人形である」
・『イーリアス』に意識はなかった
・『新版 分裂病と人類』中井久夫
・『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
・『身体感覚で『論語』を読みなおす。 古代中国の文字から』安田登
・『あなたの知らない脳 意識は傍観者である』デイヴィッド・イーグルマン
・『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー
・『AIは人類を駆逐するのか? 自律(オートノミー)世界の到来』太田裕朗
しかし、人間の進化は単純な直線をたどってきたのではない。人類の歴史をひともくと、紀元前3000年頃にひときわ目を引く不思議な慣習が登場する。話し言葉を変容させて、石や粘土板、パピルス(もしくは紙)に小さな印を使って記すようになったのだ、このおかげで、耳で聞くことしかできなかった話し言葉は、目に見えるものともなった。それも、そのとき聞こえる範囲にいた者だけでなく、万人のものとなった。
【『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ:柴田裕之訳(紀伊國屋書店、2005年)以下同】
・イエスの復活~夢で見ることと現実とは同格/『サバイバル宗教論』佐藤優
人類の脳は約240万年前に巨大化した。言葉が生まれた時期については不明だが、7万5000年前には使用されていた証拠があるという(『人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」』三井誠)。近代における情報革命は活版印刷(1455年)~カメラ-写真(1827年)~電信(1830年代)・電話(1876年)~映画(1895年:リュミエール兄弟『ラ・シオタ駅への列車の到着』)と花開く。
その後はラジオ(1906年)、テレビ(1926年)~インターネット(1969年)と続く。尚、カメラ以降の背景にはアレッサンドラ・ボルタによるボルタ電池の発明(1800年)を始めとする電気革命があった。彼の名に因(ちな)んで電圧を「ボルト」と呼ぶ。
アゴ弱り脳膨らむ、遺伝子レベルで裏付け…米チーム
人類の脳が大きくなった原因につながる遺伝子を、米ペンシルベニア大などの研究チームが突き止め、25日付の英科学誌「ネイチャー」に発表する。この遺伝子は本来、類人猿の強じんなアゴの筋肉を作る働きがあったが、人類では偶然、約240万年前に機能を喪失。このため、アゴの筋肉で縛りつけられていた頭の骨が自由になり、脳が大型化するのを可能にしたらしい。
人類は、約250万-200万年前に猿人から原人へ進化し、脳は大きさが猿人の2倍程度になったとされる。今回の遺伝子が機能を失ったのは約240万年前と推定され、原人への進化時期と一致する。
これまでの化石研究などから、頭の骨が膨らんだのは、頭頂部に近い所から続いていた猿人のアゴの筋肉が弱くなり、解放されたためではないかと考えられていたが、この進化過程を遺伝子レベルで裏付ける証拠が見つかったのは初めて。
チンパンジーやゴリラは今も、この遺伝子が働いていて、アゴの筋肉が頭部を広く覆っている。人類は原人に進化した段階で、硬い木の実に加え、軟らかい肉なども食べるようになり、アゴの筋肉の退化も不利にならなかったようだ。
斎藤成也・国立遺伝学研究所教授の話「化石で見られる頭骨の形の変化を、遺伝子レベルで突き止めた成果で興味深い。遺伝子から人類進化を明かす研究はますます活発化するはずだ」
◆人類の脳の進化=約700万-600万年前に誕生した猿人の脳容量は350-500cc程度だったが、現生人類では約1400cにまで大きくなった。脳の大きさを制限していたアゴの筋肉の減少に加え、二足歩行で自由になった両手を使うことで、脳の発達が促されたとする説もある。
【YOMIURI ONLINE 2004年3月25日】
487万年前±23万年に猿人が直立二足歩行を開始する。約260万年前には石器が使用される(『火の賜物 ヒトは料理で進化した』リチャード・ランガム)。脳の大型化は直後の約240万年前である(地球史年表:1000万年前-100万年前)。火の使用を始めた時期については判明していない(初期のヒト属による火の利用)。240万年前から使用したと考えてもよさそうなものだ。火がなければ肉食獣の攻撃を防ぐことはできなかったはずだ。調理同様、言葉もまた炉辺(ろへん)から生まれたと考えられている。
・昆虫食が人類の脳の大型化に貢献した、ワシントン大セントルイス
文字の歴史についてもまだまだ判明していないことが多い。現在、最古とされているのはメソポタミアの楔形(くさびがた)文字とエジプトのヒエログリフである(紀元前3200年頃)。
言葉は空間を超えて複数の人々とのコミュニケーションを可能にし、文字は時間を超えたコミュニケーションを実現した。文字の発明は人間が歴史的存在になったことを意味する。
私の仮説に関連して検討するにあたり、確実な翻訳が行なえる言葉で書かれた人類史上最初の著作は『イーリアス』だ。現代の研究では、血と汗と涙に彩られたこの復讐譚は、吟じ手(アオイドス)と呼ばれる吟遊詩人の伝統によって創り上げられたものと考えられ、その時期は、近年発見されたヒッタイト語の銘板から、作品の中に記された出来事が起こったと推定できる紀元前1230年頃から、作品が文字で記された紀元前900年頃ないし850年頃までの間ではないかとされている。本章では、この叙事詩をきわめて重要な心理学上の記録として取り上げることにする。そして、ここで投げかけるべき問いは『イーリアス』における心とは何か、だ。
答えは、とても平静ではいられないほど興味をかき立てられるものだ。おしなべて、『イーリアス』には意識というものがない。
ホメロス作『イーリアス』。 pic.twitter.com/kXAIzGka2K
— 小野不一 (@fuitsuono) 2016年5月15日
とすると『イーリアス』は壁画であったのだろう。そこにはまだ「物語」がなかった。心は事実を解釈するに至っていなかった。つまり意識は存在しなかったのだ。
・不確実性に耐える/『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』斎藤環解説、まんが水谷緑
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