2016-12-19
2016-12-15
2016-12-13
2016-12-11
2016-12-09
知覧特攻平和会館、工藤美代子、他
3冊挫折、2冊読了。
『ボーダレス・ワールド』大前研一:田口統吾〈たぐち・とうご〉訳(プレジデント社、1990年)/北野幸伯〈きたの・よしのり〉著『プーチン最後の聖戦 ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』で紹介されていた一冊。案の定、北野が引用していた部分が白眉である。国債基軸通貨ドルのメカニズムを見事に解説している。「FX帝国」の章も勉強になった。
『エピクロスの園』アナトール・フランス:大塚幸男訳(岩波文庫、1974年)/新聞のコラムで「大衆」を知った。わずか5行の箴言であるが、これを読むだけでも本書の価値はある。
『容赦なき戦争 太平洋戦争における人種差別』ジョン・ダワー:猿谷要〈さるや・かなめ〉監修、斎藤元一〈さいとう・げんいち〉訳(平凡社ライブラリー、2001年)/菅沼光弘が指摘する通り、やはり左翼である。昨今話題のポリティカル・コレクトネスの姿勢がよく見える。誰も逆らえないという前提で人権という原理を振りかざし、そこからはみ出る歴史的事実を羅列しているだけのこと。文章がよいだけに注意が必要だ。そもそも白人帝国主義に対する反省を欠いており、遅れて参加した日本を同列に論じる視点に違和感を覚えた。そもそも日本にアメリカのような人種差別は存在しない。インディアンを虐殺し、黒人を奴隷にしてきた国が説く正義を鵜呑みにするな。
168冊目『われ巣鴨に出頭せず 近衛文麿と天皇』工藤美代子(日本経済新聞社、2006年/中公文庫、2009年)/まず読み物として100点満点だ。技巧やスタイルを駆使していないにもかかわらず見事な文章である。「上善(じょうぜん)水(みず)の如し」(老子)という他ない。興味の有無にかかわらず引きずり込まれることは私が請け合おう。高齢者の性に関する工藤本を立て続けに挫折していただけに予想外の衝撃を受けた。悪評の高い近衛文麿を見直したのは鳥居民〈とりい・たみ〉が嚆矢(こうし)と思われるが、工藤本はほぼ完全な形で近衛を捉え直した。敗戦後、国体を辛うじて護持し得たが、国民はGHQとは違う形で戦争責任を求めたのだろう。その世論感情を新聞がミスリードした。戦争を煽ってきたジャーナリズムが一転して戦争責任を問うことで、物を書く行為は責任を失った。民主政の洗礼を受けた知識人は進歩的文化人として左側に整列した。日本の近代史は否定されるべきものとして学校教育で教えられた。依るべき国家を見失った人々のアイデンティティが崩壊するのは時間の問題であったことだろう。戦後、経済一辺倒で走り続けてきた日本はバブル崩壊によって無慙な姿を露呈する。我々は近衛が飲んだ毒を思うべきである。
169冊目『いつまでも、いつまでもお元気で 特攻隊員たちが遺した最後の言葉』知覧特攻平和会館編(草思社、2007年/新装版、2011年)/小品である。海の写真が美しい。特攻隊の言葉に涙を催すのはなぜか? あまりにも清らかに生を燃焼させ、彼らは海に散っていった。その苛烈さを思えば、やはり政治家の軽さを感じずにはいられない。
2016-12-03
目撃された人々 71
1938年(昭和13年)、場所は浅草。日陰で一休みしている子供たちです。姉弟でしょうか。 pic.twitter.com/fGA1dSB1sT
— 戦前~戦後のレトロ写真 (@oldpicture1900) 2016年12月3日
弟妹の世話をする中で学ぶことは多い。私には弟が3人と妹が2人いる。特に一番下の妹は19歳も離れているので本当に面白かった。3歳の頃に私の部屋をノックした。因みに我が家ではノックをする風習はない。ガラス越しに小さな姿が見えた。
— 小野不一 (@fuitsuono) 2016年12月3日
「どうぞ」と応じると、カバンを持ち身を屈めて「こんにちは、あのタカシさんはいますか?」と言う。「ああ、今留守にしてます」と答えると、「じゃ、またきます」と言って頭を何度も下げて出て行った。追いかけて「今のは何だ?」と訊くと、「この間、来た人」と。ピンと来た。保険営業のオバサンだ。
— 小野不一 (@fuitsuono) 2016年12月3日
幼い子供たちは「見る」ことで凄まじい量の情報を獲得している。
— 小野不一 (@fuitsuono) 2016年12月3日
2016-11-29
佐藤優、池内恵、ピーター・ミルワード
3冊挫折。
『ザビエルの見た日本』ピーター・ミルワード:松本たま訳(講談社学術文庫、1998年)/著者はイエズス会神父の大学教授。フランシスコ・ザビエルの手紙を抄録。薄っぺらい本だが3/4ほどでやめた。ミルワードの解説は蛇足というよりも、頭の悪さが目立ち、著書全体を台無しにしている。ザビエルも草葉の陰で泣いていることだろう。
『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』池内恵〈いけうち・さとし〉(新潮選書、2016年)/リベラル特有のどっちつかずの態度が煮え切らない。池内は既に中東研究の第一人者と目されているが、日本の歴史観が私とは相容れない。amazonレビューはおしなべて高い評価だが、私は読むに値しないと判断した。
『いっきに学び直す日本史 近代・現代 実用編』安藤達朗著、佐藤優企画・編集・解説、山岸良二監修(東洋経済新報社、2016年)/佐藤優が巻頭の解説で安倍首相が主張する「戦後レジームからの脱却」を真っ向から否定している。しかも返す刀で公明党を持ち上げており、いかにも佐藤が指南しているように映る。佐藤の博覧強記と該博な知識は誰もが認めるところであるが、何を目指しているのかが全く見えてこない。ただし何となくではあるが沖縄を巡る何かなのは確かだろう。近頃は「私は反対だが」と前置きしながら琉球独立論をぶち上げたりしているようだ。結局のところ国際主義者であり左翼傾向が強い人物なのだろう。もちろん手嶋龍一も同類である。
2016-11-28
ビル・ブライソン、半藤一利、保阪正康、中西輝政、戸高一成、福田和也、加藤陽子、浦河べてるの家、藤田一郎、菅沼光弘、他
12冊挫折、6冊読了。
『思考実験 世界と哲学をつなぐ75問』岡本裕一朗(ちくま新書、2013年)/視点はよいのだが文章が悪い。
『人物で読み解く「日本陸海軍」失敗の本質』兵頭二十八〈ひょうどう・にそはち〉(PHP文庫、2014年)/「失敗」が端的に描かれていない。タイトルに難あり。
『図解雑学 時空図で理解する相対性理論』和田純夫(ナツメ社、1998年)/歯が立たず。再挑戦する予定。
『日本文学全集 59 今東光・今日出海』今東光〈こん・とうこう〉、今日出海〈こん・ひでみ〉(集英社、1972年/1969年の改装版か)/「三木清における人間の研究」(今日出海)だけ読む。佐々淳行著『私を通りすぎた政治家たち』で知った。戦地で見た哲学者・三木清のクソ人間ぶりを冷静な筆致で描く。『人生論ノート』の文体からは到底窺い知ることができない。人間の欺瞞と不思議を思う。
『皇統は万世一系である 女系天皇論の嘘とごかましを徹底検証』谷田川惣〈やたがわ・おさむ〉(日新報道、2011年)/タイトルの「女系天皇論」とはもちろん小林よしのり著『ゴーマニズム宣言SPECIAL 新天皇論』を指す。まあ、これでもかというほど批判が加えられている。小林は口を噤(つぐ)んでいる模様。こうした態度が小林ファンからの怒りを買っている。内容はほぼ神学論争といってよく、批判は攻撃・嘲笑・罵倒の色合いが強い。教義に関する造詣の深さが傲然とした姿勢を感じさせ、読むに堪えない代物となっている。チャンネル桜社長の水島総〈みずしま・さとし〉が一文を寄せているが、他人の尻馬に乗って肩をそびやかしているようにしか見えない。保守・右派に特有の徒党を組む精神性を私は蔑む。
『余命三年時事日記』余命プロジェクトチーム(青林堂、2015年)/文章は素晴らしいのだが論旨がわかりにくい。表紙に「妄想」とあるのも不明さを引き立てている。ブログの書籍化だが、余命プロジェクトチームとは余命3年を告げられたブロガーと、その一族郎党を指す。響堂雪乃とよく似た文体である。
『韓国呪術と反日』但馬オサム(青林堂、2015年)/菅沼光弘が褒めたというので取り寄せた。SMの件(くだり)で胸が悪くなって挫ける。
『クリントン・キャッシュ 外国政府と企業がクリントン夫妻を「大金持ち」にした理由』ピーター・シュヴァイツァー:あえば直道監修、小濱由美子、呉亮錫訳(LUFTメディアコミュニケーション、2016年)/中ほどまで読んだがどうもスッキリしない。状況証拠を積み重ねているのだが決定力に欠ける。それにしてもビル・クリントンの講演料の高額さには驚いた。クリントン財団の深い闇。
『「ダンマパダ」をよむ ブッダの教え「今ここに」』片山一良〈かたやま・いちろう〉(サンガ、2013年)/よもや解説本とはね。ダンマパダの新訳かと思ったのに。片山は既成宗教の匂いがプンプンしていて好きになれない。
『ウルトラマン 「正義の哲学」』神谷和宏(朝日文庫、2015年/朝日新聞出版、2011年『ウルトラマンと「正義」の話をしよう』増補版)/前置きが長過ぎる。
『山の霊異記 赤いヤッケの男』安曇潤平(メディアファクトリー、2008年/MF文庫、2010年)/良書。あまりに怖くて読むのをやめた。ホントの話だよ(笑)。幽霊を信じない私ですら震え上がった。金輪際山には登らないことを固く決意す。二つ読んだだけで完全にギブアップ。タップしまくり。
『群青 知覧特攻基地より』知覧高女なでしこ会(高城書房出版、1979年/改訂版、1996年)/飛ばし読み。女学生の手記が貴重である。「群青」との題が素晴らしい。それは哀しい「青春の群れ」であった。
162冊目『戦争を作り報道を歪める者たちの正体 事件のシナリオを見抜かねば日本は再び戦場となる!』菅沼光弘(ヒカルランド、2016年)/タイトルに難あり。ヒカルランドでまともな菅沼本は初めてのことか。例の如く語り下ろしである。内容はやや薄い。
163冊目『脳はなにを見ているのか』藤田一郎(角川ソフィア文庫、2013年)/面白かった。最後の方は蛇足の感あり。錯覚のメカニズムを解き明かす。時折、文章に性格の悪さが出ている。これほどの内容でありながら、ロバート・カーソンを引用していないのはどうしたことか。腑に落ちず。
164冊目『べてるの家の「当事者研究」』浦河べてるの家(医学書院、2005年)/「シリーズ ケアをひらく」の一冊。いやあ、たまげた。抱腹絶倒の一書である。本当に読みながら何度も吹き出してしまった。発想の転換もここまで来ると「芸」の領域に達している。もちろん彼らの現実は厳しいことだろう。それでも精神疾患を抱える者が自らの病状を研究することは、医者や薬への依存を防ぎ、大いなる自立への一歩となろう。多数のイラストも実に素晴らしい。文章がこなれているのは編集をした医学書院の白石正明の功績だろう。「必読書」入り。
165冊目『あの戦争になぜ負けたのか』半藤一利、保阪正康、中西輝政、戸高一成、福田和也、加藤陽子(文春新書、2006年)/勉強になった。座談会なので読みやすい。私の嫌いな保阪正康や加藤陽子も妙な思想性を出していない。戸高一成の発言が目を惹く。
166、167冊目『人類が知っていることすべての短い歴史(上)』『人類が知っていることすべての短い歴史(下)』ビル・ブライソン:楡井浩一〈にれい・こういち〉訳(NHK出版、2006年/新潮文庫、2014年)/再読。いやあ、やっぱり凄い。ザ・作家といった印象あり。随所にユーモアが横溢(おういつ)している。宇宙創生から人類誕生までの歴史を辿る。とっくに「必読書」入りしているが、あと2~3回は読むことだろう。これから科学を学びたい人は本書を三度続けて読めば、目の前が開けてくるに違いない。
2016-11-27
2016-11-25
目撃された人々 70
夏の出来事である。集合住宅の玄関に七夕の笹竹が飾られていた。何気なく短冊に目をやると、金釘流の文字で「なるべくおかいものにいきます。たまにはおちゃとかもしたいです」と書いてあった。胸に痛みが走った。リハビリ中のお年寄りなのだろう。やっとの思いで綴った筆跡に違いない。
— 小野不一 (@fuitsuono) 2016年11月24日
体が不自由になっても季節を愛(め)で寿(ことほ)ぐ姿勢に私は感じ入った。
— 小野不一 (@fuitsuono) 2016年11月24日
2016-11-19
2016-11-10
アリステア・マクリーン、他
3冊挫折、1冊読了。
『ポジティブ・チェンジ 主体性と組織力を高めるAI』ダイアナ・ホイットニー:株式会社ヒューマンバリュー訳(ヒューマンバリュー、2006年)/『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』で紹介されている書籍はどれも最後まで読むことができず。目新しい言葉がやたらと多いことと、長い前置きがその原因だ。マルチ商法のバイブルとしか思えない。
『ゴーマニズム宣言SPECIAL 新天皇論』小林よしのり(小学館、2010年)/確認のために読んだ。案の定予想通りであった。amazonレビューの多くが正鵠を射ている。小林の根強いファンが手厳しい評価を下す。連載ものであることを踏まえたとしても同じ内容の繰り返しが多すぎ、それが言いわけじみた姿に映る。小林の言い分には一定の説得力があり、私には覆すだけの知識はない。Y遺伝子についてもきちんとした反論が述べられている。にもかかわらず本書の紙価を貶めているのは、小林の放つ個人攻撃が口汚く、終始自分を正当化しているためだ。読み手は信念を押し付けられる格好となる。その牽強付会ぶりに小林が声高らかに主張する女系天皇の弱さが透けて見える。本書の前に小林自身の心の揺れを丁寧に描いておけば、評価もまた変わったことだろう。
『さよならパヨク』千葉麗子(青林堂、2016年)/ネット文体はよしとしても、「パヨク」などの言葉の定義がなく雰囲気だけで読み進めることは不可能である。ニコニコ大百科(仮)程度の脚注があって然るべきだろう。著者はあっけらかんと不倫を綴り、現在は右翼民族派の活動をしているという。両義的な意味で「腰が軽い」と言わざるを得ない。
161冊目『女王陛下のユリシーズ号』アリステア・マクリーン:村上博基〈むらかみ・ひろき〉訳(ハヤカワ文庫、1972年)/再読。33年振りか。訳文がゴリゴリの文体で校正ミスも目立つ。何度も挫けそうになった。読み終えるのに10日間ほど要したと思う。冒険小説の類いは一般的に娯楽と考えられているが、若い私は本書と『鷲は舞い降りた』を読んで生き方が変わった。極限状況を生きる態度を学んだといってよい。ユリシーズ号は架空の軽巡洋艦であるが、第二次世界大戦における北極海の死闘を描く。極寒を感じるためにもやはり冬に読むのが望ましい。ヴァレリー艦長を中心とする海の男たちの勇姿に涙を禁じ得ない。戦争の不毛や軍隊内の官僚主義もきちんと描かれている。登場人物が把握しにくく、上下関係もわかりにくいのが難点だが、何度も繰り返して読むだけの価値はある。「必読書」から何かを外した際に本書を付け加えておいた。尚、今知ったのだが村上博基が今年の4月に逝去していた。哀悼の意を表する。
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