・我々は闇を見ることができない
・『ゼロからわかるブラックホール 時空を歪める暗黒天体が吸い込み、輝き、噴出するメカニズム』大須賀健
・『ブラックホール戦争 スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』レオナルド・サスキンド
「宇宙」って時空という意味だったんだね。知らなかったよ。
私たちは宇宙に住んでいる。「宇」は空間を意味し、「宙」は時間を意味する。宇宙はまさに私たちの住む時空だということになる。しかし、私たちは自分たちの住んでいる宇宙がどういうものであるか、完全には理解しているとは思えない。歯がゆいことである。
【『暗黒宇宙の謎 宇宙をあやつる暗黒の正体とは』谷口義明(講談社ブルーバックス、2005年)以下同】
で、何が歯がゆいか? 宇宙の目方がわからないのだ。「質量ったって、星の数を勘定すればいい話だろ?」。私もそう思っていた。まず、ばらつきが多すぎる。太陽系9個の惑星の重さは、太陽の質量のたった0.13パーセントにしかならないそうだ。太陽って、そんなに大きかったのか。
・太陽系の本当の大きさ/『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン
地球の直径(赤道)は1万2756kmである。太陽までの距離は何と1億4959万7870kmもある。つまり地球を1万1727個並べた距離だ。地球がサッカーボールの大きさ(70cm)であれば、太陽は821m離れていることになる。確かに遠いわな。一体全体どうやって惑星を引っ張っているんだろうね?
星の距離は光年という単位で表されるが、これ自体が時空を示している。ちなみに1光秒は29万9792.458kmだ。宇宙は気が遠くなるほどの広がりをもつ。
そして宇宙には目に見えないエネルギーが存在することがわかってきた。しかもこれが宇宙の大半を構成している。
さらに驚くべき「ダーク」がある。ダークエネルギーである。宇宙全体の73パーセントの質量を担うものは、このダークエネルギーと呼ばれるものである。そしてさらに、ダークマターが23パーセントを占める。つまり、私たちが知っている物質の質量は、宇宙全体の質量のたった4パーセントでしかないことがわかってきたのである。
ダークエネルギーという言葉はフリッツ・ツビッキーが1933年に提唱したもの。もちろんダークマター(暗黒物質)にちなんでいる。正体はいまだ不明であるが「真空のエネルギー」と考えられている。
こうなると超ひも理論に近い。
結局のところ、宇宙のダークマターの探求は、素粒子の世界と力の統一理論に深く関係していることになる。
マクロの宇宙とミクロの素粒子の交差点にダークマターがいるかのごとくである。
つまり宇宙を支配しているのは闇なのだ(笑)。
このように星はその質量に応じてある有限の寿命を全うして死んでいく。では死んだあとはどうなるのだろう? 多くの場合、ダークな残骸を残すことになる。宇宙のダークサイドの一員になる。
銀河系の中心には太陽の約300万倍のブラックホールがあると予想されている。標準的なブラックホールの質量は何と太陽の10億倍だってさ。「私って何て小さな人間なんだ!」と悩んでいるそこのあなた。あなたは正しい。
我々は闇を見ることができない。闇は至るところにある。見えている物の裏側は闇なのだ。背後も闇と考えてよかろう。眠っている間も闇に包まれている。もっと凄いのはまばたきという小さな闇だ。映画のフィルムのつなぎ目のように闇が挿入されているのだ。
結局、宇宙のダークが示しているのは「死のエネルギー」なのだろう。人類悠久の歴史を思えば、生よりも圧倒的に死の方が多い。目に見える生を支えているのもまた数多くの死(食料)である。
そう考えると、「私」を成り立たせているのは「反私」なのかもしれない。何らかの量子ゆらぎが絶妙なバランスで存在たらしめているのだろう。これが「私」という場である。
亡くなっていった人々を思う時、単なる思い出以上の不思議なエネルギーを感じる。
・ブラックホールの画像
・人間に自由意思はない/『脳はなにかと言い訳する 人は幸せになるようにできていた!?』池谷裕二