・死別を悲しむ人々~クリシュナムルティの指摘
・『ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門 豊かな人生の技法』ウィリアム・ハート
ナンディニは私の母を紹介し、次いで私に移った。われわれは再び座り、そして母は数年前に死んだ私の父のことを話した。彼女は彼をとても愛していたこと、そしてぽっかりと開いた大きな穴をどうしても埋められないでいることを話した。彼女はクリシュナムルティに、来世で私の父に会えるかどうかと尋ねた。私は、そのときまでに最初の高められた知覚の強烈さが鈍ったことを見出し、そこでじっと座って、クリシュナムルティから私が慰めになると期待した答を聞こうとした。多くの悲しみに暮れた人々が規則的な間を置いて訪問してきたに違いない、そして彼はきっと彼らにとって慰めになる言葉を知っているに違いない。
すると突然彼は言った。「あいにくですが、あなたは訪ねる人を間違えたようですね、私はあなたに、あなたがお求めの慰めを与えることは出来ません」 われわれ一同はやや当惑したが、しかし彼は話し続けた。「あなたは私に、あなたが死後あなたの夫君に会えるかどうか教えてもらいたがっておられる。が、どの夫にお会いになりたいのですか? あなたと結婚した人ですか? あなたが若い頃あなたと一緒にいた人ですか? なくなった人ですか、それとも、もし生きていたら今日いたであろう人ですか? どの夫君にあなたは会いたいのですか? なぜなら、確かに、死に赴いた人はあなたが結婚した人と同じ人ではないからです」 私は自分の精神が、あたかも何か並外れて挑戦的なことを聞いているかのように、熱心に、ぱっと注意深くなるのを感じた。私の母は、もちろん、これを聞いてひどく当惑しているようだった。彼女は、時間が自分の愛していた者に何らかの相違をもたらしうるということを認める覚悟ができていなかったのである。彼女は「私の夫は変わったりしません」と言った。するとクリシュナムルティは、「なぜ彼に会いたいのですか? あなたが、いないのに気づいて寂しく思っているのは夫ではなく、彼の思い出なのです。奥様、どうかご容赦ください」 彼は両手を組んだが、私は彼のしぐさの完璧さに気づきはじめた。「なぜあなたは彼の思い出を生き続けさせようとするのですか? なぜ自分の心の中で彼を再現しようとするのですか? なぜ悲しみのうちに生き、悲しみと共に生きようとするのですか?」 私の頭の中でぴんとくるものがあった。私の精神は、彼の言葉、その明晰さと正確さに応ずるべくさっと飛び上がった。私は、彼が伝えようとしていた何かとてつもなく大きなものに自分が触れていたのを知っていた。言葉はきびしかったが、しかし彼の目にはいやす力と優しさが宿っており、そして話している間中彼は私の母の片手を握っていた。
【「クリシュナムルティとの邂逅」ププル・ジャヤカール/ゴトの読書室】
クリシュナムルティは「現代のブッダ」などではない。ブッダそのものである。
・クリシュナムルティ「その怒りに終止符を打ちなさい」/『クリシュナムルティ 人と教え』クリシュナムルティ・センター編
・無記について/『人生と仏教 11 未来をひらく思想 〈仏教の文明観〉』中村元
・今やり直せよ。未来を。
・気がつけば月の光