2012-07-21

白バラ抵抗運動~ハンス・ショルの覚悟/『「白バラ」尋問調書 『白バラの祈り』資料集』フレート・ブライナースドルファー編


 のちにゲシュタポの尋問でも自供しているとおり、ハンス・ショルは積極的な抵抗運動をすることを決断していた。「〔……〕私は国家の市民として、自分の国家の運命に対して無関心でいたくないと思ったので、自分の信条を頭のなかで考えているだけではなく、行動に表わそうと決意しました。それで私はビラを書き、印刷することを思い立ったのです。
 私がビラを印刷し、配布しようと決意した時、そのような行動が、現在の国家に反する行為であることは自覚していました。私は、内面からわきおこるやむにやまれぬ気持ちでこうしなくてはならないと確信し、その内面的な責務は、兵士として宣誓した忠誠の誓いよりも重要なものだと考えていました。それによって、どのようなことを自分が被らなくてはならないかはわかっており、このことで自分の命を失うことも覚悟していました。」

【『「白バラ」尋問調書 『白バラの祈り』資料集』フレート・ブライナースドルファー編:石田勇治、田中美由紀訳(未來社、2007年)】

 この覚悟はギロチンによる処刑で実行された。何と清冽な魂であろうか。ビラに記された言葉はスマートフォンで綴られる「つぶやき」とは異質なものだ。

ヒトラーに抗議したドイツの学生達/『「白バラ」尋問調書 『白バラの祈り』資料集』フレート・ブライナースドルファー編
無関心な態度が凶暴な行為を支える

 時代と人々の動向が一方に振り切れようとする時、必ず反対側にバランスする力が働く。本来であれば学問や知性を生業(なりわい)とする面々が担うべき仕事であろう。しかし彼らの多くはステップアップのためとあらば上司の言いなりになるサラリーマンと一緒だ。地位と報酬目当ての彼らは結果的に体制を支える側に身を寄り添える。

 良心を支えているのは感情である。そしてナチスを支えていたのもまた国民の感情であった。「生の本質は反応である」という私の持論からすれば、異なる二つの反応があるだけだ。だが決定的な違いが見て取れる。第一次世界大戦に敗れ、ハイパーインフレに襲われたドイツ国民は熱狂を求め、感情に流されただけであった。一方、白バラには強靭な意志と柔軟な理性が働いていた。

 大衆の反応はいつだって反射的なものだ。ただ苦痛を避けて快楽を求めているのが実態であろう。民主主義は衆愚政治となることを避けられない。かつて民衆が賢明であった時代はなかったし、これからもないことだろう。

 その愚かさが白バラの5人をギロチンの下へ運んだのだ。「考えないこと」は「正しい人を殺すこと」でもあった。その歴史の刻印を忘れまい。

白いバラ
白バラの庭

「白バラ」尋問調書―『白バラの祈り』資料集 白バラの祈り -ゾフィー・ショル、最期の日々- [DVD]

sirobara
【ミュンヘン大学前につくられた記念碑】



2012-07-20

首相「日本からどうこう言う話でない」 オスプレイ配備


 野田佳彦首相は16日、米軍が沖縄に配備予定の新型輸送機オスプレイについて「配備は米政府の方針であり、同盟関係にあるとはいえ(日本から)どうしろこうしろと言う話では基本的にはない」と述べ、日本側から見直しや延期は要請できないとの認識を示した。フジテレビのニュース番組に出演して語った。

 首相は「わが国も例えば国土交通省や第三者の知見で安全性を再確認する。そのプロセスを飛ばして飛行運用することはない」と、政府として独自に安全性を検証する考えも示した。

 また、九州地方を襲った豪雨の激甚災害指定について「そういう方向で迅速に対応したい」と語るとともに、自ら被災地を視察する可能性も示した。消費増税法案の成立後に検討している補正予算については「8月(13日)にGDP(国内総生産)4~6月期の速報値が出るので、経済の動向も踏まえて対応したい」と説明。「つくる場合には主要政党に協力をいただく努力は当然すべきだ」として、自民、公明両党に協力を求める考えを示した。

朝日新聞デジタル 2012-07-16

2012-07-19

アメリカの高校生が学校の課題の為に、ネットの画像を利用して作った「2分で巡る地球上の歴史」

申請却下は二審も「違法」=路上生活者の生活保護訴訟-東京高裁


 わずかな所持金しかなく、住む場所もないのに生活保護の申請を却下したのは違法だとして、路上生活者だった男性(61)が東京都新宿区に対し、却下決定の取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(春日通良裁判長)は18日、却下決定を取り消し、生活保護開始を決定するよう命じた一審東京地裁判決を支持し、同区の控訴を棄却した。
 同区は、男性は働く能力があるのに機会を得る努力をしておらず、支給要件を満たさないと主張していた。春日裁判長は、男性に働く意思はあったが、住居や所持金がなかったことなどから直ちに就労できたとは言えないとした一審の判断を支持した。

時事ドットコム 2012-07-18

生活保護

コペルニクスを非難したマルティン・ルター/『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット


『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン

 ・かつて無線は死者との通信にも使えると信じられていた
 ・コペルニクスを非難したマルティン・ルター

 1514年、ある匿名の手書きの小冊子が数人の特定の天文学者たちのあいだで回覧されるようになる。その全員がコペルニクスの個人的な友人で、つまり作者は彼本人だった。“小解説”(あるいはラテン語で「コメンタリオス」)として知られるこの冊子には、コペルニクスの新しい宇宙モデルが展開されている。太陽が中心に位置し、地球やほかの惑星がそのまわりを巡っていた。これは太陽の“動き”の年周期を説明していた。当時知られていた六つの惑星すべての並びを正確に測定――水星、金星、地球、火星、土星、木星――し、星の位置の見かけが変化するのは、実際には地球そのものが回転しているために起きる、と結論づけた。最終的に、惑星の明らかに逆行した動きは、動く地球の上からそれを観察しているから起こる、と主張した。こうした原理が『天球の回転について』の基礎を形作った。

【『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット:尾之上俊彦、飯泉恵美子、福田実訳(ハヤカワ文庫、2007年)】

「コメンタリオス」は「コメンタリオルス」という表記もあるようだ。そして『天球の回転について』(『天体の回転について』とも)が刊行されたのが1543年のこと。コペルニクスは同年に死去する。彼が不本意に過ごしたであろう30年間を思わずにはいられない。

 西洋中世における教会はかように恐ろしい存在であった。そりゃそうだ。魔女の烙印を押されれば直ちに焚殺(ふんさつ)されてしまうのだから。コペルニクスやガリレオ・ガリレイ(1564-1642年)を臆病者と謗(そし)るのは見当違いの了見だ。むしろ人間の思考や興味が「神を超越した」ことに喝采を送るべきだろう。

 多くの者にとって、これは地球は動かないということを意味した。プロテスタントの改革者マルティン・ルターが1539年にコペルニクスを非難し――『天球の回転について』はまだ出版されていなかったが、「小解説」は出回っていた――こうぶちまけた。「この愚か者は天文科学すべてをひっくり返したいのだ! しかし聖書が教えるように、ヨシュアは太陽に進みをとめるようにいったのであって、地球にではない」。聖書の解釈がまちがっているかもしれないという考えが、教会指導者たちには浮かぶはずがないのは明らかだった。

 ヨシュアとはカナン人の大量虐殺を行った指導者である。宗教改革はルターが「聖書に帰れ!」と抗議(プロテスト)したことに由来する。実際は教会改革であったこの運動は当然の如く原理主義的色彩に染め上げられた。

マルティン・ルターが生まれた日

 ルターが怒りの矛先をコペルニクスへ向けたのは便秘と関係があったのかもしれぬ。彼はコペルニクスにではなく便器にぶちまけるべきであった。

 宗教は人間を盲目にする。強い信念が視点を固定化する。独断的な説をドグマと称するが、ドグマには教義・教理の意味もある。教義に基づく宗教は、人間を教義という鋳型(いがた)にはめ込み、同じ規格の人間を製造する。

 

革命の出版:コペルニクスの地動説
コペルニクス
ニコラウス・コペルニクス
「天球の回転について」について
天球回転論(コペルニクス)
高橋憲一訳・解説『コペルニクス・天球回転論』みすず書房,1993年の目次