「米国GDPの70%以上を占める消費が、極めて少数の人たちの消費に依存している」という不健全な国の形であることが問題なのである。
【『富の不均衡バブル 2022年までの黄金の投資戦略』若林栄四〈わかばやし・えいし〉(日本実業出版社、2014年)】
これを若林は「富の偏在による経済の不均衡」と指摘する。企業トップの報酬は近年、指数関数的に増えている。
高い企業収益、低い法人税率、低い労働者の賃金というのは、いずれも1929年の株価大暴落前夜に酷似しているのである。
富が公平に分配されていないとすれば、国家の機能が脆弱になっていると考えてよさそうだ。
ともかく、こうした動きの結果、レーガン・アジェンダにより富の集中が一層進んでいるのである。
1979年には「トップ1%の家族」が全米事業収入の17%を得ていた。2007年に同じグループは事業収入の43%を手に入れている。またこのグループは2007年の全米のキャピタル・ゲインの75%を得ている。
グロテスクとしかいいようのない状況である。
レーガン・アジェンダとはレーガノミクスのことだろう。レーガン大統領の市場原理に傾いた政策が双子の赤字を生んだ。この流れは子ブッシュ大統領によって加速度の限界を極める。新自由主義という名のもとに。
アマゾンレビューの評価はボロクソであるが、それほど悪い本ではない。むしろ良書だと思う。文章に気取りや自己陶酔が散見されるが、それでもあの川合美智子の師匠である。学ぶべき点は多い。
ダウ暴落の予測が外れたために多くの読者はこき下ろしているわけだが、私は外れたとは思っていない。まずテクニカルの読みとしては妥当なもので、オーバーシュート(行き過ぎた変動)は過剰なマネーサプライが原因であろう。アメリカに遅れて日本もマネーサプライを増やしているのだから、ダブついたマネーはちょっとした風でも大波になる。
折しも衆院選挙投票日の前週からダウもドル円も下げ始めた。為替レートを決定するのは通貨の供給量である。FRBは既にQE3を終了しテーパリング(緩和逓減)を開始している。常識的に考えればもう一段の円安に向かう局面だが、ダウが大幅調整となればドル円も日経平均も引き摺られることだろう。
いずれにしても全てが行き過ぎを示している。格差もドル円も原油も。マーケットが鉄槌(てっつい)を下すのも時間の問題だろう。
・極端な集中が国家を崩壊する/『2010年 資本主義大爆裂! 緊急!近未来10の予測』ラビ・バトラ
・「大恐慌」は富に関する考察抜きには理解できない/『「1929年大恐慌」の謎 経済学の大家たちは、なぜ解明できなかったのか』関岡正弘
・富の再分配と貧困の再分配/『無境界の人』森巣博