・『お江戸でござる』杉浦日向子
・『日本の知恵 ヨーロッパの知恵』松原久子
・『言挙げせよ日本 欧米追従は敗者への道』松原久子
・頬を打たれても尚、日本の真実を語る女性
・『植民地残酷物語 白人優越意識を解き明かす』山口洋一
・『敗戦への三つの〈思いこみ〉 外交官が描く実像』山口洋一
・『日本人の誇り』藤原正彦
・日本の近代史を学ぶ
・必読書リスト その四
日本の(伝統)文化の紹介や解説は、異国趣味と外交辞令もあって歓迎されるが、「弁明」はかの地では激しい抵抗にあわねばならない。いかなる抵抗にあわねばならないか、松原氏が月刊誌『正論』(産経新聞社)の平成13年1月号の随筆欄に体験の一端を披露している。
ドイツの全国テレビで毎週5カ国の代表が出演して行われる討論番組に、氏がレギュラーとして出演していた折りの逸話である。そのときのテーマは、「過去の克服――日本とドイツ」で、相変わらずドイツ代表は、日本軍がアジア諸国で犯した蛮行をホロコーストと同一視し、英国代表は捕虜虐待を、米国代表は生体実験や南京事件を持ち出すなどして日本を攻撃非難した。松原氏は応戦し、ドイツ代表には、ホロコーストは民族絶滅を目的としたドイツの政策であって、戦争とは全く無関係の殺戮であること、そういう発想そのものが日本人の思惟方法の中には存在しないと反論し、英国代表には、彼らの認識が一方的且つ独断的であることを指摘し、史実に基いて日本の立場を説明、弁明した。
さて、逸話のクライマックスは番組終了後である。「テレビ局からケルン駅に出てハンブルク行きを待っていると人ごみの中から中年の女性が近づいてきた。(中略)彼女は私の前に立ち、『我々のテレビで我々の悪口を言う者はこれだ。日本へ帰れ』と言うなり私の顔にぴしゃりと平手打ちをくらわし、さっさと消えていった」(中略)
今や少なからぬ日本人が欧米で、講演、講座、討論会を通じ、「日本」を語っているが、彼らのなかで袋叩きに遭いながら反論し、そして平手打ちをくらうほど日本を弁明した人がいるだろうか。私は、いない、とはっきりいえると思っている。だから日本の世論はもちろんのこと、言論界でも、この事件は、この大事件は他人事なのである。(「訳者まえがき」)
【『驕れる白人と闘うための日本近代史』松原久子:田中敏〈たなか・さとし〉訳(文藝春秋、2005年/文春文庫、2008年)】
GHQの占領政策によって大東亜戦争の罪悪感(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)を刷り込まれた日本人は、いまだに東京裁判史観から抜け出すことができないでいる。義務教育からは歴史が削除されて社会科となり、日本の近代史については目隠しをされたままだ。左翼は劣勢に立たされているものの、原発問題・環境問題・沖縄米軍基地問題・憲法擁護という隠れ蓑をまとって破壊工作を展開。一方、右側は過激な民族差別主義者からネトウヨと、幅はあるものの思想的な深さを欠く。
我々が行うべきことは事実を虚心坦懐に見つめることである。政治性やイデオロギーに基いて歴史をつまみ食いすることこそ最も恐れなくてはならない。
日本人同士が小競り合いを繰り返し、同じ日本人として歴史すら共有できない情況を思えば、松原久子の存在は我々の背に鞭を入れ、姿勢を正さずにはおかない。
国家の安全保障をアメリカに委ねている以上、政治レベルで慰安婦捏造問題や南京大虐殺というフィクションに手をつけるのは危険であり、まして東京裁判に異を唱えることなどできようはずもない。それゆえ日本としては学問のレベルから反撃することが望ましい。就中、パール判事の反対意見書を基軸に据えた国際法研究を広く行うべきだ。学問的成果を一つひとつ積み上げてゆけば、自ずと映画や漫画などの文化にも反映されることだろう。
尚、本書の原作はドイツ語で書かれており、純粋な翻訳書であることを付け加えておく。