2019-03-12

自己組織化、適応的、ダイナミズム/『複雑系 科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち』M・ミッチェル・ワールドロップ


 ・自己組織化、適応的、ダイナミズム

『歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学』マーク・ブキャナン
『複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線』マーク・ブキャナン
『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』(旧題『ティッピング・ポイント』)マルコム・グラッドウェル

必読書リスト その三

 たとえば、
(中略)
● 1987年10月のある月曜日、たった1日で株式市場が500ポイントも急落したのはなぜか。コンピュータ化した株取引に原因があったとする説が多い。だがすでにコンピュータが登場して何年も経っていた。はたして、急落がその特定の月曜日に起こった特別な理由はなかったか。
● 太古の種やエコシステムが、しばしば、化石の記録中に何百万年間と安定した姿をとどめているのはなぜか。その後それらが、地質学的には一瞬のうちに死滅するか新しいものに進化するのはなぜか。恐竜の絶滅は小惑星の衝突によるものかもしれない。だが、当時それほど多くの小惑星は存在しなかった。何かほかのことが進行してはいなかったか。
(中略)
● アミノ酸などの単純な分子からなる最初の液体は、約40億年前、どのようにして最初の細胞にその姿を変えたのか。分子がランダムに組み合わさってそうなったとは考えられない。特殊創造論者が好んで指摘するように、それが起こる確率はばかばかしいほど小さい。では、生物の創造は奇跡だったのか。それとも原初の液体の中でわれわれの理解を超える何かが起きていたのか。
(中略)
● つまるところ、生命とはなにか。それは特別に複雑な炭素化合物にすぎないのか。それとも、もっと精妙なものか。またコンピュータ・ウイルスのような創造物を、われわれはどう解釈したらよいのか。人騒がせな生命の模倣にすぎないのか。それともある根本的な意味で、本当に生きているのか。
● 心とは何か。脳という3ポンドのただの物質の塊はどのようにして感情、思考、目的、自覚といった、言葉にしがたい特質をもたらすのか。
● そしておそらくもっとも根本的なことだろうが、なぜ無ではなく何かが存在するのか。宇宙はビッグバンという無形の爆発体からはじまった。そしてそれ以来、熱力学第二法則が説くように、宇宙は無秩序、崩壊、衰退へと向かう無情な傾向に支配されつづけている。にもかかわらず、宇宙はさまざまな規模の構造を生み出してもいる。銀河、恒星、惑星、バクテリア、植物、動物、脳。いったいどのようにして? 無秩序への宇宙の欲求は、秩序、構造、組織への同じぐらい力強い欲求と釣り合っているのだろうか。もしそうなら、どうしてその二つのプロセスは同時に進行し得るのか。

 一見すると、これらの問いに共通する唯一のことは、答えはみな同じ、「だれにもわからない」ということであるように思える。中にはまったく科学的とは思えないような問いさえある。しかし、少しくわしく見てみると、じつはそこに多くの共通点がある。たとえば、これらの問いのすべてが〈複雑な〉システムと関連しているということ。(中略)
 さらに、どの場合も、まさにこうした相互作用の豊穣さが、システム全体の自発的な自己組織化を可能にしているということ。(中略)
 さらに、こうした複雑な自己組織化のシステムは〈適応的〉である。(中略)
 最後にもう一つ、こうした複雑で自己組織的な適応的システムには一種のダイナミズムがあり、それによってそのシステムは、コンピュータ・チップや雪片のようにただ複雑であるだけの静的な物体とは質的にちがったものになっている。複雑系(Complex System)はそうしたものより、より自発的、より無秩序的、そしてより活動的である。

【『複雑系 科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち』M・ミッチェル・ワールドロップ:田中三彦〈たなか・みつひこ〉、遠山峻征〈とおやま・たかゆき〉訳(新潮文庫、2000年/新潮社、1996年『複雑系 生命現象から政治、経済までを統合する知の革命』改題)】

 著者の名前は英語だと「M. Mitchell Waldrop」となっている。「M」は何なのだろう。気になるが判明せず。

 複雑系といえば、自己組織化や非平衡、散逸系、非線形、カオス理論といった専門用語で行き詰まりやすいが、大雑把にエントロピー増大則を理解すればそれでよろしい。「覆水盆に返らず」である。そしてコーヒーに入れたミルクは広がってゆく。更に風呂のお湯は時間が経つと冷める。形あるものは必ず滅びる。宇宙全体で見ればエントロピーは増大しているのだが、ミクロレベルでおかしな現象が生じる。生命体だ。生物は外部からエネルギーを取り込み平衡状態を保つ。これが自己組織化である。

 フレッド・ホイルは単細胞がランダムな過程で発生する確率は「がらくた置き場の上を竜巻が通過し、その中の物質からボーイング747が組み立てられる」ようなものだと言った。批判を目的とした極言ではあるが自己組織化を巧く言い表している。

非線形非平衡系の物理学 非平衡統計力学から見る生命現象

 複雑系ではゆらぎが未来を大きく変える。「ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?」(エドワード・ローレンツ)。ビッグバンも生命誕生もゆらぎから生まれた。何もないところから何かが生まれる時、相転移というダイナミズムが働く。

 サンタフェ研究所そのものが天才たちが織りなす複雑系に見えてくる。

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2019-03-08

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2019-03-07

蒸し目皿(スチームプレート)最強伝説


 今日新たな伝説が生まれた。春になるのを躊躇(ためら)っているような冷たい雨の音を聞きながら、それは我が家で生まれた。

 スーパーで安売りしていたニンジンを2kgも買ってしまい私は思いあぐねた。と、突然無水鍋と一緒に買った蒸し目皿(スチームプレート)をまだ開封していないことを思い出した。「温野菜あるのみ」と一言呟いた。

 レシピは「甘〜い!蒸すから栄養が逃げない♪温野菜 レシピ・作り方 by まめもにお|楽天レシピ」を参照した。冷凍ブロッコリーがなくなっていたのでチンゲン菜も蒸すことにした。

 ニンジンは小振りなため縦に四等分して放り込んだ。量が多かったせいか10分ほど時間を要した。

 いやはやこれは美味である。期せずして800gほども食べてしまった。ソースは味噌マヨ+ごま油+生姜(チューブ)である。後の二つはただ何となく入れた。一方、冷凍チンゲン菜はそれほどでもなかった。冷凍野菜は味が薄くなるのだろうか?

 ついでに書いておくと、無水鍋がべら棒に高くなっていて驚いた。モデルチェンジしたらしい。たぶん円安の影響もあるのだろう。一番いいタイミングで買ったことになる。

歴史の上書き更新/『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』輪島裕介


『一九八四年』ジョージ・オーウェル

 ・歴史の上書き更新
 ・大衆消費社会の実像

必読書リスト その三

 このように美空ひばりは現在、公的なメディアや知識人によって「昭和を代表する偉大な芸術家」として権威づけられ、彼女が歌う「演歌」は、はるかな過去から脈々と受け継がれる「日本の心」と結びつけられ、称揚されています。しかしこの評価は、敗戦直後のデビューから1970年代前半まで、当時の知識人が彼女に与えてきた否定的な評価とは正反対のものです。
 ひばりはデビュー時には大人の歌を歌う「ゲテモノ」少女と断じられ、スターとなってからはその傲慢さが批判され、1974年から数年間は「裏社会」との癒着が取り上げられ、「国民的行事」である『紅白歌合戦』をはじめとするNHKの番組から排除され、全国の公共ホールからも閉め出されていました。

【『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』輪島裕介〈わじま・ゆうすけ〉(光文社新書、2010年)】

 まず文章がよい。たまげた。リライトされた文章のように読みやすく、テクニカルライターのように正確だ。読んだ時には惹かれた文章でもタイプしてみるとガッカリすることは意外と多いものだ。書き写せば更にガッカリ度は増すことだろう。このように身体(しんたい/=口や手)を通すと文章のリズムや構成を皮膚で感じ取ることができる。一方、名文・美文には一種の快感がある。輪島の文章が抜きん出ているのはその「簡明さ」にある。嘘だと思うなら試しに書き写してごらんよ。輪島は学者である。文士ではないゆえ、香りを放つ文章よりも簡明が望ましい。「簡にして明」であればこそ大衆の理解を得られる。

 私の意図は、そこから本書の二つの主題を導き出すことにあります。
 一つは、戦後のある時期まで、少なくとも「知的」な領域では、ひばりを代表とする流行歌は「悪(あ)しき」ものとみなされていたのが、いつしか「真正な日本の文化」へとその評価を転回させたこと。
 もうひとつは、日本の流行歌の歩みは元来きわめて雑種的、異種混淆的であり、現在「演歌」と呼ばれているものはその一部をなしていきたにすぎない、ということです。

『「知的」な領域』は大衆と反対方向を目指すのだろう。そして「領域」全体がまとまると、今度はそこから反対方向のベクトルが働く。つまり領域内大衆への反動である。輪島裕介の狙いが鋭いのは、演歌にまつわる偽史(ぎし)を解明する過程が、実は宗教における教団分裂の歴史と酷似しており、汎用可能なモデルとなっているところにある。

「演歌」という語が1960年代(むしろ昭和40年代というほうが正確でしょう)に音楽産業の中で一つのジャンルとみなされてゆく過程と、それが「真正な日本文化」として高い評価を得てゆく過程は相関しています。というよりむしろ、ある種の知的な操作を通じて「演歌」というものが「日本の心」を歌う真正な音楽ジャンルとして新たに創り出されたのです。

 私は膝を打った。大乗仏教という名の後期仏教も「知的な操作」を通した歴史の書き換えにその目的があったのだろう。

 再び小林信彦を引けば、彼は「演歌」が明治の「演説の歌」であることを、1999年の大滝詠一のラジオ番組ではじめて知ったと述べています。
 名著『日本の喜劇人』や『テレビの黄金時代』を著し、クレージーキャッツやトニー谷、小林旭の再評価にきわめて重要な功績を残した彼が、「演歌」の語源を知らなかったことは、彼の仕事に多大な影響を受けた私自身、少なからぬ驚きだったのですが、逆に言えば、昭和10年代以降の大衆文化にきわめて精通している小林のような人物であっても、同時代的な音楽・芸能との関わりにおいて、「演歌」という言葉とその語源を意識する必要がなかったことを示しています。
 そのことは、現在用いられている「演歌」という言葉が明治・大正期のそれとは断絶しており、いつの間にか「発生」したものであることを裏付けているといえます。

 私は同様のことが仏教東漸の歴史でもあったに違いないと思う。なかんづく日本仏教の変質には漢字の呪能やアニミズム信仰が深く関わっていると考えられる。「断絶が意識されない」というのが重要な指摘だ。

 たまたま先ほど読んだ本にこうあった。

(※日本の真珠湾攻撃から)50年のときは(※ハワイへ)取材に行かなかったが、報道で見た範囲では人々の記憶も薄らぎ、語るべき人そのものが死んだり行方知れずになっているようだった。私は「40年が限度だ」と思った。

【『「民主主義」を疑え!』徳岡孝夫〈とくおか・たかお〉(新潮社、2008年)】

「歴史は40年で途絶える」のが事実であるとすれば、それ以降は何らかの「知的操作」が必要となる。文字を持たぬ民族の口承文化がその原点だ。古くから伝わる神話や伝説は道徳の基準であり、生き方のモデルを示したものだ。

 世代の変化が20~30年(親子の年齢差)だとすれば、わずか2世代のうちにしか生きた歴史は存在しないことになる。

 美空ひばりのレコードデビューは1949年(昭和24年)で、東京ドームのこけら落しとなるコンサートが1988年(昭和63年)のこと。1989年(平成元年)に死去し、同年女性初となる国民栄誉賞が授与されている。

 おおよそ40年のうちに「演歌が日本の伝統」となり、「美空ひばりは国民的スター」となったわけである。つまりこうだ。出来事としての歴史は40年で途絶える。その一方で創作された歴史が40年のうちに蔓延(はびこ)るのである。たった40年で歴史の上書き更新がなされる事実に驚嘆せざるを得ない。

 日本の伝統に対する健全な敬意が文章の端々から感じられるのがもう一つの特長である。それを保守と呼ばせない程度の抑制も効いている。

 まったく関係がないように見えるかもしれないが、私は本書をジョージ・オーウェル著『一九八四年』の取扱説明書として読むことが可能であると断言しておこう。輪島裕介は演歌という切り口で見事に歴史の断面図を提示したのだ。

創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史 (光文社新書)
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「民主主義」を疑え!
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2019-03-06

蒸しキャベツの肉みそかけ


【材料】(1人分)
 キャベツ……大1枚(約100g)
 豚ひき肉………………50g  水………………………大さじ2

 ┌みそ……大さじ1
★│砂糖……大さじ1
 │おろしにんにく(チューブ可)少々
 └おろししょうが(チューブ可)小さじ1/4

【作り方】
 1.キャベツは食べやすい大きさに切って耐熱容器に入れ、ラップをふんわりとかける。600Wの電子レンジで約3分加熱する。
 2.鍋に豚ひき肉と水を入れ、よく混ぜてから、中火にかける。混ぜながら火を通し、途中で★を加えてよく混ぜ、軽く煮詰める。
 3.器に1を盛り付け、2をかける。



◎肉みそは冷蔵庫で5日ほど保存可能。調理時に必要な分だけ温めて。
◎レタス、きゅうり、にんじん、アスパラなどの野菜にも合う。
◎ごはんやうどんにのせて食べるのもおすすめ。