2022-02-05

リー・チャイルド三昧/『反撃』リー・チャイルド


『前夜』リー・チャイルド
『キリング・フロアー』リー・チャイルド

 ・リー・チャイルド三昧

『警鐘』リー・チャイルド
『葬られた勲章』リー・チャイルド

 頭は、同時にふたつのことをおこなっていた。ひとつは、時間をはかることだ。最後に腕時計を見てからそろそろ2時間がたつが、20秒ほどの誤差でいまの時刻を言いあてられる。実戦でいく晩も寝ずの番をしたときに身につけた特技だ。なにかが起こるのを待つ場合、冬場のビーチハウスのように体の動きを停止させ、刻々とすぎていく時間だけに神経を集中させる。いわば仮死状態になるのだ。そうすることで、エネルギーの浪費をふせぎ、意識のなくなった脳は心臓を鼓動させる役割から解放され、その分を体内のどこかに隠された時計にまわす。おかげで思考に費やす暗く巨大な空間が確保される。だが、ひとたびなにかあればいつでも反応できる程度には覚醒しているから、いつでも現在時刻を把握していることができる。

【『反撃』リー・チャイルド:小林宏明訳(講談社文庫、2003年)】

 本を読む速度が急に衰えてきた。「これはいかん」と思い、昨年11月に『隠蔽捜査』シリーズを1日2冊ペースで読み、12月からはリー・チャイルド三昧である。ラドラムパーカー亡き後、私が唯一頼みとするミステリ作家である。

 ややスーパーマン的な要素に鼻白むが、娯楽作品と割り切ってしまえばいい。必ず美女と行為に及ぶ点も同様だ。一種のサービス精神か。

 自然の要塞と化した地でミリシア(民兵)がアメリカからの独立を目論む。陰謀論に囚われた極右組織として描かれているが、アメリカのポリティカル・コレクトネスに配慮したものか。『最重要容疑者』の中には「トルーマンはリーチャーの好きな大統領だ」とある。民主党政権でフランクリン・ルーズベルトが死去し、副大統領から大統領に格上げされた。日本に原爆を落とした大統領でもある。

 やはり、最初に『前夜』を読むのが望ましい。そうすればリーチャーの上司であるレオン・ガーバー大佐の立ち位置がよくわかる。

 

2022-02-03

ケトルベルの教科書本/『動ける強いカラダを作る! ケトルベル』花咲拓実


『ロシアンパワー養成法』足立弘成
『新トレーニング革命 初動負荷理論に基づくトレーニング体系の確立と展開』小山裕史
『身体を芯から鍛える! ケトルベルマニュアル』松下タイケイ

 ・ケトルベルの教科書本

身体革命

 砲丸にハンドルがついた形状をしているケトルベル。ハンドルがついた形状がヤカン(英語でケトル:ketlle)に似ていることからこの名がついたとされています。
 その歴史は古く、1704年にロシアの辞書に初めて登場しています。流行り廃りのあるフィットネス市場において、有酸素性能力と無酸素性能力などを省スペースで向上させることができる利便性から再び注目されています。

【『動ける強いカラダを作る! ケトルベル』花咲拓実〈はなさき・たくみ〉(日東書院、2020年)以下同】

 無酸素は「ハードスタイル」、有酸素は「ギレヴォイスタイル」というらしい。有酸素運動の代表はクリーン&ジャークである。


 とても有酸素運動には見えない(笑)。競技では10分間の回数を競う。ランナーズハイと似た状態(ケトラーズハイ)が現れることもあるらしいので、やはり有酸素運動なのだろう(ケトルベル・スポーツ)。因みにランナーズハイは「狩猟のご褒美」として進化した可能性が研究で指摘されている。やや強い負荷が続くと現れる。

 ケトルベルは、重心が球体の真ん中にありハンドルから距離があります。この特異な形状から遠心力を扱ったトレーニングも行えますので、重量を重くしなくても動作スピードを速めて負荷を高めることができるといった特徴があります。また、重心が離れているためにバランスを取りづらく、より多くの筋肉を動員する必要があります。

 自然界に完全な球体は存在しない。西洋美術はシンメトリー(左右対称)を好んだが、日本文化は非対称の歪みを愛(め)でた。日本は自然志向なのだろう。筋肉よりも骨の動きを活用したのも日本武術の特長であり、山林が国土の70%を占める地理的背景が関わっている。


 ヒンジの姿勢をよく覚えておくこと。最初のうち私は上体を真っ直ぐに起こしていた。腰痛を恐れて。コツは背筋と腰の上下運動でケトルベルを振ることだ。持ち上げる時の初動負荷を意識して、後は浮いたケトルベルに手を添えているだけの状態である。これが出来るようになると20回程度のスイングが可能だ。

 集合住宅の場合は布団の上で行った方がよい。落とした場合のことを想定して。握力が弱くなっている中高年はしっかりと脚を開いて、甲部分に落とさぬよう警戒心を100%発揮すること。

 個人的には単調な運動しか思いつかなかったのだがそうでもないようだ。私は「primal.swoledier」をフォローするためだけの目的でInstagramに登録した。


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2022-02-01

筋トレの害/『新トレーニング革命 初動負荷理論に基づくトレーニング体系の確立と展開』小山裕史


『ロシアンパワー養成法』足立弘成

 ・筋トレの害

『身体を芯から鍛える! ケトルベルマニュアル』松下タイケイ
『動ける強いカラダを作る! ケトルベル』花咲拓実

 従来より例(ママ)挙できる本来あってはならない悲観論と報告をピックアップすると次のようになります。
 1.筋出力測定では【数値の向上が見られるのに、動きに】結びつかない。あるいは、スピードを失った。
 2.筋肉は獲得(肥大)できたが、動きに結びつかない。あるは、スピードを失った。ex.腰、腕
 3.スピード・トレーニングが可能だと言われるマシーンでトレーニングを行っているのに、実際動作でスピードが生まれない。
 4.身体が硬くなった。ex.各関節可動領域の縮小
 5.鍛えているのに故障が絶えない。ex.ハムストリングス、肩、前腕、手首、腰、膝、足首、足甲部
 6.末端部(いわゆる小手先)の動作が目立つようになった。
 7.【力がついたためか】、強引な動作が目立つようになった。
 8.怪我の後のリハビリテーションを行った部位が痛む。また他の部位(近位を指す)に痛みが発生した。
 9.持久力が失われた。
 10.疲れやすい。
 どうしてこのようなことが起きるのでしょうか。すべて、トレーニングや筋肉に対する誤解、動作様式の無視から起こっています。特に、可変抵抗マシーン、チューブ・バネ弾性利用のトレーニングで、それが著しく誤認されています(特殊なものもあるかもしれませんが……)。

【『新トレーニング革命 初動負荷理論に基づくトレーニング体系の確立と展開』小山裕史〈こやま・やすし〉(講談社、1991年/新訂版、1994年)】

 イチローが使っていたB.M.L.T.カムマシンで一躍有名になったのが初動負荷理論である。筋肉がリラックスした状態から負荷をかけて、一気に抜けるような動きなのだろうと想像する。例えば斧、大ハンマー、投網などの動きも初動負荷である。ボールを投げるのも力が必要なのは投げる瞬間だけだ。理に適(かな)っている。

 ボディビルダーの場合、筋肥大が目的で彼らの筋肉は実用に即していない。一種の鎧(よろい)と考えていい。何を隠し、守るのかは知らないが。

 古来、日本の武術家や武道家は筋トレを行っていない。筋肉を鍛えるのは昭和に入ってからの文化ではあるまいか。個人的には木村政彦以降のことだと考えている。

B.M.L.T.カムマシン導入先一覧

 マシンを使う動きが自然なものであるとは思えない。私にとってはケトルベルが初動負荷理論の実践である。

 尚、本書は専門的な内容で参考になる部分もあるが、小山の他の著書については自己愛まみれの読むに堪(た)えない文章が多く、とてもおすすめできない。