2015-12-30

坂井スマート道子、フランツ・カフカ、他


 5冊挫折、2冊読了。

市民政府論』ロック:鵜飼信成〈うかい・のぶしげ〉訳(岩波文庫、1968年)/加藤節〈かとう・たかし〉訳の方がよい。

2000円から始める!! ふるさと納税裏ワザ大全』金森重樹〈かなもり・しげき〉監修(綜合ムック、2014年)/単なるカタログ。手抜き編集。参考にならず。

偽のデュー警部』ピーター・ラヴゼイ:中村保男訳(ハヤカワ文庫、1983年)/冒頭でチャップリンが登場する。文体が合わず。

化城の昭和史 二・二六事件への道と日蓮主義者(上)』寺内大吉(毎日新聞社、1988年/中公文庫、1996年)/血盟団事件~五・一五事件~二・二六事件を日蓮主義というテーマで描く。しかも主人公の「改作」という渾名(あだな)の記者が左翼の尾崎秀実〈おざき・ほつみ〉という趣向を凝らす。3/4ほどで挫ける。事件そのものがあまり面白くない。寺内大吉は浄土宗の僧侶。

憲法と平和を問いなおす』長谷部恭男〈はせべ・やすお〉(ちくま新書、2004年)/先般、国会に参考人として招かれた人物。文章がよくない。で、たぶん左翼。政教分離(66ページ)、愛国心(69ページ)、天皇制(93ページ)に関する記述からそう判断した。例えばドイツでは税金が教会に渡っている。また愛国教育をしていないのは世界でも日本くらいだ。肝心なことを世界と比較せずに道徳的な次元で批判するのが左翼の常習性である。

 176冊目『絶望名人カフカの人生論』フランツ・カフカ:頭木弘樹〈かしらぎ・ひろき〉編訳(飛鳥新社、2011年/新潮文庫、2014年)/『生ける屍の結末 「黒子のバスケ」脅迫事件の全真相』といい勝負だ。昔、「可不可」というペンネームを思いついたことがあったが、どうやら実際のご本人は「過負荷」であった模様。渡邊博史はカフカになれる可能性を秘めていると思う。

 177冊目『父、坂井三郎 「大空のサムライ」が娘に遺した生き方』坂井スマート道子(産経新聞出版、2012年)/親父の本より面白かった。娘をもつ親は必読のこと。零戦エースパイロットの凄まじいばかりの注意力が遺憾なく子育てに発揮されている。坂井三郎は「生きる不思議」を悟っていたのだろう。型破りな教えの数々が「生命の危険回避」を旨としている。リスク管理の見事な教科書。坂井を半死半生の目に遭わせた米軍パイロットとの邂逅も感動的だ。「必読書」入り。

2015-12-28

脳卒中が起こった瞬間/『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー


『壊れた脳 生存する知』山田規畝子
『46年目の光 視力を取り戻した男の奇跡の人生』ロバート・カーソン
『動物感覚 アニマル・マインドを読み解く』テンプル・グランディン
『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ
『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
『脳はいかにして〈神〉を見るか 宗教体験のブレイン・サイエンス』アンドリュー・ニューバーグ、ユージーン・ダギリ、ヴィンス・ロース
『悟りの階梯 テーラワーダ仏教が明かす悟りの構造』藤本晃
『未処理の感情に気付けば、問題の8割は解決する』城ノ石ゆかり
『マンガでわかる 仕事もプライベートもうまくいく 感情のしくみ』城ノ石ゆかり監修、今谷鉄柱作画
『ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジー』由佐美加子、天外伺朗
『無意識がわかれば人生が変わる 「現実」は4つのメンタルモデルからつくり出される』前野隆司、由佐美加子
『ザ・メンタルモデル ワークブック 自分を「観る」から始まる生きやすさへのパラダイムシフト』由佐美加子、中村伸也
『左脳さん、右脳さん。 あなたにも体感できる意識変容の5ステップ』ネドじゅん

 ・脳卒中が起こった瞬間

ジル・ボルト・テイラー「脳卒中体験を語る」
『脳は奇跡を起こす』ノーマン・ドイジ
『脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線』ノーマン・ドイジ
『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル
『人生を変える一番シンプルな方法 セドナメソッド』ヘイル・ドゥオスキン
『わかっちゃった人たち 悟りについて普通の7人が語ったこと』サリー・ボンジャース
『悟り系で行こう 「私」が終わる時、「世界」が現れる』那智タケシ
『二十一世紀の諸法無我 断片と統合 新しき超人たちへの福音』那智タケシ
『覚醒の炎 プンジャジの教え』デーヴィッド・ゴッドマン

悟りとは
必読書リスト その五

 集中しようとすればするほど、どんどん考えが逃げて行くかのようです。答えと情報を見つける代わりに、わたしは込み上げる平和の感覚に満たされていました。わたしを人生の細部に結びつけていた、いつものおしゃべりの代わりに、あたり一面の平穏な幸福感に包まれているような感じ。恐怖をつかさどる脳の部位である扁桃体が、こうした異常な環境への懸念にも反応することなく、パニック状態を引き起こさなかったなんて、なんて運がよかったのでしょう。左脳の言語中枢が徐々に静かになるにつれて、わたしは人生の思い出から切り離され、神の恵みのような感覚に浸り、心がなごんでいきました。高度な認知能力と過去の人生から切り離されたことによって、意識は悟りの感覚、あるいは宇宙と融合して「ひとつになる」ところまで高まっていきました。むりやりとはいえ、家路をたどるような感じで、心地よいのです。
 この時点で、わたしは自分を囲んでいる三次元の現実感覚を失っていました。からだは浴室の壁で支えられていましたが、、どこで自分が始まって終わっているのか、というからだの境界すらはっきりわからない。なんとも奇妙な感覚。からだが、固体ではなくて液体であるかのような感じ。まわりの空間や空気の流れに溶け込んでしまい、もう、からだと他のものの区別がつかない。認識しようとする頭と、指を思うように動かす力との関係がずれていくのを感じつつ、からだの塊はずっしりと重くなり、まるでエネルギーが切れたかのようでした。

【『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー:竹内薫〈たけうち・かおる〉訳(新潮社、2009年/新潮文庫、2012年)】

2012年に読んだ本ランキング」の第3位である。出版不況のせいで校正をしていないのかもしれない。「なんて、なんて運が」が見過ごされている。

 急激な脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の総称を脳卒中という。ジル・ボルト・テイラーは浴室で倒れた。フラフラになりながらも何とか電話まで辿り着き、同僚に連絡するも既に呂律(ろれつ)が回らなくなっていた。

 論理や思考から解き放たれた豊かな右脳世界が現れる。それは自他が融(と)け合う世界だった。左脳は分析し序列をつける。

「科学者は、体験談を証拠とはみなさない」(『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』スーザン・A・クランシー)。しかし脳科学者の体験であれば一般人よりも客観性があり有用だろう。

 神は右脳に棲む(『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ)。ただし注意が必要だ。教祖の言葉も、統合失調症患者のネオ・ロゴス(『死と狂気 死者の発見』渡辺哲夫)も右脳から生まれる。右脳にも裏と表があるのだろう。ジル・ボルト・テイラーの体験を普遍の位置に置くのは危険だ。

 それでも傍証はある。

「閉じ込め症候群」患者の72%、「幸せ」と回答 自殺ほう助積極論に「待った」

 文学的表現ではなく、本当にただ「いる」だけ、「ある」だけでも幸せなのだ。「比較と順応がないとき、葛藤は姿を消します」(『キッチン日記 J.クリシュナムルティとの1001回のランチ』マイケル・クローネン:高橋重敏訳)。左脳の特徴である論理・分析・体系化が「悟り」を阻んでいるのだろう。我々が願う幸福の姿は左脳的で、社会における位置や他人からの評価に彩られている。

 悟りとは「世界を、生を味わうこと」だ。ジル・ボルト・テイラーの体験は本覚論の正当性(『反密教学』津田真一)を示す。なぜなら悟るべきタイミングは「今、ここ」であり、彼岸は此岸(しがん)の足下(そっか)に存在するからだ。悟りとは山頂に位置するのではない。現在の一歩にこそ求められるべきものである。

 次に戒律というテーマが見えてくるわけだが私の手には余る。




序文「インド思想の潮流」に日本仏教を解く鍵あり/『世界の名著1 バラモン教典 原始仏典』長尾雅人責任編集、『空の思想史 原始仏教から日本近代へ』立川武蔵
病気になると“世界が変わる”/『壊れた脳 生存する知』山田規畝子

2015-12-25

菅沼光弘、ヨハン・テオリン、他


 6冊挫折、2冊読了。

会津落城 戊辰戦争最大の悲劇』星亮一〈ほし・りょういち〉(中公新書、2003年)/テレビマンの性(さが)はそう簡単に変わらぬようだ。星亮一は会津宣伝マンか。今後読む予定なし。

神々の明治維新 神仏分離と廃仏毀釈』安丸良夫〈やすまる・よしお〉(岩波新書、1979年)/細部にこだわりすぎて全体が見えない。キリスト教と日蓮宗不受不施派の禁止~寺請制度といった前提が描かれていないため廃仏毀釈事件簿の印象が強い。

地獄の虹 新垣三郎 死刑囚から牧師に』毛利恒之(毎日新聞社、1998年/講談社文庫、2005年)/『月光の夏』に感動した勢いで毛利恒之の著作に手をつけたのだが、パッとしない。テレビなんぞで真実を伝えられるわけがない(14ページ)。

占領下の言論弾圧』(現代ジャーナリズム出版会、1969年/増補版、1974年)/参照資料。松浦総三は共産党員らしい。「天皇の軍隊」などと書いている。左翼の言論が信用ならないのは人々を誘導するプロパガンダ性にある。彼らは天皇制打倒や社会主義化という目的を伏せながら、もっともらしい善意を振りかざして破壊活動を行う。人間を自由にしない思想・宗教はすべてイデオロギーと化す。そしてイデオロギーが人間を手段化する。

江戸時代』大石慎三郎〈おおいし・しんざぶろう〉(中公新書、1974年)/主要な大型治水工事の大半は戦国時代に行われたという。社会のグランドデザインを重視した内容。50ページほどしか興味が続かず。

冬の灯台が語るとき』ヨハン・テオリン:三角和代〈みすみ・かずよ〉訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2012年)/労多き作業にケチをつけるのは心苦しいが翻訳が悪すぎる。

 174冊目『黄昏に眠る秋』ヨハン・テオリン:三角和代〈みすみ・かずよ〉訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2011年/ハヤカワ文庫、2013年)/一度挫けている。とにかく翻訳がわかりにくい。軽く100ヶ所以上はあるだろう。リライトするだけでベストセラーになることだろう。老人たちが捜査をするという設定に無理があり、しかも登場人物の殆どが愚か者ときている。それでもラストのどんでん返しには度肝を抜かれた。次作の『冬の灯台が語るとき』にも直ぐ手を伸ばしたが、とても読めた文章ではない。

 175冊目『日本人が知らない地政学が教えるこの国の針路』菅沼光弘(KKベストセラーズ、2015年)/ウクライナ政変とイスラム国に関する情報を中心に米中の動きを解説する。例の如く語り下ろし。後藤健二さん殺害の裏側にMI5の暗躍ありとしている。中国が対日感情を和らげたのは、既に日本を格下国家と見なしているため。

映画『ZEITGEIST : ADDENDUM 』(ツァイトガイスト・アデンダム)2008年


映画『ZEITGEIST(ツァイトガイスト) 時代精神』2007年

 ・映画『ZEITGEIST : ADDENDUM 』(ツァイトガイスト・アデンダム)2008年

映画『ZEITGEIST : MOVING FORWARD』2011年