2016-12-25

福本伸行、ロバート・A・バートン、他


 3冊挫折、1冊読了。

『ダンマパダ』全詩解説 仏祖に学ぶひとすじの道』片山一良〈かたやま・いちろう〉(大蔵出版、2009年)/「仏祖」という言葉のセンスに問題があると考える。個人的に片山の文章が苦手でしようがないのだが、鎌倉仏教の枠組みでブッダを捉えようとする視線に疑問あり。ダンマパダ(法句経)新訳をブッダゴーサの『法句註』によって解説し、道元の『正法眼蔵随聞記』の言葉を併せて紹介。ダンマパダの各句はそれぞれ別々の人々に対して説かれたものであることを初めて知った。過去世の物語が全面に出ており読むに堪(た)えない。

所得税確定申告の手引 平成28年3月申告用』上田浩人、田所寛幹、川崎令子編(大蔵財務協会、2016年)、『〈平成27年分〉所得税 確定申告の手引』小野賢二編(税務研究会出版局、2015年)/前者の方がよい。書類の具体的な書き方が画像で紹介されているため。参考までに。

 173冊目『確信する脳 「知っている」とはどういうことか』ロバート・A・バートン、岩坂彰訳(河出書房新社、2010年)/一度挫けているのだが今回はスラスラ読めた。前々から「必読書」には入れてある。私の体調が悪かったのかと思ったのだがそうではない。リベラルにありがちな「答えを留保する姿勢」に酔うような態度を感じたためだろう。「知る」と「信じる」の根源に迫る難しい分析に挑む。岩崎が「既知感」という訳語を創出しているが、私にとってはクリシュナムルティを読み解く鍵にもなった。

 番外『銀と金(全11冊)』福本伸行(双葉社、1992~1996年)/かれこれ7~8回は読んでいるのだが、読まずにいられない飢餓感が定期的に襲ってくる。福本はギャンブルを通して虚飾を剥ぎ取った欲望を描く。喰うか喰われるかを凌ぐのは権力への渇望と運だ。連載が休載という形で終わり、未完になったのは「邦男」というキャラクターが森田という主役を喰ってしまったためだ。芸術家の想像力は飛翔し、作品そのものを葬ることがあるのだろう。森田と銀二の縁が切れた時点で物語は終わりを告げる。結局、福本が描いたのは人と人との交接なのだ。その妙がマイナスへと転じるところに本作品の魅力がある。

2016-12-21

シャンカール・ヴェダンタム、オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ、藤原肇、藤井尚治、他


 1冊挫折、3冊読了。

修羅の翼 零戦特攻隊員の真情』角田和男〈つのだ・かずお〉(今日の話題社、1989年光人社、2002年/光人社NF文庫、2008年)/良書。文章もよい。年末で時間がないため時期を改めて読むつもりである。大西瀧治郎〈おおにし・たきじろう〉は講和へ導くために特攻隊を考案した。大西個人の考えではないことが書かれている。

 170冊目『間脳幻想 人類の新時代をひらくキー・ワード』藤原肇、藤井尚治〈ふじい・なおはる〉(東興書院、1988年)/小室直樹と互角に渡り合った(『脱ニッポン型思考のすすめ』1982年)藤原が藤井には全くかなわなかったという。対談というよりは雑談なのだが恐ろしいまでの鋭さがぶつかり合う。アインシュタインの宇宙定数が再び見直されたように二人は錬金術の目的と思想をすくい上げる。その手並みが実に鮮やかだ。

 171冊目『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ:林康史〈はやし・やすふみ〉監訳、藤野隆太訳(日経BP社、2002年)/投資家の間では有名な本だが初めて読んだ。文章が巧みで随所に名文が光る。矢口新著『実践 生き残りのディーリング 変わりゆく市場に適応するための100のアプローチ』が霞んで見えるほどだ。株式投資以外でも十分通用する内容である。

 172冊目『隠れた脳』シャンカール・ヴェダンタム:渡会圭子〈わたらい・けいこ〉訳(インターシフト、2011年)/再読。既に書評済み。名著は何度読んでも新しい発見がある。