2015-11-17

左翼とサヨクあるいは反日を巡って/『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』小林よしのり


 ・左翼とサヨクあるいは反日を巡って

・『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論 2』小林よしのり
・『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論 3』小林よしのり
『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小林よしのり

・『ゴーマニズム宣言SPECIAL パール真論』小林よしのり

日本の近代史を学ぶ

【日本の】個人主義者は国家が嫌いである 権力も嫌いである

 そしてこの平和が自明のものであり 税金さえ払えば手に入るサービスだと思っている

 日本の個人はまるで消費者なのだ!!

【『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』小林よしのり(幻冬舎、1998年)以下同】

 漫画吹き出しのためテキストの改行は無視した。日本の古代が『古事記』というフィクションによって成り立ち(『官僚病の起源』岸田秀、1997年)、明治維新という擬装を通して近代化された(『明治維新という過ち 日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト』原田伊織、2012年)ことを思えば、この国はたぶん理念を欠いている。ただし四方を海に囲まれた地理的優位さが歴史と伝統の形成を可能にした。

 近代日本において左翼と右翼を定義することは難しい。江戸末期では攘夷派も開国派も尊王を標榜しており(『攘夷の幕末史』町田明広、2010年)、倒幕という運動性と残虐な急進性からすれば攘夷派は完全な左翼である。ところが右翼の原点は西郷隆盛の精神にあり、玄洋社(1881-1946年)が道を開いたのである。昨今では「過激な」右翼と「穏健な」左翼という顛倒(てんとう)した事態となっている。

 1922年(大正11年)に日本共産党が結成される。度重なる弾圧を経て、しばしば破壊活動を起こし、同党は敗戦の後に合法化される。これをもって「左翼とは『天皇制』打倒を目論み、日本文化を否定しかつ破壊へと導く思想・行動」と認められるか。

 スターリンが言い始めた「天皇制」(emperor system)とのキーワードは左翼用語であり、個人的には「いわゆる天皇制」(「いわゆる従軍慰安婦」に倣〈なら〉う)と表現したい。制度を導入したというよりは自然発生的であったと考えるためだ。文脈によっては「天皇制」と鍵括弧を付けることにする。

 わしは戦後180度転換したこの日本の「空気」をすべて疑う(中略)

 日本を覆うその「空気」とは…(中略)

 新聞のほとんどに彼らはいる

 テレビ 雑誌 マスコミ内に いる

 教育界にかなりいる

 司法関係者にいる

 国外にまで暗躍している

 この「残存左翼」に操られやすいのが「うす甘いサヨクの市民グループ」だ

 明確な左翼思想を持つわけでなく…人権・平等・自由・フェミニズム・反戦平和などの思想が彼らを突き動かす(中略)

「うす甘いサヨク市民グループ」の周りには 大多数の「うす甘い戦後民主主義の国民」がいるわけである

 つまり「人権」「自由」「個人」「反戦平和」などの価値を揚げれば「残存左翼から「うす甘いサヨク市民グループ」から「戦後民主主義者」まで大同団結できてしまう

 要するに戦後民主主義は「サヨク」なのだ!

 それが「空気」の正体である

 次に紹介するのはニコニコ大百科(仮)の「サヨク」という項目である。

 サヨクとは、本来の左翼思想と「人権・平等・環境」といった理念を振りかざす左翼シンパシー的な立場を区別する上で、用いられる用語である。

 現在はネット言論(2ch、ブログなど)において広く用いられている。レッテル・蔑称としても用いられる。

概要

 明確な定義について見解は分かれるが、一般的には左翼思想及び共産主義体制の近隣国家にシンパシーを示すが、正面からマルクス主義的な社会革命を標榜することはなく、「平和・国際協調・人権・民主主義・環境保護」といった口当たりのよいスローガンを掲げて活動する思想・立場のことを言う。

 カタカナ表記の「サヨク」は小説のタイトルとしてつかわれることもあったが、漫画家の小林よしのりによって、従来の左翼と区別される思想・政治的立場を示す語として積極的に用いられるようになった。小林は、「サヨク」という語を、イデオロギー的な議論を避け、表面的なスローガンに論点をすりかえる方法論を、カタカナ表記のフランクさによって揶揄する意味で用いたと考えられる。

「サヨク」の背景

 冷戦下の政治工作の一環として、共産主義陣営は資本主義国内部の批判勢力を組織・支援した。こうした工作はマスコミや「進歩的知識人」「市民団体」などを通して行われたが、このときに用いられたのが「平和・民主主義」といったスローガンであった。

 ソ連が崩壊し、マルクス・レーニン主義が失敗をみたことが知れ渡ると、イデオロギーとしての左翼は求心力を失ったが、これらの批判勢力は口当たりのよいスローガンに身を隠しつつ、活動を継続していった。

「サヨク」はこうしたイデオロギー的ルーツを表面に出すことなく(または自覚することなく)現在も根強く活動している。

ニコニコ大百科(仮)

 左翼はフランス革命の急進派(ジャコバン党)に始まり、共産主義・社会主義を経て、リベラル派への変態を辿る。日本においては東京裁判史観に基づく戦後教育が、昭和期に至るまでの伝統を消し去った。経済成長を遂げるにつれ武士道という節度も溶解した。愛国心は鼻で笑われ、国民は国体を見失った。

 日本の近代史は奥が深い。GHQによるウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(戦争贖罪意識洗脳プログラム)や薩長土肥によって綴られた明治維新以降は、飽くまでも「官軍の歴史」であると理解すべきだろう。

 佐藤優が小林を批判していた。気をつけなければならないことは佐藤の指摘は歴史認識としては正しいのだが、GHQによる占領政策から人々の目を逸(そ)らさせてしまう点にある。彼はそれを計算ずくで行っているのだろう。私としては小林の漫画は読むに堪(た)えないし、「わし」という言葉づかいが社会性を無視して鼻持ちならないが、小林の書籍や言動から少なからず影響を受けており、敬意を表するものである。

 民主制(※デモクラシーを民主主義とするのは誤訳)は情報公開(ディスクロージャー)によって作動する。私が民主制よりも貴族制を重んじるのは、あらゆる国家において100%の情報が公開されることはないと考えるためだ。

 左翼という政治性、サヨクという知的欺瞞、反日という民族嫌悪は平和という名の温室で栽培された。戦争は経済問題に起因する。そして経済は気温に左右される。すなわち地球の寒冷化が戦争を生むのだ。国内情勢を見るだけでも地球温暖化の嘘が知れよう。温暖で作物が豊富にとれれば人々は争わない。石油の確認埋蔵量も増えているからエネルギー確保が戦争要因となることも考えにくい。いずれにせよ2020年の東京オリンピックまでには明らかとなるに違いない。

新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論新ゴーマニズム宣言SPECIAL戦争論 (2)新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論〈3〉

アンサイクロペディア:左翼
左翼有名人リスト
日本共産党が機関紙「赤旗」紙上で32年テーゼを発表

会津戦争の悲劇/『ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書』石光真人

2015-11-15

神保哲生×佐藤優×萱野稔人 特別対談「新・世界地図」


 ほぼ佐藤優の講義状態。遠慮なし(笑)。それでも萱野〈かやの〉が全体像を描くことに腐心しており、その全てに対して佐藤が賛同を表明する。萱野の健闘が光る。萱野は『マル激トーク・オン・デマンド』(神保、宮台)の準レギュラーを務める。

2015-11-14

田原総一朗×佐藤優×宮崎学「今なぜ"資本論"なのか!? 日本の未来とアベノミクス パート2」


 佐藤優の歴史認識は極めて正確である。特に大東亜戦争の件(くだり)では私が最近、『日本の戦争Q&A 兵頭二十八軍学塾』(兵頭二十八〈ひょうどう・にそはち〉、光人社、2007年)で初めて知った歴史的経緯もきちんと踏まえている。佐藤は返す刀で小林よしのりを批判するが、こうした印象付けの巧みさはスパイさながらだ。しかも田原が小林と親しい関係性にあることも知っているのだろう。また一貫して孫崎享〈まごさき・うける〉を小馬鹿にしているが稀に持ち上げることがある。持ち上げることで落差が際立つ。そのあたりも多分計算済みなのだろう。彼の言動がプロパガンダに見えてしまう瞬間である。どうせやるなら正面からきちんと批判すべきだろう。びっくりしたのだが宮崎学の劣化ぶりが酷い。新橋の呑み屋にいるサラリーマン以下に感じた。



資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

SDRに人民元


人民元、基準通貨入りへ=30日決定-IMF

 国際通貨基金(IMF)は13日、準備資産「特別引き出し権(SDR)」の算定基準となる通貨に中国・人民元を加えるのが妥当との報告を正式発表した。IMF加盟国から大きな反対の声は上がっておらず、元は30日の理事会で、ドル、英ポンド、日本円、ユーロに続き、5番目の基準通貨に決定される見通しだ。
 元が基準通貨入りすれば、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設を主導する中国が、国際金融で一段と存在感を強めることになる。  基準通貨への採用は「貿易での利用量」や「取引の自由度」が条件。IMFは報告で、中国が取り組む市場改革を評価し、理事会に「元は(量だけではなく)自由度でも条件を満たした」との見解を伝えた。
 ラガルドIMF専務理事は「報告を支持する」と明言。加盟国代表で構成する理事会に承認を仰ぐ意向を示した。
 元の基準通貨入りを要求する中国に対し、米国や日本は当初、警戒姿勢を示していた。しかし、中国との経済緊密化を狙う欧州諸国が賛成に傾いたため、日米も「基準を満たせば支持する」などと姿勢を軟化させた。
 SDRはIMF加盟国に出資額に応じて配分される仮想通貨で、外貨不足に陥った国は、手持ちのSDRを米ドルなどと交換できる。今年は5年ごとの構成通貨の見直し作業が行われた。

2015-11-14 時事通信



SDRに人民元:国際金融でも中国が「主要国」の地位に

 中国の人民元が、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に採用される見通しになったのは、日米欧が主導権を維持してきた国際金融の面でも、中国が「主要国」の地位を得ることを意味する。中国は存在感が拡大する一方で、人民元の為替相場を一定の変動幅に抑えていることや海外への持ち出し制限など依然残る規制について、一層の改革を求められることになる。
 人民元をSDRに採用することに関して、日米は当初慎重姿勢だったが、英国など欧州勢や新興国が支持を表明する中、IMFが妥当と判断すれば賛同する方向に姿勢を軟化させていた。実際に採用されるには、各国政府や中央銀行の準備が必要で、実施は来年10月になるとみられる。
 人民元の構成通貨入りは、主要国際通貨としての「お墨付き」を得るのに加えて、各国が外貨準備として人民元を持ちやすくなり、貿易取引に人民元を使う機会も増えるなど、中国が推進する人民元の国際化の追い風になるのは確実だ。アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設を主導する中国はSDR入りをテコに、人民元の国際化を進め、ドル依存からの脱却を目指すとみられ、第二次世界大戦後のドル基軸通貨体制にとって転機になる可能性を秘める。また、円は相対的に存在感が低下する可能性がある。
 一方、人民元が名実ともに主要通貨として認められるためには、国際社会の期待に沿って、為替取引などの人民元改革や資本規制改革を進めることが求められる。海外からの資金の出入りが増えれば、先進国と同様、バブル経済を呼び込んだり、金融危機を招いたりするリスクは高まる。中国国内には改革を遅らせようとする動きもあり、世界は改革の行方を注目している。

毎日新聞 2015-11-14

国旗の重み 海洋国家日本の海賊退治