・『國破れて マッカーサー』西鋭夫
・『日本永久占領 日米関係、隠された真実』片岡鉄哉
・もしもアメリカが参戦しなかったならば……
・建国の精神に基づくアメリカの不干渉主義
・『繁栄と衰退と オランダ史に日本が見える』岡崎久彦
・日本の近代史を学ぶ
日本との間の戦争は不必要であった。これは、お互い同士よりも共産主義の脅威をより恐れていた日・米両国にとって、悲劇的であった。われわれは、戦争から何も得るところがなかったばかりか、友好的であった中国を共産主義者の手に奪われることとなった。
イギリスは、それ以上に多くのものを失った。イギリスは、中国に対しては、特別の利益と特権を有していたし、マレーシア、シンガポール、ビルマ、インドおよびセイロンをも失った。
蒋介石は、オーエン・ラティモアの悪い助言を受け入れて、日本軍の中国撤兵を要求する暫定協定に反対した。同協定は、蒋介石の中国全土掌握を可能にしたかもしれない。これはヤルタ会談でルーズベルトがスターリンに譲歩を行なったその3年前のことである。
われわれの同盟であったスターリンの共産軍に対して、満州侵攻を許す理由は何もなかったはずである。蒋介石は、米国の友人として、中国共産主義者の反攻を打ち砕くに必要な、すべての武器および資源を持ちえたはずであった。
われわれが参戦しなかったならば、すなわち日本のパールハーバー攻撃がなかったならば、事態はどう進展していたか、という疑問はしばしば呈される。この疑問は、詳細な回答を与えられるに値する。
私は、米国は簡単に日本との間で和平条約を締結できたであろうし、その条約の中で日本は、フィリピンとオランダ領東インドを含む極東における全諸国との交易権とひきかえに、中国およびインドシナからの友好的撤退に合意したであろうことを確信している。
【『日米・開戦の悲劇 誰が第二次大戦を招いたのか』ハミルトン・フィッシュ:岡崎久彦監訳(PHP研究所、1985年/PHP文庫、1992年)】
ハミルトン・フィッシュは共和党の党首を務めた下院議員で、戦時中の議会においてフランクリン・ルーズベルト(民主党)を批判した人物として広く知られる。
開戦当初、フィッシュは議会で挙国一致を説きルーズベルト大統領を力強く支持した。ところが後にルーズベルトの秘密外交や日本を戦争にけしかけた手法、更には真珠湾攻撃を事前に知りながらアメリカ海軍を犠牲にしたことなどを知り、大統領を猛々しく糾弾するようになる。戦時中にありながらも議会やマスコミが正常に機能していたところにアメリカの真の勝因があったのだろう。
フィッシュの指摘によればアメリカは戦略を誤り、友邦のイギリスをも凋落(ちょうらく)させてしまった。その後、ヤルタ体制(1945年)によって冷戦がソ連崩壊(1991年)まで続くことを思えばルーズベルトの判断がどれほどアメリカの国益を損ねたか計り知れない。それまでモンロー主義(孤立主義)を貫いてきたアメリカは以降、次々と世界各地で軍事介入をするようになる。トランプ大統領が掲げるアメリカ・ファーストはルーズベルト以前のアメリカを取り戻すということなのだろう。
日本が開戦を決意したのは永野修身〈ながの・おさみ〉軍令部総長の言葉に言い尽くされている。「戦わざれば亡国必至、戦うもまた亡国を免れぬとすれば、戦わずして亡国にゆだねるは身も心も民族永遠の亡国であるが、戦って護国の精神に徹するならば、たとい戦い勝たずとも祖国護持の精神が残り、われらの子孫はかならず再起三起するであろう」(昭和16年〈1941年〉9月6日の御前会議)。
最後の一言に慚愧(ざんき)の念を覚えぬ者があろうか。我々の父祖は子や孫を信じて敗れ去る戦いに臨んだのだ。
もしもアメリカが参戦しなかったならば……日本は領土を拡大し、アメリカと手を組むことでソ連を封じ込め、中国の共産主義化を防ぐことができたに違いない。しかしながら帝国主義が50年から100年は続き、アジア・中東・アフリカ諸国は植民地のまま21世紀を迎えたことだろう。とすれば大東亜戦争は日米にとっては不幸な戦争であったが、世界のためには植民地の歴史にとどめを刺す壮挙であったと考えるべきだろう。日本人310万人、世界では5000-8000万人(病死・飢餓死を含む)の死者は大惨事であったが、もしも第二次世界大戦がなければ長期間に渡ってもっと多くの人々が殺されたに違いない。
歴史は死者の存在によって変わる。これが人類の宿痾(しゅくあ)であろう。
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