2018-11-09

翻訳と解釈/『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー


 ・翻訳と解釈

必読書リスト その二

 一世代前のアメリカでは、食費の4分の3が、家庭で用意される食事にあてられていた。今日では、食費の半分にあたる額が、外食店に――それも、主としてファストフード店に――支払われている。
 マクドナルド社は、現在アメリカ国内の新規雇用の90パーセントを担うサービス業の、大きな象徴となっている。1968年に、同社の店舗数は約1000だった。現在、世界じゅうに約2万8000店舗あり、毎年新に約2000店が開店している。推計によると、アメリカの労働者の8人にひとりが、いずれかの時期にマクドナルドで働いたことになる。同社が毎年新規に雇う約100万人という数は、アメリカの公営・私営を合わせたどんな組織の新規雇用数よりも多い。マクドナルドはわが国最大の牛肉、豚肉、じゃがいも購入者であり、2番めに大きい鶏肉購入者でもある。また、世界一多くの店舗用不動産を所有している。実のところ、利益の大半を、食品の販売からではなく家賃収入から得ているのだ。マクドナルドは、ほかのどんなブランドよりも多額の広告宣伝負を投じている。その結果、コカコーラの座を奪って、世界一有名なブランドになった。同社はアメリカのどんな私企業よりも、数多くの遊び場(プレイランド)を運営している。そして、わが国有数の玩具販売業者でもある。アメリカの小学生を対象に調査したところ、じつに96パーセントが、ロナルド・マクドナルド(日本では、ドナルド・マクドナルド)を知っていた。これよりも知名度の高い架空の人物は、サンタクロースぐらいのものだろう。マクドナルが今日のわれわれの生活に及ぼす影響の大きさは、誇張したくてもできないほどだ。黄金のアーチは、今やキリスト教の十字架よりも広く知られている。

【『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー:楡井浩一〈にれい・こういち〉訳(草思社、2001年/草思社文庫、2013年)】

 少し前にジョン・ウィリアムズ著『ストーナー』のあとがきで東江一紀〈あがりえ・かずき/ノンフィクションでは楡井浩一名義〉の逝去を知った。私は大体30~50冊ほどの本を併読するため、つまらない本が続くと楡井浩一、阪本芳久、水谷淳、林大〈はやし・まさる〉、太田直子らの翻訳本を探す羽目になる。

 翻訳は解釈であり、解釈は翻訳である。

読む=情報処理/『読書について』ショウペンハウエル:斎藤忍随訳
読書は「世の中を読む」行為/『社会認識の歩み』内田義彦

 エリック・シュローサーがアメリカ社会を読み解き、シュローサーの文章を楡井浩一が翻訳する。それを読者が解釈し新たな言葉を紡いでゆく。仏教伝播(でんぱ)の歴史で時折天才が登場するが彼らが行ったのは翻訳ではなく翻案であった。独創性が加えられているのだ。

 わざわざショウペンハウエルや内田義彦を引っ張り出したわけだが、二つのテキストを紹介している間に何を書こうとしていたのか忘れてしまった。ま、よくあることだ。

 本書のようなノンフィクションを読むと「やはり白人には敵(かな)わんな」との思いを強くする。構造をダイナミックに把握する能力が抜きん出ているのだ。仕組みや仕掛けといった発想が豊かなのは、全知全能の神がこの世界を創造したことと関係があるのかもしれぬ。

 マクドナルドが不動産事業で儲けている事実を明らかにしたのはロバート・キヨサキである(『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』)。つまりハンバーガー屋に見せかけた不動産屋ってわけだ。ボロい商売だ。購入した不動産の支払いをフランチャイズオーナーや客に支払わせているのだから。

 これをあこぎな真似だと思う多くの日本人は金持ちになることができない。「別にいいよ。カネよりも大切なものがあるから」と思うあなたは正しい。江戸時代の日本はヨーロッパのような階級社会ではなかったが身分は存在した。私はこの年になって思うのだが士農工商という序列は案外健全ではないだろうか。ビジネスなどと抜かしても所詮商人である。商人風情(←差別発言)がでかい顔をしているところに資本主義の過ちがあるのだ。現代だと武士に該当するのは官僚であるが彼らは一身の栄誉栄達しか考えていないので武士道にもとる。残された道としては速やかに憲法を改正して、軍人の身分を確立し、新たな武士階級として育成することだ。日本人は日本人らしく情緒とモラルで勝負すればよい。

文庫 ファストフードが世界を食いつくす (草思社文庫)
エリック シュローサー
草思社
売り上げランキング: 368,021

0 件のコメント:

コメントを投稿