・言語が情報交換を可能にし物語を創作した
・『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
もっと強大な技術である言語は、私たちが情報を交換することを可能にした。言語を使えば学んだことを要約し、人から人へと効率よく広めることができる。(中略)さらに、言語は人間が持つ特殊能力の1つともいえる協力を可能にした。言語を持たないヒトが1ダース集まってもマンモス1頭には太刀打ちできないが、言語を使って協力し合えれば彼らはほぼ無敵だ。
私たちの大きな脳が言語をもたらし、言語を用いて思考することで脳がより大きくなる、という好循環が生まれた。言語を使わなければできない種類の思考があるからだ。言葉とはつまるところ考えを表す記号であり、私たちは話すという技術がなければどうやればよいかも見当もつかない形で考えを組み合わせたり変化させたりできる。
言語のもう1つの贈り物は、物語だ。物語とは私たちが進歩するために最初に必要だった想像力に形を与えるものであり、人間に最も重要なものだ。今日ある物語歌(バラッド)、詩、はたまたヒップホップの原型といわれる詠唱(チャント)は、話すことを覚えた私たちの祖先が最初に創作したものであろう。そのままでは覚えられないような物語も韻を踏むと覚えやすくなるのはなぜか? 1ページ分の散文よりも歌の歌詞のほうが覚えやすいのと同じ理由だ。私たちの脳がそのように作られているからこそ、「イーリアス」と「オデュッセイア」は、文字が発明されるずっと前から長きにわたり口伝で受け継がれていた。
【『人類の歴史とAIの未来』バイロン・リース:古谷美央〈ふるたに・みお〉訳(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2019年)】
個人的に「1つ」という書き方が大嫌いである。本文も翻訳も微妙によくない。
マンモスの件(くだり)は明らかに間違っている。狩猟から派生したのがスポーツであるが、スポーツの試合において言語が発揮する力は極めて少ない。言語が有効なのは作戦においてである。
「人間に最も重要なものだ」との訳文も工夫が足りない。
本書は数多い『サピエンス全史』派生本と考えていい。
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