わたしは、わたしたちの声が聞こえない距離までウエートレスが離れるのをまってから、話を再開した。
【『玩具修理者』小林泰三〈こばやし・やすみ〉(角川書店、1996年/角川ホラー文庫、1999年)】
広く知られた作品だが、最初のページでつまづいた。デビュー作とはいえ、これはないだろう。「わたしたちの声が聞こえない距離までウエートレスが離れるのをまってから、わたしは話を再開した」とするべきだ。あるいは「わたしたちの声が聞こえない距離まで」は不要だ。
不適切な文章や語彙は思考の線を乱す。このテキストを私は三度読み返した。実際の会話で三度聞き直すとしたらどうだろうか? 私なら「お前の話は通訳しないと理解できない」と直言する。受け手の理解を想像するところにコミュニケーションは生まれる。
三度も読み返すテキストに付き合うほどの時間的な余裕が私にはない。
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