憎悪には独特の心拍数がある。
【『蝿の苦しみ 断想』エリアス・カネッティ:青木隆嘉〈あおき・たかよし〉訳(法政大学出版局、1993年)】
これを「不正脈」と名づけよう。鼓動はマイナスからカウントされ、ゼロで悪事に至るのだ。
憎悪には独特の心拍数がある。
【『蝿の苦しみ 断想』エリアス・カネッティ:青木隆嘉〈あおき・たかよし〉訳(法政大学出版局、1993年)】
知性は才能の白い杖である。知性がなければ才能は転んでしまう。
(ローラン・トポール/ポーランド出身のフランスの作家・画家。ブラックユーモアで知られる〈原文表記はロラン・トポール〉)
【『世界毒舌大辞典』ジェローム・デュアメル/吉田城〈よしだ・じょう〉訳(大修館書店、1988年)】
宗教は組織化された信念ではありません。宗教は真理の探究ですが、それはいかなる国のものでも、いかなる組織化された信念のものでもなく、それはいかなる寺院、教会、あるいはモスクの中にもありません。真理の探究なしには、いかなる社会も長くは存続できないのです。そして真理が存在していないかぎり、社会は必然的に災いを起こすのです。
【『クリシュナムルティの教育・人生論 心理的アウトサイダーとしての新しい人間の可能性』大野純一著編訳(コスモス・ライブラリー、2000年)】
とりわけ2001年9月11日、ワシントンとニューヨークで起きた同時多発攻撃事件のあと合州国(ママ)政府の「テロとの戦い」に世界が同調していくなかで、イスラエル軍のパレスチナ侵攻も急速にエスカレートし、2002年3月と4月の両月、それまで二桁だったパレスチナ人の死者数は一挙に200名を越えた。
日常化した銃撃や砲撃、爆撃によって、日々誰かが斃れていく。隣人が、友人が、恋人が、兄弟が、親が、子どもが、夫が……。愛する者を暴力的に奪われるという、人間の生にとって非日常的であるはずの出来事がこの頃のパレスチナでは日常と化し、「遺された者たちの悲嘆はありふれたものとなった」(※アーディラ・ラーイディ著『シャヒード、100の命 パレスチナで生きて死ぬこと』インパクト出版会、2003年)。
人間にとってそのような生を生きるとはいかなることなのか。パレスチナ人がパレスチナ人であるかぎり、そうした生を生きること――あるいは、死を死ぬこと――は仕方のないことだとでも言うように、世界が彼ら彼女らを遺棄しているとき、だからこそ、彼らが生きることを――あるいは死ぬことを――強いられている生の細部にまで分け入って、その生の襞に折り込まれた思いに私たちが触れることが何にもまして切実に求められているのではないか。
【『アラブ、祈りとしての文学』岡真理(みすず書房、2008年/新装版、2015年)】