2011-09-13

喝采なき舞台で会釈を


 観客のいない舞台。彼女が会釈するのは記憶に収まる過去の客であろうか。あるいは明日の客であろうか。それとも……。後ろ姿にはその人の生きざまが現れる。前は繕(つくろ)えるが後ろは誤魔化しようがない。顔は鏡で確認できるが背中を見ることはできない。喝采なき舞台の静かな佇(たたず)まいが深い余韻を残す。

Curtsey

歌が生まれる場所


このストリートミュージシャンがすごい

 いやあ、これは凄い。世界各地のストリートミュージシャンが紹介されているが実に楽しい。目の前にいる人に楽しんでもらおうという心意気が、コマーシャリズムとは無縁の豊穣さを伝える。

 ただ歌わずにいられない、リズムを掻き鳴らさずにはいられないといった衝動が聴く者の何かを揺さぶる。河原乞食や大道芸との言葉が示すように、本来の芸能は何もないところから誕生した。

 彼らにとって教則本や技術は関係ない。ひたすら陽気に音を楽しむだけだ。その自由な魂に心を打たれる。

 私は見た。歌が生まれる場所を。

 果たして我々の生活には電気信号以外の音楽が存在するだろうか? 何か大きなものをテクノロジーに奪われたような気がしてくる。

 パキスタンの少年の歌は日本の節回しとよく似ていて驚かされた。

タルキ・アル=ファイサル王子がNYtimes紙に寄稿


パレスチナの国連加盟問題、米国が拒否権発動を初めて明言
9.11から10年狙った「信頼できる」テロ情報、米 警戒強化を指示

幸せは非常に脆いもの


 諸君もわかっていることと思うが、幸せというのは、非常に脆(もろ)いものだ。なぜなら、不幸がきちんとした基盤を持った確固たる具体的事実であるのに比べて、幸福は基本的には根拠も実態もない、「幸福感」という頼りのない気分であるに過ぎないからだ。

【『「ふへ」の国から ことばの解体新書』小田嶋隆(徳間書店、1994年)】

「ふへ」の国から ことばの解体新書