2013-01-13

『みさおとふくまる』伊原美代子(リトル・モア、2011年)

みさおとふくまる

 いつも一緒のおばあちゃんと猫。日々、畑仕事に精を出すみさおおばあちゃんと、猫のふくまるの日常を写し取った写真集。季節ごとに色彩を変える、表情豊かな風景のなか、一人と一匹が、寄り添い、見つめ合いながら暮らしています。



「お日様の下を生きる事ができれば、すべてが好日。今日もいい日だね、ふくまる」。

 12年前、著者の伊原美代子さんは、みさおおばあちゃんを撮影しはじめました。おばあちゃんの生きた証を残したい、という思いだったそうです。そんなある日、家の納屋で、おばあちゃんは一匹の子猫と出会いました。

「ふくまる」という名前には「福の神様が来て、すべてが丸く治まるように」というおばあちゃんの願いが込められています。87歳になった今も、毎日畑へでかけるおばあちゃん。そして、それにお伴するふくまる。青々とした田んぼ、咲き誇る花々、丸々と実る果実……。色鮮やかに、豊かな表情をみせる風景のなか暮らす、一人と一匹の姿が写真で綴られていきます。気づけばおばあちゃんとふくまるが出会って8年。すっかり耳の遠くなってしまったおばあちゃんと生まれつき耳が不自由なふくまるは、いつも見つめ合い、お互いを感じ合っています。

 青い空に白い雲がプカプカと浮かぶ頃、おばあちゃんとふくまるは今日も畑へ出かけます。

 日常の尊さ、美しさ、かけがえのなさが詰まった一冊です。

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冨田勲「イーハトーヴ交響曲」feat.初音ミク


冨田勲「イーハトーヴ交響曲」世界初演... 投稿者 dm_508cda0a95f7e

イーハトーヴ交響曲

2013-01-12

デイヴィッド・リンドリー


 1冊読了。

 3冊目『そして世界に不確定性がもたらされた ハイゼンベルクの物理学革命』デイヴィッド・リンドリー:阪本芳久訳(早川書房、2007年)/参った。読み物としては『宇宙をプログラムする宇宙』よりこちらの方が上。天体物理学の博士号をもつサイエンスライターだけあって一筋縄ではゆかない。時に堂々と批判を加える。不確定性原理そのものが科学界の量子的存在として誕生した模様がドラマチックに描かれている。アインシュタインvsボーアの論争が圧巻でハイゼンベルクの影が薄れてしまうほどだ。そしてプランク、ゾンマーフェルト、ボルン、パウリ、シュレーディンガー、ド・ブロイ、ディラックといった豪華キャストが脇を固める。彼らの人間臭さを描写することで読者は不確定性原理の呼吸と汗を感じることができる。晩年のアインシュタインは実に性格が悪い。阪本芳久の訳はどれも素晴らしい。2000円以下に抑えたところに早川書房の気合いが感じられる。尚、関連書は既に紹介済みだ。