2014-05-08
石牟礼道子、藤井厳喜、渡邉哲也、ニーチェ
2冊挫折、2冊読了。
『ニーチェ全集 8 悦ばしき知識』ニーチェ:信太正三〈しだ・しょうぞう〉訳(理想社普及版、1980年/ちくま学芸文庫、1993年)、『喜ばしき知恵』ニーチェ:村井則夫訳(河出文庫、2012年)/三十七、八歳でよくもまあこんな代物が書けたものだ。「神は死んだ」の一言で知られるニーチェの代表作。やはり哲学は肌に合わない。いくら言葉をこねくり回しても真理を見出すことは不可能だろう。ニーチェよ、さらばだ。
29冊目『日本はニッポン! 金融グローバリズム以後の世界』藤井厳喜〈ふじい・げんき〉、渡邉哲也〈わたなべ・てつや〉(総和社、2010年)/勉強になった。渡邉哲也を初めて読んだが説明能力が極めて高い。新聞がきちんと報じない世界経済の構造がよくわかる。致命的なのは総和社の校閲だ。欠字・重複が目立つ。『超マクロ展望 世界経済の真実』(水野和夫、萱野稔人)の次に読むとよい。
30冊目『苦海浄土 池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集 III-04』石牟礼道子〈いしむれ・みちこ〉(河出書房新社、2011年)/第1部『苦海浄土 わが水俣病』(講談社、1969年/講談社文庫、1972年/新装版、2004年)、第3部『天の魚 続・苦海浄土』(講談社、1974年/講談社文庫、1980年)、第2部『苦海浄土 第二部 神々の村』を収録。大部のため3冊分に分けて書く。石牟礼道子は熊本県に住む主婦であった。本書も元々は水俣病患者や家族から話を聞き、チラシの裏などに書き溜めてあったものらしい。ルポルタージュでもなければ私小説でもない。厳密にいえば「語り物」ということになろう。すなわち『苦海浄土』は形を変えた『遠野物語』なのだ。そしてまた水俣の地はルワンダでもあった。美しい水俣の海と耳に心地良い熊本弁と水銀に冒された病(やまい)の悲惨が強烈な陰影となって読者をたじろがせる。石牟礼は水俣病患者に寄り添うことで「新しい言葉」を紡ぎだした。それが創作であったにせよ事実と乖離(かいり)することを意味しない。むしろ隠された真実を明るみに引きずり出す作業であったことだろう。犯罪企業のチッソは日窒コンツェルンの中核企業であった。旭化成、積水化学工業、積水ハウス、信越化学工業、センコー、日本ガスは同じ穴の狢(むじな)だ。
2014-05-07
「年次改革要望書」という名の内政干渉/『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』関岡英之
・「年次改革要望書」という名の内政干渉
・日下公人×関岡英之
・郵政民営化は小泉さんが考えたんじゃない
『年次改革要望書』は単なる形式的な外交文書でも、退屈な年中行事でもない。アメリカ政府から要求された各項目は、日本の各省庁の担当部門に振り分けられ、それぞれ内部で検討され、やがて審議会にかけられ、最終的には法律や制度が改正されて着実に実現されていく。受け取ったままほったらかしにされているわけではないのだ。
そして日本とアメリカの当局者が定期的な点検会合を開くことによって、要求がきちんと実行されているかどうか進捗状況をチェックする仕掛けも盛り込まれている。アメリカは、日本がサボらないように監視することができるようになっているのだ。
これらの外圧の「成果」は、最終的にはアメリカ通商代表部が毎年3月に連邦議会に提出する『外国貿易障壁報告書』のなかで報告される仕組みになっている。アメリカ通商代表部は秋に『年次改革要望書』を日本に送りつけ、春に議会から勤務評定を受ける、という日々を過ごしているわけである。
【『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』関岡英之(文春新書、2004年)以下同】
10年前の本だがまったく古くなっていない。というよりはTPP締結を控えた今こそ本書が広く読まれるべきだ。関岡は基本的に取材を行わない。オフィシャルな情報だけを手掛かりにして、アメリカの内政干渉と日本政府の欺瞞を暴く。個人的には「保守の質を変えた」一書であると考える。日本人であれば心痛を覚えない人はいるまい。「敗戦」の意味を思い知らされる。半世紀という時を経ても尚、日本はアメリカ各地の州以下の扱いを受けており、文字通りの属国である。この国は独立することを阻まれているのだ。
年次改革要望書は宮澤喜一首相とビル・クリントン米大統領との会談(1993年)で決まったものだが、日米包括経済協議(1993年)、日米構造協議(1989年)に淵源がある。ということはバブル景気の絶頂期にアメリカが動き出したわけだ。プラザ合意(1985年)に次ぐ攻撃と考えてよかろう。
・牛肉・オレンジ自由化交渉の舞台裏
アメリカによる外圧のわかりやすい例が紹介されている。
日本の国内では、建築基準法の改正や住宅性能表示制度の導入は、阪神・淡路大震災での被害の大きさからの反省や手抜き工事による欠陥住宅の社会問題化などがきっかけとなって日本政府内で検討が始められ、導入が決定されたものだと理解されている。それは日本の国民の安全と利益のためになされたはずだ。
しかし実はこれらの法改正や制度改革が、日本の住宅業界のためでも消費者のためでもなく、アメリカの木材輸出業者の利益のために、アメリカ政府が日本政府に加えた外圧によって実現されたものであると、アメリカ政府の公式文書に記録され、それが一般に公開されている。
日本国民はおろか政治家だって知らなかったことだろう。政府が二つ返事で引き受けて、官僚が具体的な法案を作成しているに違いない。マスコミがこうした事実を報道することもない。日本の新聞は官報なのだろう。日本で民主主義が機能しないのは情報公開がなされていないためだ。むしろ情報は統制されているというべきか。
1987年にアメリカの対日貿易戦略基礎理論編集委員会によってまとめられた『菊と刀~貿易戦争篇』というレポートがある。執筆者名や詳しい内容は公表されていないが、アメリカ・サイドから一部がリークされ、その日本語訳が出版されている(『公式日本人論』弘文堂)。
この調査研究の目的は、日本に外圧を加えることを理論的に正当化することだった。そして結論として、外圧によって日本の思考・行動様式そのものを変形あるいは破壊することが日米双方のためであり、日本がアメリカと同じルールを覚えるまでそれを続けるほかはない、と断定している。つまり、自由貿易を維持するという大義名分のためには、内政干渉をしてでもアメリカのルールを日本に受入(ママ)れさせる必要がある、と主張しているのである。
このレポートの執筆者のひとりではないかと推測されるジェームズ・ファローズは『日本封じ込め』(TBSブリタニカ)というエッセイのなかで「叫ぶのをやめて、ルールを変えよう」という有名なせりふを吐いた。こうした声が、アメリカのルールを強制的に日本に受け入れさせること、もっと露骨に言えばアメリカの内政干渉によって日本を改造するという、禁じ手の戦略を正当化することになったのである。そしてそこから導き出されたアメリカの政策こそ、「日米構造協議」と呼ばれる日本改造プログラムに他ならない。
ジェームズ・ファローズはジミー・カーター大統領のスピーチライターを務めた人物だ。アメリカの傲慢は戦勝国意識とプロテスタント原理主義に支えられている。ま、原爆投下を一度も謝罪しないような国だ。我々黄色人種を同じ人間としては見ていないのだろう。
鳩山由紀夫首相が年次改革要望書を斥(しりぞ)けた。そして直ぐに小沢一郎と共に葬られた。その後TPPと名前を変えて再びアメリカは日本に要求を突きつけているのだ。当初は「聖域なき関税撤廃が前提なら参加しない」としていた安部首相も態度を180度変えた(田中良紹)。
今ニュースとなっている憲法解釈の閣議決定もアメリカからの要求であり命令だ。彼らは日本を再軍備するつもりだ。
・自由競争は帝国主義の論理/『アメリカの日本改造計画 マスコミが書けない「日米論」』関岡英之+イーストプレス特別取材班編
自由競争は帝国主義の論理/『アメリカの日本改造計画 マスコミが書けない「日米論」』関岡英之+イーストプレス特別取材班編
佐藤●なぜ、いま大川周明なのかということですが、現在、世界を新古典派経済学的な市場原理主義が席巻(せっけん)しています。「自由競争」というのは、実は最強国に有利な論理であって、19世紀であればイギリス、20世紀であればアメリカしか利さない。つまり帝国主義の論理だということです。そこに気づくかどうかが、いま問われていると思います。
関岡●「自由主義」を装った帝国主義ですね。そのことを戦中に理路整然と説き明かした大川周明の『米英東亜侵略史』(第一書房、1942年)は非常に重要な文献で、いまの日本で広く読まれる必要があると、私もかねがね思っていました。
【『アメリカの日本改造計画 マスコミが書けない「日米論」』関岡英之+イーストプレス特別取材班編(イーストプレス、2006年)以下同】
佐藤優と関岡の対談が面白かった。他は生臭くてちょっと……。帝国主義は力の論理である。ドラえもんでいえばジャイアンが帝国主義で、メガネををかけた弱者のび太はドラえもんと手を組んでテクノロジーで勝負をする。あれは日本のよき時代を象徴したマンガであったのかもしれぬ。ま、本当はたくさんの人々をいじめるジャイアン(アメリカ)の手助けをのび太とドラえもん(日本)がしていたわけだが(『メディア・コントロール 正義なき民主主義と国際社会』ノーム・チョムスキー)。
大川周明といえば極東軍事裁判で東條英機の頭を叩く映像が広く知られている。大川は裁判そのものが茶番劇であることを示そうとした。
佐藤●ソ連が崩壊してイデオロギーの時代が終焉(しゅうえん)すると、世界各国は露骨に自国の利益を追求する時代になりました。なかでも一番強い国は、関係国に対して「さぁ、競争だ、自由に競争させろ、競争を邪魔するな」と市場開放や規制改革をどんどん要求するようになった。自分と同じやり方でやれ、自分のルールを受け入れろ、と。
駆け足が一番速い人は、物事をすべて駆け足で決めるのが一番有利です。そして「ウィナー・テイク・オール」、勝者が果実を独占する。『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』(文春新書、2004年)を私なりに解釈すると、そういうことだろうと思います。
関岡●正確に汲(く)み取ってくださって、ありがとうございます。
『拒否できない日本』はアメリカが日本に突きつける「年次改革要望書」を広く知らしめた一書で関岡英之の名を不動のものとした。そして保守の質を明らかに変えた著作であった。
自由貿易で貧しい国が栄えたことはない。産業革命の歴史を見てもわかるように、技術力を有する国家に強味がある。発展途上国には技術どころかインフラすら整備されていない。つまり自由貿易とは経済の名を借りた侵略戦争なのだ。
関岡●井筒俊彦は、アラビア語だけでなく、古典ギリシャ語、ラテン語なども学び、イスラーム研究の範疇(はんちゅう)にとどまらず、思想史の分野の世界的権威になりましたね。深層心理学の父カール・グスタフ・ユングなどが中心的メンバーになっていたエラノス会議にも招かれ、ユング一門や、宗教学のミルチャ・エリアーデ、神話学のカール・ケレーニイなど、ヨーロッパの錚々(そうそう)たる知識人たちと交流していたようです。
佐藤●井筒俊彦は天才ですよ。
関岡●慶應の東洋史学科にはアラビア史専攻の前嶋信次(まえじましんじ)もいましたが、井筒俊彦も前嶋信次も慶應が生んだのではなく、東亜経済調査会(ママ)の「大川塾」に育てられたんですよ。竹内好(たけうちよしみ/中国文学者、文芸評論家)も指摘していますが、大川周明の隠れた偉大な功績は、日本のイスラーム研究の先駆者として学問的な礎(いしずえ)を築いたことです。戦後、巣鴨(すがも)プリズンで『コーラン』を邦訳したことが有名ですが、『復興亜細亜の諸問題』や『回教概論』(慶應書房、1942年)を発表したのは戦前ですよね。
大川周明がA級戦犯とされたのは日本に理論的指導者が見当らず、大川の著作が英訳されていたためアメリカ当局が目をつけた。ただそれだけの話である。どのような時代であろうと優れた人物がいる事実に驚かされる。
・「年次改革要望書」という名の内政干渉/『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』関岡英之
・シオニズムと民族主義/『なるほどそうだったのか!! パレスチナとイスラエル』高橋和夫
2014-05-06
グローバリズムの目的は脱領土的な覇権の確立/『超マクロ展望 世界経済の真実』水野和夫、萱野稔人
・『〈借金人間〉製造工場 “負債"の政治経済学』マウリツィオ・ラッツァラート
・『タックス・ヘイブン 逃げていく税金』志賀櫻
・グローバリズムの目的は脱領土的な覇権の確立
・『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫
・『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』水野和夫
・『悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か』倉前盛通
・『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ
水野●その価格決定権を(※OPECから)アメリカが取り返そうとして1983年にできたのが、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物市場ですね。
石油の先物市場をつくるということは、石油を金融商品化するということです。いったんOPECのもとへと政治的に移った価格決定権を、石油を金融商品化することで取り返そうとしたんですね。
萱野●まさにそうですね。
60年代までは石油メジャーが油田の採掘も石油の価格も仕切っていた。これは要するに帝国主義の名残(なごり)ということです。世界資本主義の中心国が周辺部に植民地をつくり、土地を囲い込むことによって、資源や市場、労働力を手に入れる。こうした帝国主義の延長線上に石油メジャーによる支配があった。その支配のもとで先進国はずっと経済成長してきたわけです。
しかし、こうした帝国主義の支配も、50年代、60年代における脱植民地化の運動や、それにつづく資源ナショナリズムの高揚で、しだいに崩れていきます。そして、石油についてもOPECが発言力や価格決定力をもつようになってしまう。当然、アメリカをはじめとする先進国側はそれに反撃をします。ポイントはそのやり方ですね。つまり石油を金融商品化して、国債石油市場を整備してしまう。それによって石油を戦略物資から市況商品に変えてしまうんです。
【『超マクロ展望 世界経済の真実』水野和夫、萱野稔人〈かやの・としひと〉(集英社新書、2010年)以下同】
昨今の世界経済危機は資本主義の転換点であるという主旨を様々な角度から検証している。年長者である水野が終始控え目で実に礼儀正しく、萱野を上手く引き立てている。萱野は哲学者だけあって経済の本質を鋭く捉えている。
先物取引の大きな目的はリスクヘッジにある。
例えばある商社が、米国から大豆10,000トンを輸入する。米国で買い付け、船で日本に到着するまでに1箇月かかるとする。1箇月の間に大豆の販売価格が仮に1kgあたり10円下がったとすると、商社は1億円の損失を出すことになる。そのため、商社は必ず買付けと同時に、商品先物取引を利用して10,000トン分の大豆を売契約し、利益額を確定する。 値下がりすれば先物で利益が出るので、現物の損失と相殺することが出来る。値上がりの場合は利益を放棄することとなるが、商社の利益は価格変動の激しい相場商品を安全に取引することにある。また、生産者も植えつけ前に先物市場において採算価格で販売契約し、販売価格を生産前に決めることで、収穫時の投機的な値上がり益の可能性を放棄する代わりに適切な利益を確保し、収穫時の価格下落(採算割れ)を気にせずに安心して計画的に生産することが出来る。
【Wikipedia】
これが基本的な考え方だ。ところが恣意的な価格決定のためにマーケットがつくられたとすれば、マーケット価格が現物に対するリスクと化すのだ。その上インターネットによって瞬時の取引が可能となり、異なるマーケット同士が連鎖性を帯びている。このため金融危機はいつどこで起こってもおかしくない状況となっている。
水野●驚くことに、アメリカのWTI先物市場にしても、ロンドンのICEフューチャーズ・ヨーロッパ(旧国債石油取引所)にしても、そこで取引されている石油の生産量は世界全体の1~2%ぐらいです。にもかかわらず、それが世界の原油価格を決めてしまうんですね。
萱野●そうなんですよね。世界全体の1日あたりの石油生産量は、2000年代前半の時点でだいたい7500万バレルです。これに対して、ニューヨークやロンドンの先物市場で取引される1日あたりの生産量は、せいぜい1000万バレルです。
水野●1.5%もありませんね。
萱野●ところが先物取引というのは相対取引で何度もやりとりしますから、取引量だけでみると1億バレル以上になる。その取引量によって国際的な価格決定をしてしまう。価格という点からみると、石油は完全に領土主権のもとから離れ、市場メカニズムのもとに置かれるようになったことがわかりますね。
しかも10~20倍のレバレッジが効いている。金融市場に出回る投機マネーは世界のGDP総計の4倍といわれてきたが、世界各国の通貨安競争を経た現在ではもっと増えていることだろう。もともと交換手段に過ぎなかったマネーが膨張に次ぐ膨張を繰り返し、今度は実体経済に襲いかかる。プールの水が増えすぎて足が届かなくなっているような状態だ。投機マネーとは「取り敢えず今直ぐ必要ではないカネ」の異名だ。
マネーサプライが増加しているにもかかわらずインフレを示すのは株価と不動産価格だけで経済全体の底上げにつながっていない。
萱野●要するに、イラク戦争というのは、イラクにある石油利権を植民地主義敵に囲い込むための戦争だったのではなく、ドルを基軸としてまわっている国際石油市場のルールを守るための戦争だったんですね。これはひじょうに重要なポイントです。
本書以外でも広く指摘されている事実だが、フセイン大統領は石油の決済をドルからユーロに代えることを決定し、国連からも承認された。これをアメリカが指をくわえて見過ごせば、ドル基軸通貨体制が大きく揺らぐ。つまり人命よりもシステムの方が重い、というのがアメリカの政治原理なのだ。
萱野●先進国にとっての戦争が、ある領土の支配権を獲得するためのものではなくなり、脱領土的なシステムを防衛するためのものとなったのです。領土、ではなく、抽象的なシステムによって自らの利益を守ることに、軍事力の目的が変わっていったのです。
かつての植民地支配では、その土地の領土主権は認められていませんでしたよね。それは完全に宗主国のコントロールのもとにあった。それが現在では、領土主権は一応その土地にあるものとして認められたうえで、しかし、その領土主権を無化してしまうような国際経済のルールをつうじて、覇権国の利益が維持されるのです。
これは、経済覇権のあり方が脱植民地化のプロセスをつうじて大きく変化したということをあらわしています。いまや経済覇権は領土の支配をつうじてなされるのではありません。領土の支配を必要としない脱領土的なシステムをつうじてなされるのです。
卓見だ。更に「脱領土的な覇権の確立、これがおそらくグローバル化のひとつの意味なのです」とも。本書の次に『日本はニッポン! 金融グローバリズム以後の世界』藤井厳喜、渡邉哲也:ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ編(総和社、2010年)を読むと更に理解が深まる。グローバリズムの本質と惨禍については『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クラインが詳しい。またアメリカが安全保障上の観点から通貨戦争に備えている事実はジェームズ・リカーズが書いている。
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・大英帝国の没落と金本位制/『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓
・米ドル崩壊のシナリオ/『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ
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